「製造業でAIを導入したいが、他社が実際にどう使っているのか分からない」「製造業でAIの活用事例を確認したい」という方も多いでしょう。
製造業では、外観検査の自動化や設備の予知保全といったAIの活用だけでなく、ChatGPTをはじめとする生成AIを現場のノウハウ共有や技術継承に使う事例も急増しています。本記事では、製造業のAI活用事例を10選、事例から見えてくる製造業でAI活用を成功させる3つのポイントも解説します。
製造業でAIは活用されている?

結論から言うと、製造業のAI活用は着実に広がっているものの、「どの業務に活用すればよいか分からない」「AIを扱える人材が不足している」といった課題から、分析や業務改善につなげられていない製造業の企業も少なくありません。
製造業ではAIの導入自体は進んでいるものの、収集したデータを具体的な成果に結びつける段階で差が生まれている状況です。今後、競争力を維持・向上させるためには、自社の課題を明確にしたうえで、継続的に活用できる体制を構築することが重要です。
製造業のAI活用状況
経済産業省が2026年6月に公表した「2026年版ものづくり白書」によると、製造プロセスで何らかのデータを取得している製造事業者は約7割にのぼる一方、そのデータを活用して実際に効果を得られている事業者は約4割にとどまっています。

出典:経済産業省
つまり、製造業でセンサーやIoTでデータを集める段階まではクリアしたものの、AIによる分析・活用で成果を出すフェーズには多くの企業がまだ到達できていないというのが現状です。
製造業でAIを導入するには、どの業務にAIを活用するのかを判断できる人材や、導入後も継続して運用・改善できる体制が必要になります。そこでおすすめなのが、「AI研修・人材育成プログラム」です。
AI研修・人材育成プログラムでは、製造業界で抱えるAIの課題や目指す状態を企業ごとにヒアリングしたうえで、短期研修から中長期的な人材育成まで、目的に応じたカリキュラムを提案しています。
研修後には、製造業の現場課題にAIをどのように活用するかを検討する機会も設けられており、知識の習得だけで終わらない点が特徴です。まずは以下のリンクから詳細をチェックしてみてください。
製造業でAIを導入するべき理由

製造業がAIを導入すべき理由は、主に以下の3つです。
- 深刻な人手不足
- 技術継承の断絶
- DX化の遅れ
①深刻な人手不足
日本では労働者不足が深刻化してますが、特に深刻化しているのが製造業です。経済産業省の「ものづくり人材の雇用と就業動向」によると、製造業では、2002年には1,202万人の就業者数でしたが、2024年には1,046万人まで減少しています。

出典:経済産業省
そこで選択肢となるのが、AIによる作業の省力化です。製造業における外観検査の一部をAIで補助したり、生成AIを使って社内資料の検索や文書作成にかかる時間を減らしたりすれば、人が繰り返し行っていた業務の負担を軽くできます。
②技術継承の断絶
製造業では、熟練者の経験や勘に支えられてきた技能を、次の世代へ引き継げないことが課題となっています。設備の音や振動から異常を見抜く力や、材料に応じて加工条件を調整する判断は、マニュアルだけでは残せません。
「2026年版ものづくり白書」では、製造業において、技能継承がうまくいっている企業は33.3%にとどまり、将来の技能継承に不安を感じる企業は85.5%に上ります。熟練者の退職や若手人材の不足が進むなか、従来のOJTだけで製造業の技術を継承することは難しくなっています。

出典:経済産業省
そこで注目されているのが、AIを活用したノウハウの蓄積です。製造業において熟練者の作業映像やセンサーデータ、不具合事例、判断基準をAIで整理すれば、必要な情報を検索しやすくなります。
③DX化の遅れ
製造業でAIを導入すべき理由の一つが、DX化の遅れを挽回するためです。AIを活用するには、設備の稼働状況や品質、不良、在庫などのデータを収集・整理する必要があるため、AI導入をきっかけに製造現場のデジタル化を進められます。

出典:IPA
図表を見ると、製造業で「全社戦略に基づき、全社的にDXへ取り組んでいる」企業は40.5%です。金融業・保険業の61.7%と比べると、製造業ではDXの全社展開が十分に進んでいないことが分かります。
そこでAIを導入し、設備データや作業記録を一元的に扱える環境を整えれば、製造業で異常検知や予兆保全、需要予測、品質管理などにデータを活用でき、DX化にもつながるのです。
製造業のAI活用事例10選
ここからは、製造業の以下2パターンに分けて紹介します。まずは、自社のどの業務にAIが適用できそうかをつかむために、業務別の活用パターンから確認しましょう。
- 業務別|製造業のAI活用事例
- 企業別|製造業のAI活用事例
業務別|製造業のAI活用事例
製造業では、幅広い業務でAIの活用が進んでいます。代表的な活用領域は、次の5つです。
| 業務領域 | 主なAI技術 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 外観検査・品質管理 | 画像認識、ディープラーニング | 検査時間の短縮、全数検査、判定基準の均一化 |
| 予知保全・異常検知 | 時系列データ解析、機械学習 | 設備停止の防止、保全コストの削減 |
| 需要予測・生産計画 | 機械学習、数理最適化 | 在庫の適正化、設備稼働率の向上 |
| ナレッジ共有・技術継承 | 生成AI、LLM、RAG | 属人化の解消、情報検索や教育の効率化 |
| 安全管理・作業分析 | 画像認識、行動解析 | 労働災害の防止、作業工程の改善 |
①外観検査・品質管理
製造業における代表的なAI活用が、画像認識を使った外観検査です。製品をカメラで撮影し、AIが画像を解析することで、キズや汚れ、欠け、変形などの異常を自動で判定します。
従来の目視検査は、検査員の経験や判断に依存しやすく、長時間の作業では見落としが発生する可能性もあります。製造業でAIを導入すれば、あらかじめ学習した基準に沿って継続的に判定できるため、検査品質の均一化や作業負担の軽減につながります。
②予知保全・異常検知
予知保全とは、製造設備から取得した振動、温度、電流、音などのデータをAIで分析し、故障や異常の兆候を早期に見つける仕組みです。
製造業では、一定期間ごとに部品を交換する定期保全が一般的でした。しかし、まだ使用できる部品まで交換すると、保全コストが増えてしまいます。反対に、交換時期が遅れると、設備の突発停止によって製造ライン全体が止まるおそれもあるでしょう。
そこでAIを活用すれば、設備の状態に応じて点検や部品交換の時期を判断しやすくなります。
③需要予測・生産計画の最適化
製造業では、過去の販売実績や季節変動、在庫量、市況などのデータをAIに分析させ、需要予測や生産計画に活用する取り組みも進んでいます。
製造業の生産計画では、納期、設備の空き状況、人員配置など、多くの条件を同時に考える必要があります。担当者の経験だけで計画を立てると、判断が属人化しやすく、急な需要変動への対応が難しくなることもあるでしょう。
AIを導入すれば、複数の条件をもとに生産量や製造順序を計算し、効率のよい計画案を作成できます。
④生成AIによるナレッジ共有・技術継承
近年の製造業では、生成AIを使って社内の技術情報や現場ノウハウを共有する取り組みも広がっています。
製造業において、作業手順書や設備マニュアル、過去の不具合報告、改善事例などを生成AIと連携すれば、従業員が質問を入力するだけで、必要な情報を探しやすくなります。
社内データを検索して回答を作るRAGを用いれば、一般的な知識だけでなく、自社の資料に基づいた回答も可能です。これまで一部の担当者しか知らなかった情報を探しやすくすることで、製造業の属人化対策や技術継承を支援できます。
⑤安全管理・作業分析
製造業では、工場内のカメラ映像をAIで解析し、安全管理や作業改善に役立てる活用方法もあります。
たとえば、
- 立入禁止区域への侵入
- ヘルメットなどの保護具の未着用
- 不自然な姿勢や危険な動作
などをAIで検知できます。製造業において管理者がすべての映像を常に確認しなくても、異常が発生した場面を把握しやすくなるため、労働災害の予防につながります。
企業別|製造業のAI活用事例
続いて実際の製造業における企業事例を5つ紹介します。
| 企業名 | AIの活用領域 | 主な成果・取り組み |
|---|---|---|
| ブリヂストン | タイヤ成型工程の自動制御 | タイヤの真円性を15%以上向上、生産性を約2倍に向上 |
| キユーピー | 食品原料の外観検査 | 良品学習によって検査精度と操作性を向上 |
| パナソニック コネクト | 社内向け生成AI | 2024年に年間44.8万時間の業務時間を削減 |
| 横河電機・JSR | 化学プラントの自律制御 | 強化学習AIで35日間の連続制御に成功 |
| ダイセル | 画像解析・作業分析 | 異常の自動検知や作業の標準化を実現 |
①ブリヂストン|AIでタイヤの成型工程を自動制御
ブリヂストンは、AIを搭載したタイヤ成型システム「EXAMATION」を彦根工場に導入しました。タイヤ1本につき480項目の品質データをセンサーで取得し、すべての部材が適切な条件で組み立てられるよう、AIが製造業の設備をリアルタイムで制御します。
従来は技能員の経験に依存していた製造工程や品質保証の判断をAIで自動化した結果、タイヤの真円性を従来製法より15%以上向上させました。複数の工程を並行して進める仕組みにより、生産性も既存の成型方法と比べて約2倍になっています。
出典:BRIDGESTONE
②キユーピー|良品を学習するAIで食品原料を検査
食品製造業のキユーピーは、食品原料の外観検査に画像認識AIを活用しています。一般的な製造業の外観検査AIでは不良品の画像を学習させますが、同社は正常な「良品」をAIに学習させ、良品以外を取り除く方式を採用しました。
食品原料は形や色が一定ではなく、不良品の種類も多いため、すべての不良パターンを事前に用意するのは困難です。そこで良品の特徴を基準にすることで、不良品の学習データが少ない場合でも検査できる仕組みを構築し、製造業の検査精度と製造現場での操作性が向上しています。
出典:Kewpie
③パナソニック コネクト|生成AIで年間44.8万時間を削減
製造業のパナソニック コネクトは、社内向けAIアシスタント「ConnectAI」を国内の全社員へ提供しています。文章の要約や資料作成だけでなく、プログラムの生成、製造業の作業手順書や各種基準の作成、資料のレビューなどにも生成AIを活用しています。
2024年のConnectAIの利用回数は240万回に達し、年間44.8万時間の業務時間削減につながりました。1回あたりの削減時間は平均28分で、前年の18.6万時間から2.4倍に増えています。
出典:パナソニック コネクト
④横河電機・JSR|強化学習AIで化学プラントを自律制御
横河電機とJSRは、化学プラントの実設備に強化学習AIを導入し、35日間にわたって連続制御する実証を行い、成功しました。
対象は、従来の製造業の制御技術では自動化できず、熟練者による手動操作が必要だった工程です。AIが設備の状態に応じて制御方法を判断することで、基本的には監視のみで操業を継続し、出荷基準を満たす製品を安定して製造しました。
製造業でAIを活用した自律制御が進めば、オペレーターの負担軽減に加え、品質の安定化、省エネルギー、規格外品の削減につながる可能性があります。
出典:横河電機株式会社
⑤ダイセル|AI画像解析で異常や作業のばらつきを検知
ダイセルは、製造現場に複数種類のカメラを設置し、撮影した画像と製造データをAIで解析するシステムを導入しています。
AIが製造工程の異常を検知すると、監督者の端末へ通知が届くため、問題が発生した工程を速やかに確認できます。また、作業者の骨格の動きを数値化し、標準的な動作と比較することで、通常と異なる作業も検知できる仕組みです。
製造業で人による巡回や目視確認だけに頼らず、AIで製品や作業を継続的に確認することで、不具合品の流出防止や作業品質の均一化につなげています。
出典:DAICEL
以下の記事でも製造業のAI活用事例について紹介していますので、あわせてご確認ください。
製造業の事例からわかる3つのAI活用ポイント

上記では、10の事例を紹介しましたが、紹介した製造業の事例には共通点があります。その共通点をもとに製造業において、3つの活用ポイントを紹介します。
- 課題起点でAIの適用領域を決める
- データ整備とセットで進める
- 人材育成まで含めて設計する
①課題起点でAIの適用領域を決める
製造業のAI活用では、最初に「AIで何ができるか」を考えるのではなく、「どの課題を解決したいか」を明確にすることが重要です。製造業において、目的が曖昧なままAIを導入すると、本格運用に進めない可能性があります。
導入前には、少なくとも次の内容を整理しておきましょう。
- AIで改善したい業務と現在の課題
- 現状の作業時間、コスト、不良率など
- AI導入後に達成したい削減時間や検出精度
- 導入効果を確認する方法と期間
製造業でAI活用を成功させるには、技術の新しさではなく、現場の課題に合ったAIを選ぶことが大切です。
②データ整備とセットで進める
製造業でAIを導入する場合は、最初から全工場や全工程へ展開するのではなく、対象を絞って効果を確認する方法が製造業では現実的です。
例えば、ブリヂストンのAI成型システムも、タイヤ1本につき480項目の品質データを取得する基盤があるからこそ、製造工程の自動制御を実現できています。
まずは1つの製造ラインや検査工程でAIを試し、精度や費用対効果を確認したうえで、ほかの工程へ展開すると失敗のリスクを抑えられます。
③人材育成まで含めて設計する
AIはシステムを導入しただけでは定着しません。製造業でAIを継続的に活用するには、実際に利用する従業員が仕組みを理解し、業務のなかで使える状態をつくる必要があります。
また、AIが従業員の仕事を奪うものではなく、製造業務の検査や検索、資料作成などの負担を軽減する手段であることを共有しましょう。現場の担当者を早い段階からプロジェクトに参加させ、意見を反映しながら運用を改善することが、製造業へのAI定着につながります。
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以下の記事では、AI活用についてよりわかりやすくポイントを解説していますので、あわせてご覧ください。
製造業のAI活用事例についてのまとめ
製造業のAI活用は、外観検査や予知保全、需要予測だけでなく、生成AIを使った技術継承やナレッジ共有にも広がっています。製造業がAIを導入することで、さまざまな効果が期待できます。
ただし、製造業のAI導入は、最新のAIツールを導入するだけでは成功しません。まずは解決したい現場の課題を明確にし、AIで活用できるデータを整備したうえで、小さな工程から効果を検証することが製造業では重要です。
製造業のAI活用事例を参考に、まずは自社で効果を確認しやすい業務を選び、段階的にAI導入を進めていきましょう。






