プログラムの現場では、環境構築が容易であることから、Linuxが使用されることがよくあるでしょう。これから、Pythonを学ぶのであれば、Linux環境での使い方を知っておいて損はないかもしれません。今回は、Pythonの使い方の基本として、Pythonとはどんなプログラム言語かを説明したうえで、Linuxへのインストール方法などを解説します。
導入したらPythonで何ができる?
Python(パイソン)は、1991年に開発された「インタープリタ型」のプログラム言語のことを指します。なお、Pythonはオープンソースであるので、誰もが無料で利用できることになっています。ちなみに、名前の由来はイギリスの人気コメディ番組「空飛ぶモンティ・パイソン」です。Pythonの特徴は、簡潔なコードでプログラムが書けることが挙げられます。
Pythonでは、専門的であったり複雑であったりするプログラムやコードは「ライブラリ」にまとめられているのです。このライブラリを上手に使うことによって、簡潔かつ複雑なプログラムを簡単に作成することが可能となるでしょう。
Pythonを利用するメリット
Pythonは、「コードの変更やデバッグがしやすい」というメリットが挙げられます。なぜなら、Pythonは前述した通りの「インタープリタ型」のプログラム言語であるからです。このインタープリタとは、コンピューターでプログラム言語を読み込む際の処理方法の1つです。インタープリタを採用するプログラム言語では、プログラムを動作させるためのコンパイル作業が必要ありません。そのため、コードを1行ずつ逐次解釈しながら読み込みをします。インタープリタを採用しているPythonもまた、プログラムの実行にコンパイルの必要はないのです。このことから、プログラムが正常に動作するかを、コンパイルせずに確かめることが可能です。
また、Pythonは「複数人のチームでプログラムを作成しやすい」というメリットもあります。その理由は、Pythonが構文型式として「オフサイドルール」を用いているためです。オフサイドルールとは、字下げ(インデント)によって、プログラムを一塊のブロックとして示す構文型式のことです。これによって、ソースコードの内容が分かりやすくなるだけでなく、書き手にかかわらずほぼ同じ型式でソースコードが作成されるようになります。その結果、Pythonでは1つのプログラムを複数人で手がけることが容易になりました。
なお、Pythonはクロスプラットフォームにも対応しています。Linux・Windows・macOSといった主要OSをはじめ、現在公開されているほとんどのOSにおいて動作するでしょう。Pythonを用いれば、特定のプラットフォームに縛られることなく、幅広いユーザーに向けたプログラムが作成できるのです。さらに、拡張性や統合性に優れている点も、Pythonを用いる大きなメリットでしょう。他にも、C・C++・Javaなどで書かれたコードをPythonのプログラム内で利用したり、ほかの言語で書かれたプログラムと情報のやりとりも可能です。
Pythonの主な利用方法を紹介
Pythonは、ライブラリを用いることでさまざまなことが可能となるプログラム言語です。以下に、主なPythonの利用方法を示します。
まず「AI(人工知能)や機械学習への利用」です。前述したPythonのライブラリは、AIの開発に関わるものが多いという特徴もあります。そのため、人工知能の開発や機械学習において、Pythonがよく用いられているのです。また、Pythonは「データの処理」が得意で、ほかプログラムとのデータやり取りに強いという特徴もあります。既存のプログラムを用いたデータを抽出して、柔軟なデータ処理が可能です。くわえて、数値計算にかかわるライブラリが豊富であり、データの処理だけでなく、分析や解析もお手のものです。
他にも、Pythonには強力な「フレームワーク」が実装されています。これを用いて「ウェブサイト作成」や「ゲーム制作」にも利用されています。HTTPリクエストの操作ができ、ハッシュ関数を備えているため、「ブロックチェーン開発」も可能です。なお、ブロックチェーンの開発では数値計算に関わるライブラリがよく用いられています。
Pythonのバージョンの違いについて
2023年の時点におけるPythonは、2.x系と3.x系の2つのメジャーバージョンがリリースされています。これらのバージョンは一部において互換性がなく、使用する際にはプログラムやライブラリの対応を確認する必要があるでしょう。では、この「Python 2.x系」と「Python 3.x系」にはどのような違いがあるのでしょうか。違いの例を以下に示します。
文章の記述方法
2.x系では、コード内に文章を記述する際は、「シングルクォーテーション」や「ダブルクォーテーション」でくくる形式が使われていました。例えば「hello, world!」と表示させる場合、2.x系では「printf ‘hello, world’」と記述しします。
一方、3.x系では、文章の記述方法が変更され、「関数」として取り扱うようになりました。3.x系では「printf (‘hello, world’)」としなければなりません。
数値の出力方法
2.x系では整数同士を計算すると、小数点以下は切り捨てられ、出力される答えが整数となっていました。例えば、「num = 5 / 2」というコマンドなら、numには「2」が代入されます。小数点以下まで表示がしたい場合は「num = 5 / 2.0」と、計算式に小数を混ぜる必要がありました。
3.x系では、デフォルトで小数点以下までが自動出力されます。整数のみで表示したい場合には「int」関数を使ってください。例えば「num = int(5 / 2.0)」とすれば、整数の答え「2」がnumに代入されます。
なお、Python 2.X系は2020 年1月1日にサポートが終了しました。用いる場合には、セキュリティなどにおいて注意が必要です。新しいプロジェクトには、3.x系を使用することが推奨されています。
Linuxに導入するメリットは?
Pythonが動くのであれば「windowsやmacOSを使えばよい」と思う方もいるでしょう。しかし、Linuxの導入には、次のようなメリットが挙げられます。
環境構築コストが安い
Linuxは、基本的にオープンソースのOSです。そのため、OSへの導入コストがかかりません。会社経営などで大量にOSをインストールせざるを得ない場合、Linuxを利用すると大きなコストカットになるでしょう。また、ディストリビューション(パッケージ化されたOS)の種類が多く、さらに自由にソースコードを変更できるので、好みの環境構築がしやすいというメリットもあるでしょう。
比較的安全性が高い
Linuxは、比較的セキュリティ性能が高いOSとされています。マルウェアなどに感染するリスクも低く、不測の事態が起きにくいメリットがあるでしょう。また、ユーザー権限の監理が厳重なので、安全性の高いサーバーとして用いることも可能です。
低スペックのPCでも動作する
Linuxは、それほど高スペックの環境を求めません。少しぐらいスペックが低いPCであっても、快適に動作するでしょう。
LinuxにPythonがインストールされているか確認する方法
Pythonをインストールする作業に取り掛かる前に、まずは、LinuxにすでにPythonがインストールされていないかを確認しておきましょう。確認方法はTerminal(ターミナル)を起動し、以下のコマンドを入力し実行するだけです。
python --version
すでにLinuxにPython本体がインストールされた状態である場合は、そのバージョン名が表示されるはずです。もし、インストールされているバージョンが3.x以降の場合は、次のいずれかのコマンドを入力してもかまいません。
python3 --version
python3 -V
python3 -VV
また、インストールされているPythonがどのディレクトリにあるかを確認したい場合には、ターミナルに「which python」もしくは「which python3」と入力します。
LinuxにPythonをインストールする方法
Linuxには、複数のディストリビューションが存在しています。主なものは「Ubuntu」や「Debian」などのDebian系と、「Fedora」や「CentOS」などのRedhat系の2種類です。以下では、Debian系またはRedhat系のそれぞれにおける、Pythonをインストールするための方法を紹介していきます。
Debian系の場合
「Debian系」においてPythonのインストールを行う場合は、パッケージ管理システムである「APT(Advanced Packaging Tool)」を用います。まず、パッケージリストを更新し、次に、インストールしたいバージョンのPythonを指定して、インストールを開始します。コマンドは以下の通りです。
sudo apt update
sudo apt install -y python〇
「〇」の部分には、インストールしたい「Pythonのバージョン」を入力します。例えば、バージョン3.8がほしい場合は「python3.8」、バージョン2.1がほしいのであれば「python2.1」と入力すると良いでしょう。
Redhat系の場合
「RedHat系」のディストリビューションにおいてPythonのインストールを行う場合は、パッケージ管理システムの「yum」を用いるのが一般的です。ターミナルを開いて、次のように入力し実行してください。
sudo yum install -y rh-python〇 whichscl enable rh-python〇 bash
それぞれの「〇」の部分に、インストールしたいPythonのバージョンを入力してください。例えば、python3.11をインストールしたいのであれば「python3.11」とします。
バージョンの違うPythonを切り替える方法は?
異なるバージョンのPythonを1つのディストリビューション内にインストールし、必要に応じて切り替えて使うこともできます。以下では、Python3.8とPython2.1がインストールされているものとして解説します。
Debian系の場合
まず、ターミナルを起動し、「update-alternatives」にPythonのバージョンを登録します。以下では、Python3.8を1、Python2.1を2、として登録しました。
sudo update-alternatives --install /usr/bin/python python /usr/bin/python3.8 1
sudo update-alternatives --install /usr/bin/python python /usr/bin/python2.1 2
バージョンを切り替える際には、以下のコマンドを入力します。登録を済ませたPythonのバージョンがリストで表示されるので、使いたいバージョンの番号を選択して入力してください。例えば、使いたいバージョンが「python2.1」であるなら「2」と入力して「enter」を押します。切り替え後は、必ずバージョンを確認してから、Pythonを使うようにしてください。
Redhat系の場合
Redhat系のディストリビューションでは、「scl(Software Collections)」のコマンドを使用して、異なるバージョンのPythonを切り替えるのが一般的です。次のコマンドを入力して「scl」を有効にします。
sudo yum install -y centos-release-scl
例えば、Python3.8を使いたい場合には、続けて以下のコマンドを入力すると良いでしょう。
scl enable rh-python38 bash
この切り替え方法は、セッションが有効な間のみに限られます。他のセッションや既存のプロセスには影響しません。
Linuxで需要が高いPythonの使いかたをマスターしよう
Pythonの利用環境では、Linuxがよく採用されているでしょう。そのため、LinuxへのPython導入方法を習得しておけば、さまざまな環境において、スムーズに作業ができるようになるかもしれません。このPythonは、シンプルで使いやすいプログラム言語でありながら、多岐にわたる分野で広く利用されているのです。
その需要は、今後も高まっていくと予想されています。ぜひ、今回紹介したスキルをマスターし、現場で役立ててみましょう。