AIを活用した契約審査で実績のあるリーガルオンテクノロジーズが、新たな事業として、企業の文書チェック業務をAIで自動化するシステム開発を開始するようです。顧客企業のニーズに合わせて、カスタマイズされたシステムを提供することで、法務に限らず、経理や人事など幅広い業務分野のデジタル化を加速させるとされています。
今回は、AIを活用した文書チェックの特徴・文書をAIでチェックできる無料と有料のサービス・文書をAIでチェックする際の注意点をご紹介します。
AIを活用した文書チェックはどこまでできる？
AIを活用した文書チェックは、近年急速に進化しており、多くの分野で活用されています。具体的には、以下のことが可能です。
| 機能 | 内容 |
| 文法チェック | 誤った文法や不適切な単語を検出し、正確な文法へと導く |
| スペルチェック | 適切な句読点の使用で理解度を向上させる |
| 文体・トーン調整 | 全体の一貫性を保ち、適切なトーンに調整する |
| 表現の多様化 | 類義語や表現を提案し、豊かな表現へと導く |
このように、AIは誤字脱字の修正を行うだけでなく、文書の質を総合的に向上させることにも役立ちます。
AIを活用した文書チェックの特徴
AIを活用した文書チェックには、以下のような特徴があります。
- 人間よりもはるかに高速に行うことができる
- 文法やスタイルに関する知識が豊富である
- 文脈を理解した適切な修正や提案ができる
以下で、それぞれの特徴をご紹介します。
人間よりもはるかに高速に行うことができる
AIを活用した文書チェックは、人間の校正に比べて、はるかに高速に行うことが可能です。膨大な量のテキストを短時間で高精度にチェックできるため、複数の文書を同時に処理する必要がある場合に特に有効です。
文法やスタイルに関する知識が豊富である
AIは、膨大な量の書籍や論文、記事などを学習することで、人間の言語に関する深い理解を獲得しています。そのため、文法の規則や表現のニュアンスを捉え、高度なレベルのチェックを行うことが可能です。
文脈を理解した適切な修正や提案ができる
AIはNLP技術を活用しているため、文書全体の文脈を深く理解し、単語の意味や用法を正確に把握することで、より適切な修正や提案を行うことが可能です。文脈を理解した適切な修正や提案ができるため、人間の校正者では見落としがちな、微妙なニュアンスの違いや表現の重複などもAIが正確に検出することができるのです。
AIに言語を理解させる仕組みについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
文書をAIでチェックできる無料のサービス
多種多様な文書をAIでチェックするサービスが誕生しており、どれを選べば良いか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。以下では、文書をAIでチェックできる無料のサービスを厳選してご紹介します。
TyE
朝日新聞のメディア研究開発センターが開発したAI校正サービス「TyE」は、API形式で提供されることで、様々なアプリケーションに組み込むことができます。TyEは、文書中の誤字脱字を自動的に検出し、挿入・削除・置換という3つのラベルで改善点を明確に示すことができます。
そのため、人間が一つ一つ誤りを探す手間が省け、記事作成やメール作成などの業務効率が大幅に向上します。特に、大量の文書を扱う必要がある場合や短時間で高品質な文書を作成したい場合に威力を発揮します。
IWI日本語校正ツール
IWI日本語校正ツールは、株式会社インテリジェント ウェイブが開発したAIを活用した校正ツールです。このツールは、単なる誤字脱字の指摘にとどまらず、日本語特有の表現や文法の誤りを的確に捉え、より自然で洗練された文章へと導きます。
IWI日本語校正ツールの主な特徴は以下の通りです。
- 日本語特有の「ら抜き」言葉や二重否定といった間違いも的確に指摘
- 公用文作成のためのチェックが可能
- ビジネス文書から論文、クリエイティブな文書まで、幅広いジャンルの文書に対応
- 企業や個人のスタイルに合わせて、校正ルールをカスタマイズ可能
- 複数のユーザーで同時に利用可能
- 有料版では登録した用語集による校正が可能
Paperpal
PaperPalは、研究論文の執筆をサポートするAI搭載の英文校正・翻訳ツールです。過去20年分のデータを学習したAIが、自然で洗練された英文表現を提案します。
無料版では基本的な機能が利用できますが、月額2,915円の有料プランでは、リライト機能など、より高度な機能を無制限に利用でき、研究論文の質を向上させることができます。
文書をAIでチェックできる有料のサービス
続いて、文書をAIでチェックできる有料のサービスをご紹介します。
Typoless
Typolessは、朝日新聞社の豊富な校正データを学習したAIを搭載したツールです。Typolessには3つのプランがあり、以下のような特徴があります。
| プラン | スタンダードプラン | プレミアムプラン | エンタープライズプラン |
| 機能 | 基本的な校正機能 | 辞書機能が追加 | 企業や団体向けのプラン 10ID以上で利用可能 |
| 料金 | 月額2,200円 | 月額5,500円 | 10IDまで月額49,500円 以降 1IDあたり月額4,950円 |
スタンダードプランは、個人での利用に最適なコストパフォーマンスの高いプランです。プレミアムプランは、専門的な用語や表現が多い文書の校正に役立つ辞書機能が搭載されており、エンタープライズプランは、企業や団体での大規模な利用に適した複数のユーザーが同時に利用できるのが特徴です。
文賢
文賢は文章を経験豊富な編集者が添削したかのように、自然で洗練されたものへと導くAI校正ツールです。すでに2,000社以上の企業・個人が導入しており、文章の構造や語彙を分析し、より分かりやすく、説得力のある表現へと改善するための具体的な提案をしてくれます。
論文や記事、ビジネス文書など、様々なジャンルの文書作成に活用されており、初期費用11,880円、月額費用2,178円から利用できます。また、無料トライアルも実施しています。
AI校閲・校正支援システム
凸版印刷のAI校閲・校正支援システムは、金融業界向けの文書AI校正システムです。金融業界の専門用語や規制に精通したAIが、文章の正確性と質を徹底的にチェックします。
文法ミスや表現の誤りだけでなく、文書全体の構造や論理的な整合性までを分析し、より説得力のある文書へと導きます。AI校閲・校正支援システムを導入することで、金融機関は、高品質な文書作成を効率化し、顧客への信頼度を高めることができるでしょう。
初期費用は90万円から、月額費用は18万円からで、制作業務全体の効率化を実現します。
文書をAIでチェックする際の注意点
AIによる文書チェックは、効率化かつ質を高めることができます。しかし、AIは万能ではありません。AIの力を借りながら、より良い文書を作成するために、以下の注意点に留意しましょう。
データ取り扱い方針を必ず確認する
個人情報や機密情報を含む文書をAIでチェックする際は、十分な注意が必要です。 AI校正ツールは、入力された文章を学習し、より正確な校正を行うために活用されます。
しかし、学習データの中には、ユーザーの入力した個人情報や機密情報が含まれる可能性があるのです。ツールによっては、入力されたデータを第三者に提供したり、永続的に保存したりする場合があります。
そのため、ツールを利用する前は、データ取り扱い方針を必ず確認しましょう。
第三者に漏れるリスクを考慮する
AIが個人情報や機密情報を含む文書を扱う際には、データ漏洩のリスクが常に存在します。特に、個人情報や機密情報を含む文書を扱う場合は、十分な注意が必要です。
このようなリスクを最小限に抑えるために、エンドツーエンド暗号化などの対策を検討することが重要です。 エンドツーエンド暗号化とは、データが送信元から受信元まで、常に暗号化された状態でやり取りされる仕組みです。
そのため、たとえ第三者にデータが傍受されても、内容を解読される可能性を大幅に減らすことができます。
AI導入の落とし穴については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
アカウントの安全性を向上させる
アカウントの安全性を高めるために、定期的なパスワード変更と二段階認証の導入をおすすめします。パスワードは、複雑な組み合わせにし、定期的に変更することで、不正アクセスを防ぎましょう。
また、二段階認証を設定することで、万が一パスワードが漏洩してもアカウントへの不正ログインを防ぐことができます。
最新のセキュリティ対策を維持する
セキュリティアップデートは、ご利用のデバイスやソフトウェアの脆弱性を修正するための重要な手段です。定期的にセキュリティソフトを更新し、OSやアプリケーションのアップデートをこまめに行うことで、常に最新のセキュリティ状態を保ちましょう。
最新のセキュリティ対策を維持することで、サイバー攻撃から身を守り、大切なデータを保護することができます。
目視チェックを必ず行う
AIによる文書チェックは、文法チェックや表現の統一化などの文書作成を効率化し、品質向上に大きく貢献します。しかし、AIはあくまでツールであり、人間のような深い理解力や柔軟な思考能力を持つわけではありません。
特に、文脈やニュアンスを理解し、適切な表現を選ぶという点においては、人間の判断が不可欠です。そのため、AIによるチェック後には、必ず人間による最終的なチェックを行うことをおすすめします。
文書をAIでチェックして高品質な文書を作成しよう
今回は、AIを活用した文書チェックの範囲や特徴・文書をAIでチェックできる無料・有料のサービス・文書をAIでチェックする際の注意点をご紹介しました。AIによる文書チェックは、文法ミスやスペルミスを自動的に検出し、修正してくれる存在です。
従来、人間が行っていた校正作業を効率化し、高品質な文書作成をサポートしてくれるでしょう。AIの進化により、校正の精度はますます向上しています。
AIは、大量の文章データを学習することで、文法ルールや表現パターンを習得し、高い精度で誤りを検出できるようになりました。しかし、AIを活用する際には、プライバシーやセキュリティといった側面にも注意が必要です。入力した文章がどのように扱われるのか、第三者に漏洩するリスクはないかなど、AIで文書チェックを行う際は、十分に注意することが重要です。
