発展がめざましいAIですが、近年は学校でも活用されるケースが増えています。しかし、学校でAIを使うイメージがない人も多いでしょう。
本記事では、学校にAIを導入するメリットや、実際の活用事例を紹介します。また、AIを取り入れることで起こりうる注意点も解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
学校にAIが導入されている背景
AIとは人工知能を表す言葉で、コンピュータが人間のように学習したり、問題を解決したりする技術です。AIツールは業務の効率化やミスの減少などにつながるため、さまざまな業界で活用されています。
このようなAIの利点は、一般企業だけでなく、学校や塾などの教育現場でも注目されています。特に、学校の教師不足が問題となっており、対策が必要です。
そこで、AIを活用することで教師の業務負担を軽減し、労働時間の削減が期待されています。また、AIを活用すると生徒一人ひとりの学習状況や出欠状況を把握できるため、よりきめ細やかな対応も実現します。
学校にAIツールを導入するメリット3つ
学校の授業にAIを導入するメリットは、以下の3つです。
- 一人ひとりに合わせたサポートが可能
- 発音の練習がしやすい
- 業務を効率化できる
それぞれ、わかりやすく解説します。
メリット①一人ひとりに合わせたサポートが可能
学校にAIツールを導入するメリット1つ目は、一人ひとりに合わせたサポートが可能なことです。AIツールを活用すると、個人の学習進度に合わせた対応ができます。
従来の授業では全体のペースを考慮しながら進むため、どうしても個人の理解度や進捗に差が生じがちです。しかし、AIを利用することで、各生徒の学習状況を分析して個別のプランを提供できます。
例えば、特定の数学の単元でつまずいている場合は、AIが苦手部分を判断して問題を出題するので、生徒は繰り返し演習が可能です。
このように、AIを利用すれば生徒それぞれの状況に応じた指導ができるため、さらなる成績向上が期待できます。
メリット②発音の練習がしやすい
学校にAIツールを導入するメリット2つ目は、発音の練習がしやすいことです。AIはあらゆる科目で活用できますが、特に外国語の授業を行う際に、大いに役立ちます。
例えば、AIを用いて外国語の発音を練習できるアプリやツールを導入すれば、スピーキングの力を養えます。AIが自分の発音の改善点を教えてくれるため、細かい発音の修正が可能です。
また、大勢の前で英語を発音するのに抵抗がある生徒でも、機械に向かって話しかけるため、発音への苦手意識を減らせます。
加えて、AIツールは24時間利用可能なため、休み時間や帰宅後など自分のペースで発音練習を続けられます。AIツールは、英語4技能をバランスよく習得できるのもポイントです。
メリット③業務を効率化できる
学校にAIツールを導入するメリット3つ目は、業務を効率化できることです。教師は授業のみならず、テストの採点や出欠の管理など、業務の負担が大きく長時間労働も問題視されています。
そこでAIを導入すれば、業務の効率化が可能です。例えば、テストを自動で採点したり、出席者をカウントしたりするAIツールがあるため、教師の負担を減らせます。
そして、生み出せた時間で、生徒一人ひとりと向き合う機会を増やせるのもメリットです。AIは生徒だけにメリットがあるのではなく、教師の負担の軽減やスムーズな学校の運営にも有効です。
学校にAIツールを導入する注意点2つ
学校にAIを導入するメリットを紹介しましたが、注意点も2つあります。
- 思考力低下の恐れがある
- セキュリティ対策が必要
本格的に学校に導入する前に確認しておき、対策も考えておきましょう。
注意点①思考力低下の恐れがある
学校にAIツールを導入する注意点の1つ目は、思考力低下の恐れがあることです。AIを活用することで多くの業務が自動化されて、教育の質の向上が期待できる一方で、考える力が育たない可能性があります。
例えば、作文やレポートの作成をAIに任せることもできるため、生徒が自分で考えて答えを出さないリスクもあります。
そのため、学校でAIを利用するときは、あくまでも補助的なツールとして活用し、自主的に考える機会を確保することが重要です。AIに依存することのないよう、適切なバランス・距離感を保つように指導しましょう。
注意点②セキュリティ対策が必要
学校にAIツールを導入する注意点の2つ目は、セキュリティ対策が必要なことです。AIツールには生徒の個人情報や学習記録が含まれているため、データが漏洩しないように徹底しなければいけません。
万が一個人情報が流出してしまうと、学校はたちまち信頼を失ってしまいます。そのため、データの暗号化や不正アクセスの制御など、セキュリティ対策は入念に行う必要があります。
また、教師以外にも、生徒や保護者に対してもセキュリティの重要性を説明し、対策を促すことも大切です。生徒と保護者が安心してAIツールを活用できる環境を構築しましょう。
学校でAIが活用されている事例3つ
学校でAIが活用されている事例を3つ紹介します。
- 学習ツール
- 自動採点システム
- 生成AI
実際にAIがどのように学校で使われているのかを知ることで、イメージを抱きやすくなります。導入を前向きに検討するためにも、確認しておきましょう。
活用事例①学習ツール
まずは、AIを取り入れた学習ツールを3つ紹介します。
ツール名 | 特徴 |
---|---|
Qubena | 習熟度に応じて問題を出題 |
すらら | レクチャー・ドリル・テストの機能が搭載 |
TerraTalk | 英語力を鍛える対話型アプリ |
できることや利用するメリットなどを解説するので、ぜひ参考にしてください。
Qubena
「Qubena(キュビナ)」は、教科書とAIコンテンツを組み合わせた学習ツールです。AIが個人の習熟度に応じて最適な問題を出すことで、授業への理解を深められます。
問題を何度も間違えてしまっても誰にも指摘されないため、苦手と徹底的に向き合うことが可能です。また、学習状況がデータに反映されるため、生徒は自分の頑張りを可視化できて学習へのモチベーションになり、教師も一人ずつに適切な対応ができます。
上記の動画では、実際にQubenaを導入している学校にインタビューした内容が投稿されています。教師と生徒たちの意見が紹介されているので、ぜひご覧ください。
すらら
すららは、小学校・中学校・高校の5科目(英語は中学から)に対応したICT教材です。レクチャー機能・ドリル機能・テスト機能が搭載されており、学習内容の定着を図ります。
アニメーションが採用されているので理解しやすく、アバターやポイントなどゲーム要素も盛り込まれているので、楽しみながら学習ができます。
TerraTalk
TerraTalk(テラトーク)は、対話形式で英語を学べるアプリケーションで、特に学校の英語の授業で不足しがちな、スピーキングの機会を補えるのがメリットです。
AI技術を駆使して、自分の発音がその場でフィードバックされるため、正しい発音を効率よく習得できます。学校での活用はもちろん、英検やTOEIC対策にも有効なため、社会人にも利用されているツールです。実際の会話に近い練習ができるため、自然な英会話力を鍛えられます。
AIを取り入れた教育ツールはこちらでも紹介しているので、あわせてご覧ください。
活用事例②自動採点システム
自動で採点できるAIツールも開発されており、名古屋市では「デジタル採点システム」を市立の中学校と高校に導入しました。このシステムは、生徒の解答用紙をスキャンし、AIが自動で読み取って採点する仕組みです。従来の手作業による採点に比べて、大幅な時間短縮が可能となります。
わずかではあるものの、生徒の答えが正しいのにバツになっている場合もあるため、最終チェックは欠かせません。しかし、一からすべてを採点するよりも時間を削減できるため、デジタル採点システムは学校での導入がますます期待される、便利なAIツールです。
活用事例③生成AI
生成AIとは、さまざまなデータをもとに新たなコンテンツを生み出せるAIのことで、ChatGPTやBing AIなどが代表的です。この技術は、保護者に配布する手紙の文書生成や、学校行事で話す挨拶文の作成などに主に活用され、業務の時間を削減できます。
また、教師の業務負担の軽減だけではなく、授業にも生成AIを利用する学校が増えています。生成AIを使用すると、必要な情報を効率よく収集できるため、調べ物をする際に有効です。
しかし、AIが誤ったデータを出力する可能性もあるため、生成された情報を鵜呑みにするのは危険です。そのため、事実確認や最終判断は生徒自身でできるように、適切に指導することが求められます。
また、美術や音楽などの創造性を養う授業で、生成AIに頼りすぎるのは望ましいとはいえません。自分で考える力が伸びない恐れがあるため、生成AIはあくまでも補助的なツールとして利用することが重要です。
先ほど紹介したChatGPTについては、下記の記事で詳しく解説しています。できることや料金も紹介しているため、ぜひご覧ください。
学校とAIのまとめ
本記事では、学校にAIツールを導入するメリットや注意点について解説しました。学校で自動採点システムや生成AIを取り入れることで、教師の業務負担を軽減できます。教師不足が深刻化している現代において、AIを活用した業務の効率化や自動化は非常に効果的です。
また、AIの機能が搭載された学習ツールを用いると、生徒一人ひとりの学習進捗を容易に把握でき、それぞれに合わせた対応が可能となります。
例えば、苦手な問題には重点的に対策を施し、得意なジャンルには難易度の高い問題を出題することで、生徒の成績向上を目指せます。
生徒がAIに頼りすぎないよう注意しなければいけませんが、上手に活用できれば教育の質を向上させられるでしょう。