情報セキュリティ研修とは、従業員一人ひとりの意識と行動を変えることで、企業の情報資産を守るための教育プログラムです。UTMやEDRを導入していても、情報セキュリティを守るのは人であるため、教育の重要性が年々高まっています。
しかし「どの情報セキュリティ研修を選べばいいのか」「情報セキュリティの研修費用はどれくらいかかるのか」と迷う担当者の方も多いでしょう。年1回のeラーニングが形骸化しており、改善の糸口がつかめないというケースも少なくありません。
そこで、本記事では情報セキュリティ研修の目的や種類、費用相場、サービスの選び方から導入ステップまで解説します。最後まで読めば社内で研修の必要性を説明できる根拠が揃うので、ぜひ参考にしてください。
情報セキュリティ研修とは
情報セキュリティ研修とは、従業員一人ひとりのセキュリティ意識と行動を変えることで、企業の情報資産を守るための教育プログラムのことです。UTMやEDRといった技術的対策を導入していても、情報セキュリティを強化するのは機械ではなく人であるため、教育の重要性が年々高まっています。
ここで押さえておきたいのが、情報セキュリティ研修を「コスト」ではなく「リスク低減投資」として捉え直す視点です。
セキュリティインシデントが一度発生すれば、調査費用・システム復旧・損害賠償・事業停止・信用失墜と、研修費用とは桁違いの損失が生じます。つまり情報セキュリティ研修は、その発生確率を下げるための保険のような役割を果たすのです。
なお、情報セキュリティと関わりが深い分野として、近年はAI人材の育成に取り組む企業も増えています。生成AIの利用ルールづくりやAI分野の資格取得も検討している情報セキュリティ担当者は、下の記事も参考にしてみてください。
情報セキュリティ研修の目的
情報セキュリティ研修の目的は「知識の付与」ではなく、従業員の行動そのものを変える「行動変容」を起こすことです。フィッシングメールの定義を暗記していても、実際に届いた1通を開いてしまえば意味がありません。
なぜ情報セキュリティは技術的対策だけでは不十分なのか。防げる領域と防げない領域を切り分けると、教育が担うべき範囲が明確になります。
技術的対策がカバーするのはあくまで「システムの穴」です。従業員が自分の意思でリンクをクリックしたり機密情報を入力したりする行為は、システムから見れば「正規の操作」にしか映りません。このように人為的ミスを防ぐのが情報セキュリティ研修です。
この構図は攻撃者の視点に立つとさらに明確です。強固なシステムを正面から突破するには高い技術力と時間が必要ですが、従業員1人を騙してメールを開かせるコストはほぼゼロといえます。攻撃者にとって最もコストが低く成功率が高い侵入経路が「従業員」だからこそ、そこが集中的に狙われるのです。
情報セキュリティ研修とは、この最も安く狙われる入口に鍵をかける取り組みだといえるでしょう。
情報セキュリティ研修が必要になる3つの背景
情報セキュリティ研修の検討が始まるきっかけは、大きく3つのパターンに整理できます。
| 情報セキュリティ研修が必要とされる背景 | きっかけの具体例 | 求められる情報セキュリティ研修のレベル |
| インシデントの発生 |
| 全社員の基礎的な意識の底上げ |
| 取引先からのセキュリティ要求 | セキュリティチェックシートの提出依頼 | 実施頻度・対象範囲・記録の有無を示せる |
| ISMS・Pマークの審査 |
| 年間計画に基づく継続的な研修と記録の保持 |
どの背景も、社外や経営層からの「説明を求められる場面」がきっかけになっています。特に取引先からのセキュリティ要求は近年急増しており「年1回eラーニングを配信しているだけ」という回答では取引継続に影響する可能性もあります。
そして認証審査が絡む場合、問われるのは「実施したかどうか」だけではありません。計画を立て、実施し、記録を残しているかという一連の流れが確認されます。
このように、きっかけごとに求められる情報セキュリティ研修のレベルや記録の粒度は大きく異なります。自社がどの背景に立っているのかを見極めることが、無駄なく適切な研修を選ぶ第一歩となるでしょう。
情報セキュリティ研修の種類と内容

情報セキュリティ研修にはさまざまな形式がありますが、目的やコスト、得られる効果はそれぞれ大きく異なります。
| 形式 | 特徴 | メリット | 向いている企業 |
| eラーニング | 動画教材を全社員に配信する | 単価が安く、受講履歴が自動で残る | 拠点が分散、シフト勤務がある企業 |
| 集合研修・講師派遣 | 講師が自社で実施する議論型 | 定着度が高く、自社事例を反映できる | 管理職層への意識づけを重視する企業 |
| 標的型攻撃メール訓練 | 疑似的な攻撃メールを送信し測定 | 行動変容を数値で測定できる | 効果を数値で示したい企業 |
| 外部セミナー受講 | 担当者が個別に受講する | 少人数から始められ、教材を確認できる | 全社展開前の準備段階にある企業 |
4つを比べると、それぞれが担う役割はまったく異なることがわかります。eラーニングは知識の底上げ、集合研修・講師派遣は定着、標的型攻撃メール訓練は効果測定、外部セミナー受講は担当者自身の基準づくりが主な目的です。座学が「知識を測る」ものであるのに対し、標的型攻撃メール訓練だけが行動を測れる手段である点も押さえておきましょう。
なお、標的型攻撃メール訓練を実施する際は、犯人探しや個人の吊るし上げに使わないことが重要です。社員が萎縮すると報告が上がらなくなるため、組織全体の傾向把握を目的としてください。
現実的には、これら4つを組み合わせるのが王道です。まず全社をeラーニングで底上げし、標的型メール訓練で効果を測定、弱かった部門に集合研修という流れを押さえておくと、自社の設計がしやすくなるでしょう。
情報セキュリティ研修の費用相場|規模別の料金シミュレーション
情報セキュリティ研修の費用は、形式によって課金の仕組みが大きく異なります。eラーニングは受講者1人あたり数千円〜の課金で人数に比例して総額が増え、講師派遣型は1回あたり数十万円〜の固定費に交通費が加わります。
| 従業員数 | eラーニングのみ | 講師派遣(1回開催) | eラーニング+標的型メール訓練 |
| 100名 | 数十万円規模 | 数十万円規模 | 数十万円規模〜 |
| 300名 | 数十万〜百万円規模 | 複数回開催で増加 | 中〜高規模 |
| 1,000名 | 百万円規模〜 | 開催回数に比例して増加 | 高規模だが1人単価は低下 |
表から見えてくるのは、情報セキュリティ研修は人数が多いほどeラーニングは総額が膨らみ、講師派遣は1人単価が下がる点です。なお最低利用ID数の設定や、拠点分散による複数回開催で総額が変動する点にも注意しましょう。
自社の規模に応じて最適解が変わることを、情報セキュリティ研修の稟議資料にも明記しておく必要があります。
情報セキュリティ研修に使える助成金
情報セキュリティ研修の費用は、条件を満たせば助成金で一部をまかなえる可能性があります。代表的なのは厚生労働省が管轄する人材開発支援助成金やキャリアアップ助成金です。ただし活用にあたっては、以下の3点を押さえておく必要があります。
| 情報セキュリティ研修の助成金を申請する際の注意点 | 概要 |
| 申請にはタイミングがある | 訓練実施前に計画届の提出が必要な場合があり、研修後の申請では間に合わない |
| 要件・支給額は改定される | 制度は年度ごとに見直されるため、古い情報をそのまま鵜呑みにできない |
| 事業者選びで工数が変わる | 助成金相談に対応している事業者を選べば、申請の負担を大きく減らせる |
特に申請のタイミングは見落とされやすいポイントです。情報セキュリティ研修の導入を検討し始めた段階で、助成金の要件も並行して確認しておきましょう。
また要件や支給額については、必ず厚生労働省の最新情報と研修提供事業者への直接確認の2本立てで裏を取ってください。情報システム部門が少人数の場合、助成金の相談窓口を持つサービスを選ぶだけでも、情報セキュリティ担当者の手間は大幅に削減できます。
情報セキュリティ研修を選ぶ5つのポイント
情報セキュリティ研修の費用相場や助成金を把握したところで、次に気になるのは「具体的にどの情報セキュリティ研修を選べばいいのか」ではないでしょうか。
情報セキュリティ研修サービスは数多く存在しますが、比較の軸を持たずに資料を眺めると、最終的に価格だけで判断してしまいがちです。ここでは、情報セキュリティ研修選定時に確認すべき5つのポイントを表にまとめました。
| 情報セキュリティ研修の比較ポイント | 具体的な確認方法 |
| 同規模・同業種の導入事例があるか | 社名ではなく「課題・実施形式・結果の数値」を確認。自社に近い事例は稟議で前例として使える |
| 受講管理・進捗管理の機能があるか | 未受講者の抽出、リマインド送信、修了証発行、テスト結果の集計に対応しているかを確認 |
| カスタマイズと最新脅威への追随ができるか | 自社ルールを盛り込めるか、生成AIリスクなど新しい脅威に教材が更新されているかを確認 |
| 稟議に使える事務対応か | 請求書払いの可否、インボイス対応、申込者と受講者が異なる場合の手続きを事前に質問する |
| サポート体制・助成金対応があるか | 導入時の設定サポート、実施後のフォロー、助成金相談への対応の有無を確認する |
どの研修を受けるべきか迷ったら、まず担当者自身が受けてみてください。資料だけでは講師の話し方も教材の分かりやすさも判断できません。サンプル動画や単体受講で受講者体験を済ませておけば、社内説明の説得力も高まるでしょう。
なおセキュリティと関わりが深いDX分野も視野にいれている方は、下の記事も参考にしてみてください。
情報セキュリティ研修の導入ステップと社内展開

サービスの選び方がわかったところで、次は実際の進め方です。情報セキュリティ研修は、導入から効果測定までを5つのステップに分けて進めると、予算申請から逆算した計画が立てやすくなります。
| ステップ | やること | 成果物 |
| 課題・リスクの洗い出し | 守るべき情報資産を棚卸しし、部門ごとのリスクを整理する | 情報資産・リスク一覧表 |
| 目的・対象者・ゴールの明確化 | 「何のために」を1つに絞り、対象範囲とKPIを決める | 研修目的・KPI定義書 |
| 比較・選定と稟議 | 前段階までで整理した課題をもとに候補を絞り込む | 比較検討表・企画書・見積書 |
| 実施と受講率のフォロー | 経営層名義でアナウンスし、未受講者を追跡する | 受講状況レポート |
| 効果測定と次年度反映 | 標的型メール訓練で行動変容を測り、役員会に報告する | 効果測定レポート・次年度計画 |
流れとしては、課題の整理が先、サービス選定は後という順番です。特に「比較・選定と稟議」は前章の5つの観点と直結する部分で、自社の課題を土台に絞り込むことで資料の山に埋もれずに済みます。
そして成否を分けるのが「実施と受講率のフォロー」と「効果測定と次年度反映」です。「時間があるときに受けてください」という案内は、現場にとって事実上「受けなくてよい」と同義になります。経営層の名前でアナウンスし、効果を数値で測って報告しましょう。
この2点を押さえるだけで、受講率も次年度の予算承認率も大きく変わるはずです。
情報セキュリティ研修おすすめ5選
情報セキュリティ研修サービスは、自社の課題によって選ぶべきものが変わります。ここでは、タイプの異なる5つのサービスを紹介します。
| サービス名 | 特徴 | 向いている課題 |
| 情報セキュリティセミナー(GETT Proskill) |
| 担当者自身がまず体系的に学びたい |
| manebi eラーニング(manebi) |
| セキュリティ以外の研修もまとめて内製化したい |
| 標的型攻撃メール訓練(NTT東日本) |
| 効果を開封率・報告率で数値化したい |
| テストで学ぶ 情報セキュリティ(パナソニック) | 3コマ漫画形式のテストで学べる/16言語対応・最大144問から設問を選定可能 | 全社員の理解度をテストで把握したい |
| セキュリティ研修・訓練(NRIセキュア) |
| 専門性の高い研修で本格的に強化したい |
各社のサービスに強みがあるので、自社の課題と照らし合わせて選定しましょう。
情報セキュリティセミナー(GETT Proskill)
GETT Proskillの情報セキュリティセミナーは、まず担当者自身が受講して教材の質を確かめたい場合に最適な講座です。業務の合間でも完結できるコンパクトな構成のため、日々の運用に追われる情報システム部門でも取り組みやすいでしょう。
カリキュラムは、情報セキュリティの基礎と狙われる理由から、物理環境の「隙」とWi-Fiの罠、巧妙化するフィッシングの正体、便利さと引き換えの機密流出リスク、被害を最小化する初動対応、迷いをゼロにする即断即決ガイドまでを網羅。一時停止や繰り返しの視聴にも対応しているため、理解度に合わせて学習を進められます。
法人は請求書払いに対応しており、見積書・請求書・納品書・領収書はすべてインボイス対応です。社員研修用のカスタマイズや、キャリアアップ助成金・人材開発支援助成金の相談にも応じてもらえます。
セミナー名 情報セキュリティセミナー 運営元 GETT Proskill(ゲット プロスキル) 価格(税込) 5,500円〜 受講形式 eラーニング
manebi eラーニング(manebi)
manebi eラーニングは、セキュリティ以外の必須研修もまとめて内製化したい企業に向いた見放題型のLMSです。約8,000(オプション動画を含む)という教材数を誇り、情報セキュリティからハラスメント、コンプライアンス、新入社員向けまで幅広くカバーしています。
情報セキュリティ研修の内容も、情報資産の基礎知識からIT機器のリスク対策、パスワード管理、インシデント発生時の対応までを学べる構成です。担当者にとって見逃せないのが、運用を支える機能の充実ぶりでしょう。
- メール配信機能で未受講者にリマインドを送れる催促機能
- 理解度を確認するテスト機能とアンケート機能
- 自社で作成した動画やPDF資料を追加できるアップロード機能
未受講者を手作業で追いかける時間がない少人数の部門でも、無理なく運用できるはずです。
標的型攻撃メール訓練(NTT東日本)
標的型攻撃メール訓練は、研修の効果を数字で示したい担当者に適した実践型のサービスです。インターネット環境さえあれば、すぐに標的型攻撃メールの疑似体験を実施できます。
特筆すべきは料金体系で、1ID単位で実施可能なため無駄なコストが発生しません。まずは一部の部署で試してみたいというスモールスタートにも向いています。
操作面でも、専用ポータルサイトのテンプレートを使えば訓練用メールを簡単に作成できます。さらに「アシスト」を契約すると、訓練計画や設定に関するコンサルティングを電話で受けられるため、手探りで進める不安もありません。
テストで学ぶ 情報セキュリティ(パナソニック)
テストで学ぶ 情報セキュリティは、全社員の理解度を数値で把握したい企業に向いたテスト形式のeラーニング講座です。ビジネスシーンを想起させる3コマ漫画形式の問題と、要点を整理したイラスト入りの解説で、正しい行動を効率的に習得できます。
最大の特徴は、16言語対応で最大144問から設問を選定できる点です。毎年異なる問題での出題ができるため、ISMSなどの認証取得・維持に必要な定期的な教育や、個人情報保護・営業秘密の保護といったトピック型教育にも活用しやすい構成といえます。
生成AIやクラウド利用、内部不正に関する設問も追加されているので、最新のセキュリティ知識を習得したい企業におすすめです。
セキュリティ研修・訓練(NRIセキュア)
NRIセキュアのセキュリティ研修・訓練は、基礎の底上げを終えて次の段階に進みたい企業向けの専門ベンダーによるサービスです。
情報セキュリティを専門とする企業だけあって、提供形式の幅広さが際立ちます。講師派遣型からeラーニング、標的型メール訓練まで揃っており、自社の育成計画に合わせたオーダーメイド研修も実施可能です。
また理解度確認テストや修了証の発行、受講後のサポートまで、学びの定着を見据えた体制が整えられています。修了証が発行されるということは、ISMSやPマークの審査で提示する記録としても活用しやすいということです。
セキュリティインシデントを経験した企業向けの再発防止研修など、専門的なメニューも用意されています。金融や製造など、取引先から高い水準を求められる業種にとっては有力な選択肢となるでしょう。
情報セキュリティ研修に関するまとめ
今回は情報セキュリティ研修の基本から種類・費用相場、サービスの選び方、導入ステップまでを解説しました。
情報セキュリティにおける最大の弱点は「人」であり、技術的対策だけでは守り切れません。だからこそ研修は単なるコストではなく、インシデントの発生確率を下げるリスク低減投資といえます。加えて効果を数値で示せるようになれば、役員会での報告や取引先のチェックシートへの回答も自信を持って行えるようになるでしょう。
研修の効果を最大限引き出すためには、形骸化を防ぐことが大切です。経営層の巻き込み・自分ごと化の工夫・効果測定の3点を意識して、自社に合った情報セキュリティ研修を選んでください。




