スーパーマイクロは、AI関連製品の需要拡大を背景に、2024年第2四半期決算において大幅な増収増益を達成しました。特にAIトレーニング用インフラへの投資が活発化し、サーバー製品の売上が牽引役となったようです。しかし、サプライチェーンの制約やコスト上昇などが、利益率の改善を妨げた可能性があります。
そこで今回は、スーパーマイクロの概要や主力サービスの魅力、スーパーマイクロの強みや事例を解説します。
スーパーマイクロとは
スーパーマイクロは、1993年に米国カリフォルニア州サンノゼで誕生しました。高性能コンピューティングやデータセンター、クラウド環境など、高度なITインフラを必要とする分野で、革新的なサーバーやストレージ、ネットワーク製品を提供する企業として知られています。
また、世界中の企業や研究機関が抱える複雑なIT課題に対する最適解を提供しており、AIや機械学習、ビッグデータ分析など、最先端テクノロジーを支える基盤として、高い評価を得ているのが特徴です。
スーパーマイクロの主力サービスの魅力
スーパーマイクロは長年にわたるサーバー技術の蓄積と、最新のテクノロジーを融合させることで、信頼性のある効率的なサーバーシステムを提供しています。以下では、スーパーマイクロの主力サービスの魅力をより具体的に解説します。
サーバーシステム
サーバーは、顧客からの要望に応えるデータを処理・提供するコンピュータシステムです。スーパーマイクロは、一般的なビジネス用途向けの汎用サーバーから、ビッグデータ処理に特化した高性能サーバー、ディープラーニングフレームワークに最適化されたGPUサーバーまで、幅広い種類のサーバーを提供しています。
顧客の作業負荷に合わせて、最適なハードウェア構成とソフトウェア環境を提案するのが特徴です。主力のサーバーの特徴は以下の通りです。
GPUサーバー | マルチGPUの性能を最大限に引き出す高度な設計 |
汎用サーバー | 幅広いエンタープライズサーバーアプリケーションに対応 |
それぞれを詳しく解説します。
GPUサーバー
スーパーマイクロのGPUサーバーは、VDI環境やAI、ディープラーニングなど、高度な計算処理を要する分野で高い性能を発揮しています。1Uからタワー型まで、幅広いハードウェアを取り揃え、顧客のニーズに合わせた柔軟なシステム構成が可能です。
また、常に最新のGPUに対応することで、最先端の技術を導入した環境構築を支援します。エヌビディアやAMD、Intelなど、主要なGPUメーカーの製品に対応しており、高い互換性と使いやすさを両立しています。
エヌビディアについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
汎用サーバー
スーパーマイクロの汎用サーバーはデータセンターから中小企業まで、幅広い規模の環境で活躍します。一般的なデータ処理はもちろん、アプリケーション実行やWebホスティングなど、多様な用途に対応できる高い汎用性が特徴です。
汎用サーバーは、GPUサーバーに比べ必要最低限のスペックで運用できるため、コストパフォーマンスの高さも魅力です。タワー型、ラックマウント型、ブレード型など、設置場所や拡張性に合わせて柔軟に選択できる豊富な製品ラインナップも魅力の一つでしょう。
水冷技術
水冷技術は優れた冷却性能と安定性から、近年注目を集めている冷却システムです。スーパーマイクロが開発したサーバーは、エヌビディアの最新GPUであるH200 Tensor Core GPUを搭載し、水冷技術を導入することで、高性能と静音性を両立した画期的なソリューションとして注目を集めています。
従来の空冷方式では高負荷時のGPU温度が80~90度まで上昇し、パフォーマンス低下や寿命への影響が懸念されていました。しかし、スーパーマイクロのサーバーは、CPUやGPU、メモリー全体を液冷で冷却することで、GPUの温度を常時50度前後に維持することができ、作業環境を改善する上で大きなメリットとなります。
サーバーボード
サーバーボードは、パソコンの心臓部のようなものです。サーバーの中にある基板と呼ばれる板で、様々な部品がつながって一つのシステムとして動いており、この基板がネットワークやストレージなどの外部機器とサーバーを結びつけ、情報をやり取りする重要な役割を担っています。
スーパーマイクロは、多様なサーバー環境に対応可能で高性能なサーバーボードを揃えているため、顧客の作業負荷や拡張の要求に合わせて、最適なサーバーボードを選択可能です。サーバーボードは、CPUやメモリなどを統合し、サーバー全体の機能を制御するデータセンターの基盤となる重要なハードウェアです。
ストレージシステム
スーパーマイクロは、大規模なデータセンターやクラウド環境で、大量のデータを高速かつ安定的に処理できる高性能なストレージシステムを提供しています。ストレージシステムは、巨大なデータの倉庫のようなもので、企業や個人が大量のデータを保管するために不可欠なシステムです。
例えば、企業では顧客情報や業務データを個人では写真や動画を保存します。スーパーマイクロのストレージシステムは、高い信頼性と拡張性を備えており、企業や組織の存続に欠かせない重大なシステムのデータを安全に保護します。
ネットワークデバイス
ネットワークデバイスは、オフィスや家庭など、さまざまな場所でコンピュータ同士を結びつけ、情報共有や遠隔操作を可能にする装置です。スーパーマイクロは、大容量データのやり取りにも対応できる高速なネットワークデバイスを提供しており、ビジネスの効率化やエンターテインメントの高度化に貢献しています。
デスクトップ・ワークステーション
スーパーマイクロのデスクトップやワークステーションは、一般的なパソコンと比べ、より高度な処理能力を備えています。科学技術計算や3Dグラフィックスの作成、動画編集など、専門性の高い業務に特化しており、高度な処理速度や大容量のメモリが求められる作業を効率的に行うことができます。
スーパーマイクロの強み
スーパーマイクロはどのようにして競合他社との差別化を図っているのでしょうか。以下で、スーパーマイクロの強みを具体的に解説します。
強力なパートナーシップ
スーパーマイクロは、エヌビディアやIntel、AMDといった半導体業界を牽引する主要チップメーカーとの協力なパートナーシップを構築し、AIやハイパフォーマンスコンピューティング分野で、業界をリードする高性能サーバーを迅速に市場に投入しています。
これらのパートナーシップは、スーパーマイクロが最新のGPUやCPUといった最先端の半導体テクノロジーをいち早く自社のサーバー製品に組み込むことを可能にし、常に顧客に最先端のコンピューティングソリューションを提供することを約束しているのです。
AI半導体については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
顧客のニーズに合わせたカスタマイズが可能
スーパーマイクロは、顧客の多様なニーズに応える高度なカスタマイズ能力を備えた製品を提供しています。特に、「サーバービルディングブロック・ソリューション」は、サーバーやストレージ、ネットワークなどの各コンポーネントをブロックのように自由に組み合わせることが可能です。
そのため、顧客の作業負荷やアプリケーションに最適化されたシステムを構築することが可能です。
幅広いニーズに対応した製品
スーパーマイクロは、エンタープライズレベルのデータセンターから、中小企業、個人のクリエイターまで、幅広い多様なニーズに対応する製品を展開しています。高性能なサーバーやワークステーション、ストレージシステムなど、顧客のIT環境を支える基盤となる製品は、常に進化するテクノロジーに対応しています。
また、AIなど最新技術の普及に伴い、最新のトレンドを捉えた製品の開発にも力を入れています。そのため、顧客は自社のビジネス規模や用途に合わせて、最適なシステムを構築することが可能となり、高いパフォーマンスとコスト効率を実現できるのです。
スーパーマイクロの導入事例
スーパーマイクロは企業のニーズに応えるべく、高性能かつカスタマイズ可能なサーバーを提供し、多くの導入事例を生み出しています。以下では、スーパーマイクロのサーバーがどのように活用されているのかを詳しくご紹介します。
株式会社サイバーエージェント
株式会社サイバーエージェントは、多岐にわたるインターネットサービスを展開する大手企業です。プライベートクラウド「Cycloud」では、システムの基盤となる物理サーバーとしてスーパーマイクロ製サーバーを採用しています。
Cycloudでは、高密度な2U 4Nodeサーバーをディスクレス構成とし、高速なNVMeストレージと組み合わせることで、ディスクリソースの有効活用とコスト削減を実現しています。
株式会社スクウェア・エニックス
株式会社スクウェア・エニックスは、多岐にわたるエンターテインメントコンテンツを世に送り出す総合エンターテインメント・コンテンツ企業です。スクウェア・エニックス社では、ゲーム開発におけるビルド環境の最適化を課題とし、2010年代初頭に画期的なソリューションを導入しました。
従来、スクウェア・エニックス社ではゲームプログラムのビルドをオフィス内のPC端末で行っていましたが、ワークスペースの確保、電源供給、熱暴走といった問題に直面していました。また、ビルド端末がオフィス内に分散していたため、一元的な管理が困難でした。
こうした状況下、スーパーマイクロからビルドに対応可能なサーバーが発売されたことを契機に、スクウェア・エニックス社はビルド環境をデータセンターに移行することを決断しました。データセンターへの移行により、以下のようなメリットが生まれ、ビルド環境を最適化し、ゲーム開発の効率化に成功したようです。
- 24時間365日稼働
- ビルド環境を一元管理
- 法定点検や停電による影響が少なく作業の継続性を確保
さくらインターネット株式会社
1996年創業の老舗インターネット企業であるさくらインターネット株式会社は、「さくらのレンタルサーバー」「さくらのVPS」などを自社運営の国内データセンターから提供しています。中でも特に人気の「さくらのVPS」では、2017年以降、スーパーマイクロの物理サーバーが採用されています。
さくらインターネットでは、従来運用していたサーバー環境の役割を十分に果たしてきたものの、近年の情報化社会における急激な技術革新と業務の高度化に対応しきれない状況に陥っていました。スーパーマイクロのサーバー導入により、サーバー集約によるスペースとコストの削減、性能向上によるユーザー満足度の向上、安定稼働と運用効率化を実現しています。
スーパーマイクロは今後も業績向上が期待される
今回は、スーパーマイクロの概要や主力サービスの魅力、スーパーマイクロの強みや事例を解説しました。スーパーマイクロは、企業やデータセンター向けの高性能サーバーやストレージ製品、パソコン用のマザーボードを主力製品としており、現在、好調な業績を収めています。
特に、新型のCPUやGPUを搭載したサーバー製品の販売が伸びており、これが企業業績を大きく押し上げる可能性を秘めています。また、省エネ性能に優れたサーバー製品の開発・販売も、業績向上の一因となっているようです。
今後の成長の鍵を握るのは、データセンターの設備投資の動向、特にアメリカ市場の動向です。新型のCPUやGPUを搭載したサーバー製品が、市場でどれほどの支持を得られるかが、スーパーマイクロの今後の業績を大きく左右するでしょう。