DXが各業界で着実に推進されていく昨今、その一環として「リカレント教育」に前のめりで取り組む企業が増えてきています。この「リカレント教育」という言葉を聞いたことがあっても、詳しい意味や「リスキリング」との違いまで理解している方は少ないのではないでしょうか。
今回の記事ではリカレント教育の概要や「リスキリング」との違い、メリットや実施のコツをわかりやすくご紹介します。リカレント教育に興味のある方にとって重要な内容になるので、ぜひ参考にしてください。
リカレント教育とは何？
リカレント教育とは「企業や組織から離れ、学校など何らかの学習機関で長期的に学び直すこと」を指します。たとえば大学や専門学校に入学し直して学歴をアップデートしたり、プログラミングスクールに通って最新のIT技術を学ぶといった具合です。
リカレント教育の主な目的は、以下のようになります。
- 新技術および進化への対応
- 末永く働くためのキャリアアップ
リカレント教育の形態には大学や専門学校での再教育のほか、職場内での研修や期限付き転職などじつにさまざまな方法が含まれます。
そもそも「リカレント」の意味は？
「リカレント（recurrent）」は「再発する」「繰り返される」という意味です。主に何かが一定の間隔で、あるいは何度も繰り返される状況を示します。
そしてこの用語は自然現象や病気の再発、そして教育やトレーニングのような継続的な活動に対して用いられます。リカレント教育も一般的に「いったん仕事から離れ、何らかの学習機関で学び直したのち戻って来る」という形態なので、このような名称となりました。
リスキリングや生涯学習との違い
リカレント教育と混同しがちな用語として、「リスキリング」や「生涯学習」が挙げられます。これらの違いを一覧にまとめたものが以下です。
| 目的 | 学ぶ内容 | 主体 | 期間 | |
| リカレント教育 |
| 将来を見据えた働き方に役立つ知識やスキル | 学習者自身 | 長期 |
| リスキリング |
| 業務で必要となる知識やスキル | 企業 | 比較的短期 |
| 生涯学習 |
| 分野不問 | 不問 | 不問 |
リカレント教育とリスキリングの大きな違いは、「自分自身が主体か、会社が主体か」という点です。リカレント教育は仕事から離れ、自分自身のために大学や教育機関で長期間学び直すことが一般的。一方のリスキリングはあくまで業務扱いとなります。
そして生涯学習はどちらにも似つかず、「人生をより豊かなものにするための教育」という位置づけです。学ぶジャンルも学校教育、社会教育、生活教育、スポーツ分野から文化活動までさまざまで、年齢や期間も不問なので「各々が自由に学ぶこと自体を楽しむ」スタンスであることが特徴です。
なお、リスキリングの概要をより詳しく深堀りしたいという方は、以下の記事も参考になるのでぜひご一読ください。
リカレント教育の重要性が高まっている理由
リカレント教育は「現代のビジネス戦略」および「個々の働き方の見直しの手段」として重要性が高まっています。具体的な理由は以下のとおりです。
- 新技術の登場や発展が目まぐるしいから
- 終身雇用の終焉が懸念されているから
- 人生100年時代が謳われているから
それぞれ解説します。
新技術の登場や発展が目まぐるしいから
新技術の登場や発展が目まぐるしいスピードで進行していることが、リカレント教育の重要性が高まる理由のひとつです。たとえばAIやIoT、ブロックチェーンなどといったテクノロジーの急速な進化は、もはや従来の知識やスキルだけでは対応しきれない新しい課題や機会を生み出しています。
これに適応するためには、個人が継続的に学び続けることが必要不可欠。リカレント教育は職業の現場だけでは得られない最新の知識や技術を習得する手段として最適です。
終身雇用の終焉が懸念されているから
これまで当たり前だった「終身雇用」の制度が終焉を迎えつつあることも、リカレント教育の重要性が高まる理由です。いまの日本の経済状況は著しく低迷しているため、企業が人材を確保し続けることが難しくなってきたからです。
企業のリストラや業務委託が増えていく昨今なので、労働者は常に新しいスキルや知識を習得し自分の市場価値を高めることが求められています。
人生100年時代が謳われているから
リカレント教育の重要性が高まっている理由には、「人生100年時代が謳われている」こともあります。現代では医療技術の進歩も相まって、男女ともに平均寿命が延びているからです。
この長寿化に伴って一度の学びで一生を過ごすことは難しくなり、加えて年金支給年齢が延びることも懸念されています。このように労働市場や職業が変化する中、長い職業人生を支えるためには継続的な学びが不可欠なのです。
リカレント教育に取り組むメリット
リカレント教育を実施するメリットはさまざまありますが、大きく以下のとおりです。
- DX推進および対策として有効
- 効果的な従業員育成につながる
- 従業員が社内に定着しやすくなる
それぞれ見ていきましょう。
DX推進および対策として有効
DX（デジタルトランスフォーメーション）の推進および対策として有効であることが、リカレント教育に取り組むメリットです。
DXとは企業や社会全体でのデジタル技術の活用を促進し、業務効率化や新たな価値創造を目指す取り組みのこと。しかし、これを実現するためには従業員が最新のデジタル技術やデータ分析スキルを習得する必要があります。
リカレント教育は時間がかかるものの、既存の労働者が新しい技術に適応し企業がDXを成功させるための重要な手段となります。これによって企業の競争力向上、そして個人のキャリア発展と双方にメリットが得られるのです。
なお企業内でのDX推進を図りたいと考えている方は、AI研究所が運営する「DX完全攻略ハンズオンセミナー」がおすすめです。こちらは最速1日でデジタルトランスフォーメーションの知識と技術を習得できる講座で、DXの中でも実務で使える実践知識に特化した内容となっています。
もちろんDX学習未経験者でも受講可能で、丁寧なサポートとわかりやすいカリキュラムに定評があります。学習に時間をかけられない方、本当に必要不可欠な知識のみ効率よくアウトプットしたい方におすすめです。
効果的な従業員育成につながる
リカレント教育に取り組むメリットの一つは、効果的な従業員育成につながること。企業は急速に変化するビジネス環境や技術革新に対応するため、従業員のスキルを継続的にアップデートすることが求められています。
リカレント教育はいったん企業から離れてスキルアップができることから、従業員が最新の知識やスキルを習得し高いパフォーマンスを発揮できるようにするのに最適な手段です。これにより企業は高い競争力を維持し、従業員は自己成長とキャリアアップを実現することができます。
従業員が社内に定着しやすくなる
従業員の社内定着率が向上することも、リカレント教育に取り組むメリットです。スキルアップやキャリア開発の機会が豊富にある職場は従業員にとって魅力的であり、離職率の低下につながるからです。
ただしスキルを武器に企業を辞める方もゼロではないので、リカレント教育での学習で出した成果に応じ、何らかの報酬制度を考えることも重要になります。
リカレント教育で学ぶべき人気の分野
「リカレント教育に興味があるけど、何を学んだらいいのかわからない」という方も多いでしょう。人気の分野は以下のとおりです。
- プログラミング・IT技術全般
- データサイエンス・分析全般
- ドローン教育・IoT関連
それぞれ解説します。
プログラミング・IT技術全般
デジタル化が進む現代社会では、プログラミングスキルやIT知識がますます重要視されています。これらはソフトウェア開発やデータ分析、サイバーセキュリティなどあらゆる分野で活用されており、さらに企業のDX推進の鍵にもなり得るからです。
またAIやクラウドコンピューティング、ブロックチェーンや5Gなどの新技術も急速に発展しており、これらを学ぶことで確実に市場価値を高められるでしょう。
リカレント教育で迷ったら「IT」を学んでおけばまず大きな失敗はないと言っても過言ではありません。
データサイエンス・分析全般
データサイエンスおよび分析は、いまやすべての企業に欠かせない重要な要素です。なのでこれらをリカレント教育で学ぶことも有意義といえるでしょう。
ビッグデータの時代においてデータを収集・分析し、意思決定に活用するスキルは今後も極めて重要になることは間違いありません。なお以下の記事では企業のデータサイエンス導入による成功事例を紹介していますので、興味のある方はぜひご一読ください。
ドローン教育・IoT関連
ドローン教育やIoT（Internet of Things）関連の技術も、リカレント教育の人気の分野です。
ドローンは農業や建設、さらには救助活動などあらゆる分野で活用されておりその需要は着実に高まっています。またさまざまなデバイスがインターネットに接続される「IoT」技術も、スマートホームや産業用途などで急速に普及しています。
今後も配送や物流などでドローンやIoT需要は増えていく可能性が高いことから、おすすめの分野といえるでしょう。
リカレント教育に取り組む際のコツ・注意点
リカレント教育を実施する際のコツおよび注意点は、以下のとおりです。
- 現行業務への支障を考慮する
- 学習にかかる費用はなるべく企業が負担する
- 学習した内容を業務にアウトプットしてもらう
それぞれ紹介します。
現行業務への支障を考慮する
リカレント教育注意点として、現行業務への支障を考慮することが挙げられます。誰かがリカレント教育のために職場を離れるということは、誰かの負担が増えるということだからです。
仕事と学びの両立は容易ではないため、学習計画を立てる際には自身の業務スケジュールや負荷を考慮し、両立可能な方法を模索する必要があります。
学習にかかる費用はなるべく企業が負担する
リカレント教育かかる学習費用は、なるべく企業が負担するほうがいいでしょう。従業員が自己啓発のために学び続けることは、企業にとってもメリットがあるからです。
そのため企業は従業員の学習意欲を支援するため、学習にかかる費用を一部または全額負担する制度を整備することが重要です。
学習した内容を業務にアウトプットしてもらう
リカレント教育で学んだ内容は、実務にアウトプットしてもらいましょう。学んだ知識やスキルを実際の業務に活かさなければ、従業員の学びもなかなか定着せず、企業にとっても価値を生むことができないからです。
たとえば新しいプログラミング言語を学んだら、それを使って業務を効率化するためのツールを開発するといった例が挙げられます。また学習した内容をチームや部署で共有することで、他のメンバーの学びにもつながるメリットが得られます。
リカレント教育とは？まとめ
ここまでリカレント教育の概要や「リスキリング」との違い、メリットや実施のコツなどについて解説してきました。
リカレント教育は個人が主体となって、長期的なスキル取得によるキャリア生成やスキルアップを図る取り組みのことを指します。業務の一環などではなく、一般的には個人が主体となって企業から離れて実施することが大きな特徴といえるでしょう。
とあひえリカレント教育は個人の成長だけでなく、企業の競争力強化や社会全体の経済発展で役立てられている事例もあります。現代では政府や教育機関を中心に、あらゆる企業との提携を経て、より多くの人々がリカレント教育を受けられる環境整備が進んでいます。
今後の長い将来のために、長期的なキャリア戦略を立てるべく思い切っていま働いている企業から離れ、リカレント教育を実施してみるのもひとつの選択肢かもしれません。
