AIロボが、電化製品から金属を分別する産業廃棄物の選別作業で活躍し始めています。テレビやパソコンなど、電化製品から金属を種類ごとに正確に分ける作業は、人の手による高度な選別が必要とされ、非常に手間がかかっていました。
しかし近年、AIロボが複雑な作業を自動で行うようになり、産業廃棄物の処理現場に大きな変化をもたらしています。神戸の近畿工業や北九州の日本磁力選鉱など、多くの企業がAI選別ロボットを導入し、作業効率の向上と人件費の削減を実現しています。作業員の負担を軽減し、より安全で快適な職場環境づくりに貢献しているのです。
今回は、AIロボの種類や活用事例、AIロボを扱う職業をご紹介します。
AIロボとは
AIロボとは、AIロボットとも呼ばれているAIを搭載したロボットのことです。まるで人間のように思考し、従来型のロボットでは難しかった複雑な作業をこなせます。
AIロボは、センサーやカメラから得た情報をもとにAIが学習し、工場での製品検査や病院での患者対応など、状況に応じて柔軟な対応が求められる場面で大きな力を発揮しています。
AIとロボットの関係性
AIとロボットは、それぞれが異なる技術を持ちながらも、互いに補完し合う関係にあります。AIは大量のデータを基に学習し、複雑な問題を解決する能力に優れている一方、ロボットは、物理的な作業を行い、AIの指示を具現化する役割を担います。
AIとロボットが組み合わされることで、従来のロボットでは実現できなかった高度なタスクが可能です。例えば、製造業においては、AIを搭載したロボットが、製品の品質検査や生産計画の最適化を行うことで、生産効率の向上に貢献しています。また、サービス業では、AIロボが顧客対応や案内業務問い合わせ対応を行うことで、顧客満足度の向上に繋がっているのです。
AIによる問い合わせ業務については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
AIロボの種類
AIロボは、その機能や応用範囲に基づき、2つのカテゴリーに分類されます。以下で詳しく見ていきましょう。
コミュニケーションロボット
SoftBank社のPepperやRoboHonなど、人型で人とコミュニケーションをとるロボットがコミュニケーションロボットに当たります。これらのロボットは、顔認識や感情認識といった機能を搭載し、まるで人間のように会話したり、感情を表現したりすることが可能で、接客や介護、教育など様々な分野で活躍し、私たちの生活を豊かにしてくれています。
例えば、iPhoneのSiriのような音声アシスタントは、AIロボットの一例です。Siriはユーザーの言葉を聞き取り、ユーザーの要望を理解し、それに応じた情報を提供してくれるチャットボットの一面も持っています。
このように、AIロボットは様々な形で溶け込み、暮らしを豊かにしています。
産業用ロボット
AIを搭載した産業用ロボットは、単純な作業だけでなく、高度な学習能力を活用し、複雑な作業をこなせます。不良品検出や自己診断などの機能も備え、生産効率の向上や品質の安定化に大きく貢献しています。
従来の産業用ロボットは、専門知識を持つ人材によるティーチングや定期的なメンテナンスが不可欠なため、人材不足が深刻化する中では導入の障壁となってきました。しかし、AIの導入により、ティーチングやメンテナンス作業を自動化できるようになったのです。
また、専門知識がなくても、直感的な操作でロボットを動かせるようになり、中小企業でも導入しやすくなっています。AIロボットは、人件費削減だけでなく、高品質な製品の安定供給を実現し、製造業の競争力強化に貢献すると期待されています。
AIロボの活用事例
AIを搭載したロボットは、私たちの生活や産業の様々な場面で活躍しています。以下で、AIロボの活用事例をご紹介します。
農薬散布
AIを搭載したドローンは、農業の現場で新たな可能性を開いています。 ドローンに搭載されたカメラで撮影した農地の画像をAIが解析することで、作物の生育状況を細かく把握できるようになりました。
従来の農薬散布は、広範囲に農薬を散布する方法が一般的でしたが、AI搭載ドローンは、作物の状態に合わせて必要な場所に必要な量の農薬をピンポイントで散布することができます。そのため、農薬の使用量を削減し、環境への負荷を軽減することが可能になりました。
また、AI搭載ドローンは、従来の農業用無人ヘリコプターと比べ、導入コストを抑えつつ高い作業効率を実現します。
接客業務
飲食店の新しい仲間として活躍している代表的な例が、Pudu社の猫型配膳ロボット「BellaBot」です。BellaBotは、大きな4段のトレイに料理を載せ、お客様の席までスムーズに運ぶことができます。搭載された3Dカメラや赤外線センサーが周囲の状況をリアルタイムに把握し、人や障害物を避けながら安全に走行します。
さらに、ディスプレイに表示される可愛らしい猫のキャラクターが、お客様とのコミュニケーションを盛り上げます。様々な表情を見せることで、お客様に楽しさを提供し、店舗の雰囲気を明るくしてくれます。
家事
家庭用ロボット掃除機として世界的に有名なiRobot社の「ルンバ」は、AIを搭載した高度な清掃能力を備えています。ルンバの最大の特徴の一つ「スマートマッピング」と呼ばれる機能は、部屋を掃除しながら、間取りや家具の配置を記憶し、部屋の地図を作成するように学習します。この機能のおかげで、ユーザーは、キッチン周りだけを掃除するなど、掃除範囲を細かく指定することが可能です。
さらに、ルンバはAIを活用し、掃除中に発生しやすいトラブルを事前に予測します。例えば、配線コードや段差に引っかかってしまう可能性がある場所を自動で検出し、「侵入禁止エリア」として設定する機能も搭載されています。そのため、安全かつ効率的な清掃が可能になりました。
AIロボを扱う職業
AIロボの開発や設計、制作に携わりたい方は、ロボティクスを学ぶ必要があります。ロボティクスとは、ロボットの設計、製作、制御を学ぶ学問分野です。ロボットテクノロジーやロボット工学とも呼ばれ、機械工学や電気電子工学など、様々な工学の知識を総合的に活用して研究開発を行います。
しかし、AIロボに関わる仕事は、研究開発や製造以外にも幅広い分野で活かすことができます。以下でAIロボットを扱う職業をご紹介します。
産業用ロボットオペレーター
産業用ロボットオペレーターは、ロボットを操作するだけでなく、生産ライン全体の効率化に貢献する重要な役割を担っています。人では難しい作業をロボットに任せることで、人件費削減や高品質な製品の製造を実現することができます。
近年は、労働力不足が深刻化しているため、産業用ロボットの導入はますます加速しています。特に、海外では日本の製造業の技術に対するニーズが高まっており、海外で活躍できる人材も求められていくでしょう。
また、産業用ロボットだけでなく、医療・福祉や災害対応、物流など、様々な分野でロボットの活用が期待されています。これらのロボットを操るオペレーターの需要も、今後ますます高まっていくでしょう。
ロボット開発エンジニア
ロボット開発エンジニアは、ロボットの設計から開発までのプロセスに関わり、新たなロボットを生み出す仕事です。ロボット開発は、大きく分けて以下の3つの要素から成り立っています。
要素 | 内容 |
センサー | ロボットが外界を感知するための感覚器官:カメラ、マイクなど |
知能・制御 | ロボットの「脳」にあたる部分:ロボットの動作を制御 |
駆動 | ロボットの体を動かす部分:モーターやアクチュエーターなど |
上記の要素技術は、それぞれ専門的な知識と技術を必要とします。ロボット開発エンジニアは、これらの要素技術を総合的に理解し、新しいロボットを生み出すために、日々研究開発を行う必要があるでしょう。
ロボットSler
ロボットSIer(エスアイアー)とは、ロボットシステムインテグレーターの略で、企業が抱える課題を解決するために、最適なロボットを導入してシステム化する専門家です。SIerになるために特別な資格は必要ありませんが、SI検定という資格試験が存在します。SI検定は、ロボットSI(ロボットシステムインテグレーション)に必要な知識や技術を測るもので、SIerとしてのスキルアップに役立ちます。
ロボットSIerは、企業とロボットメーカーの間に入り、企業の課題を深く理解し、最適なロボットの選定や配置、プログラミングなど、システム全体の設計を行います。また、従業員への操作指導やアフターサービスも提供します。
従来、ロボットSIerは製造業を中心に活躍してきました。しかし、近年では、人手不足が深刻化する食品産業、土木・建設業、農業・林業など、様々な分野でニーズが高まっています。
データサイエンティスト
企業が抱える膨大なデータを有効活用するためには、データサイエンティストの存在が不可欠です。データサイエンティストは、統計学やプログラミング、ビジネス知識などのスキルを駆使し、データから新たな価値を生み出す仕事です。
データサイエンティストと似た職業に、データアナリストがいますが、両者の違いは、データに対するアプローチの深さにあります。
データサイエンティスト | データアナリスト |
データ分析のほか、未来予測やビジネスモデルの創出など、高度な分析を行う。 | データの収集、整理、分析を主な業務とし、現状を把握するための分析を行う。 |
今後、AIロボットはますます高度化し、私たちの生活に深く関わってくることが予想されます。それに伴い、AIロボットの開発には、データサイエンティストの役割がますます重要になってくるでしょう。AIロボットに特化したデータサイエンティストは、ロボットの知能化や自律化を実現し、安全で便利な社会の実現に貢献することができます。
データサイエンスの領域で高度な分析を行うDataRobotについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
AIエンジニア
AIエンジニアは、AIの開発を担う専門家です。機械学習やディープラーニングといった高度な技術を用いて、AIシステムを設計・開発します。
例えば、自動運転車やスマートスピーカー、医療診断システムなど、私たちの身近にある多くの製品にAI技術が活用されています。AIエンジニアになるためには、以下のスキルが求められます。
- Pythonなどのプログラミングスキル
- 機械学習と深層学習の知識
- データ分析スキル
- 問題解決能力
AI技術は、今後ますます発展していくことが期待されており、AIエンジニアの需要は高まる一方です。自動運転車や医療、金融など、様々な分野でAIが活用されるようになり、AIエンジニアは社会の発展に大きく貢献できる仕事と言えるでしょう。
AIエンジニアを目指すならセミナーがおすすめ
AIエンジニアへの第一歩を踏み出すなら、基本的な知識と実践的なスキルを短期間で効率的に習得できるセミナーがおすすめです。独学ではどこから手をつければいいのか、壁にぶつかった時にどうすればいいのか、といった悩みが出てくることもあるでしょう。
しかし、セミナーでは、経験豊富な講師があなたの疑問に丁寧に答えてくれるため、疑問点をその場で解決することができたり、実践的なノウハウを直接学ぶことができます。
AIエンジニア育成講座
AI研究所のAIエンジニア育成講座は、最短でAIエンジニアへになれるよう設計された実践的な講座です。AI初心者の方でも最短3日でAIの基礎から実践までを学ぶことができます。
AI研究所のAIエンジニア育成講座は、以下のような特徴があるため、AIエンジニアを目指す方を強力にサポートすることが可能です。
- AIの第一線で活躍する講師陣が、実践的なノウハウを伝授
- 少人数制の丁寧な指導
- 実務で役立つスキルを習得できるカリキュラム
- オリジナル教材「AIプログラミング完全攻略セミナーガイド」を配布
- 会場受講・ライブウェビナー・e-ラーニングから選択可能
- 講師とチャットや音声通話で質問やレクチャー等のやりとりが可能
- 社員研修用にセミナーの日程や内容のカスタマイズが可能
AIロボは今よりももっと身近な存在になる
今回は、AIロボットの種類や活用事例、AIロボットを扱う職業をご紹介しました。AIロボットは、工場での自動化や医療分野での診断支援など、様々な分野で活躍し、生活に欠かせない存在となりつつあります。
今後も日々進化を続け、ますます身近な存在になっていくでしょう。このような未来を創り出すためには、AIやロボットを扱う人材が不可欠です。
AIやロボットの開発や運用、人間が共存するための新しい仕組み作りなど、やるべきことはたくさんあります。AIロボットの知識を身につけ、未来を創る一員になりましょう。