「DX人材が足りない」「これからはDX推進できる人が必要だ」近年、このような声を耳にする機会がより増えたように思います。けれどDX推進人材とは実際どんなスキルを持った人のことを言うのか、またそれは自分でもなれるのかなど、疑問を抱いたままの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、DX推進時代に求められる人材像をひもときながら、それぞれの役割や育成のヒントをやさしく解説していきます。
DX推進人材の定義とは？
DX推進人材とは、噛み砕いていうと、デジタル技術を使って会社の仕事のやり方やしくみを変えていける人のことです。
たとえば、紙の書類をなくして全部パソコンで管理したり、AIを使ってお客さんの声を分析したり、といった具合です。ただ技術にくわしいだけでなく、まわりの人と協力して新しいことに挑戦できる力など、あらゆる推進スキルが必要とされるのが特徴です。
DX人材・IT人材・デジタル人材の違い
DX推進人材・IT人材・デジタル人材の違いを一覧表にまとめると、以下のようになります。
| 種類 | 役割 | 特徴 | 目的 |
|---|---|---|---|
| DX推進人材 | 組織やビジネスをデジタルで変革する | 技術だけでなく、企画・改革・巻き込み力が必要 | 会社全体の変化を推進する |
| IT人材 | システムやネットワークの開発・運用・保守 | プログラミングやインフラなど技術に特化 | 安定したIT環境を整える |
| デジタル人材 | データやAIを活用して業務を効率化・最適化する | データ分析やAIの知識に強みをもつ | 日々の仕事をより便利に、スムーズに進める |
DX推進人材は「変革」を主導する存在であり、IT人材はシステムの構築や運用などの技術面を担う人材です。一方、デジタル人材はデータやAIを活用して業務改善を図る役割が中心です。
それぞれの役割は異なりますが、DX推進の実現には上記すべての人材の連携が欠かせません。
DX推進人材の代表的な5つの類型
一口に「DX推進を進める人材」と言っても、その役割はひとつではありません。新しい価値を生み出す企画から、それを支える技術や安全対策まで、幅広い専門性が求められます。
チームでDX推進を実現するには、それぞれの分野で活躍する人材が必要です。ここでは、その代表的な5つのタイプを紹介します。
- ビジネスアーキテクト
- データサイエンティスト
- デザイナー
- サイバーセキュリティ
- ソフトウェアエンジニア
①ビジネスアーキテクト
ビジネスアーキテクトは、DX推進の目的を明確にし、関係部署を巻き込みながらプロジェクト全体を進めていく役割を担います。たとえば新しいサービスを立ち上げたり、既存の業務をもっと効率的にするための改革を主導したりします。
現場だけでなく経営層とも連携しながら、全体の方向性を調整していく調整力が問われます。技術だけでなく、事業の本質を理解する視点と、社内を動かす推進力が求められるポジションです。
②データサイエンティスト
データサイエンティストは、企業が持つ膨大なデータを分析し、そこから価値ある情報を導き出す役割を担います。たとえば、顧客の行動パターンをもとにした販売戦略の提案や、業務効率の改善などに務める、といった具合です。
分析だけでなく、データを使ってどのようにビジネス課題を解決するかを考える「戦略的な視点」も求められます。高度な統計知識やプログラミングスキルに加え、わかりやすく伝える力も重要になります。
③デザイナー
DXにおけるデザイナーは、見た目を整えるだけではなく、サービスの使いやすさやユーザーの感情までをデザインし、顧客体験そのものを設計する役割を担います。
アプリの操作性を考えるUX/UIデザインや、サービスの方向性を決めるコンセプト設計などが役割に含まれます。技術者やマーケターとも連携しながら、ユーザー視点を大切にする感性と、論理的な設計力の両方が求められます。
④サイバーセキュリティ
サイバーセキュリティの担当者は、DX推進によって広がるデジタルの利便性と同時に高まるリスクに対応する方々のことです。社内システムの脆弱性を調査し、攻撃への対策を講じる技術力に加え、全社的なセキュリティ方針を立てて教育や運用まで担います。
サイバー攻撃の手口は年々巧妙になっているため、最新の動向をキャッチし続ける姿勢も重要です。安心してDX推進を進めるための土台を支える存在です。
⑤ソフトウェアエンジニア
ソフトウェアエンジニアは、DX推進で必要とされるさまざまなシステムやアプリを実際に開発・運用する人材のことです。顧客が使うWebアプリや、業務を効率化する社内システムなど、アイデアを形にする役割を果たします。
フロントエンド、バックエンド、クラウド、IoTなど、専門分野は多岐にわたります。単にコードを書くのではなく、使う人の立場に立った設計と改善が求められます。
DX推進人材に求められる7つのスキルとマインド
DX推進を進めるには、最新の技術に精通しているだけでは不十分です。
ここでは、DX推進人材として活躍するために特に重要とされる7つのスキルとマインドを以下のとおり紹介します。
- ITリテラシー
- マネジメントスキル
- コミュニケーションスキル
- リーダーシップ
- 変化を恐れない挑戦的な姿勢
- 型にはまらない発想・想像力
- 小さくコツコツ改善を繰り返す粘り強さ
①ITリテラシー
DX推進の土台となるのがITリテラシーです。たとえばクラウド、AI、IoTといった最新技術の基本的な仕組みを理解しているかどうかは、戦略を立てるうえで大きな差になります。
技術職でなくても、現代のビジネスではデジタルの流れを読み取る力が必要不可欠です。ITに対して苦手意識を持つことなく、用語やしくみを日常的に学び続ける姿勢が求められます。
変化の早い時代だからこそ、「わからないまま放置しないこと」がDX人材としての第一歩と言えるでしょう。
②マネジメントスキル
DXの現場では、複数の部署や専門分野が関わることが多く、プロジェクトの舵取り役としてのマネジメント力が問われます。単なるスケジュール管理だけでなく、各メンバーの役割を理解し、適切な判断を下すバランス感覚が必要です。
また、想定外のトラブルにも柔軟に対応できる調整力も欠かせません。DX推進は前例のない挑戦が多いため、「どう動くべきか」を状況に応じて考え、プロジェクト全体を見渡す力が求められます。
③コミュニケーションスキル
DX推進では、技術者だけでなく現場の担当者や経営層など、多様な立場の人と関わる機会が増えます。そのため、自分の考えをわかりやすく伝える力と、相手の立場を理解しようとする姿勢の両方が求められます。
たとえば専門用語を噛み砕いて説明したり、現場の声をくみ取って企画に反映させたりといった調整力も重要です。信頼関係を築くことで、チームの力を引き出し、DXの推進力を高めることにつながります。
④リーダーシップ
DX推進を進めるには、単なる管理能力ではなく、周囲を巻き込む力としてのリーダーシップが求められます。正解のない中で方向性を示し、チームの意欲を引き出しながら前に進む姿勢が重要となります。
とくに部署や立場の異なるメンバーが関わるDXでは、信頼される存在になることが推進力につながります。自分一人で進めるのではなく、「この人となら変革に挑戦したい」と思われる存在になることが鍵になります。
⑤変化を恐れない挑戦的な姿勢
DXの本質は「変化」にあります。既存のやり方にとらわれず、時代に合わせて新しい方法を試していく柔軟さが必要です。
もちろん失敗のリスクはつきものですが、それを恐れていては改革は進みません。重要なのは、失敗から学び、次に活かす前向きな姿勢です。
自ら動く勇気と、失敗を受け入れる度量が、DX推進人材には欠かせません。
⑥型にはまらない発想・想像力
前例にとらわれず、柔軟なアイデアで課題を解決する力も重要です。
DX推進においては、これまでの常識が通用しない場面が多く、「こうあるべき」という固定観念に縛られていては前に進めません。たとえば別業界の事例からヒントを得たり、ユーザー視点からまったく新しい仕組みを考えたりする発想力が求められます。
既存の枠を超えて、新しい価値を生み出そうとする想像力が、DXの原動力になるのです。
⑦小さくコツコツ改善を繰り返す粘り強さ
DXは一発で成功するものではなく、試行錯誤を繰り返しながら少しずつ形にしていくものです。だからこそ、小さな改善をコツコツと積み重ねる粘り強さが求められます。
最初は思うように進まなくても、改善の手を止めずに続けることで、やがて大きな成果につながっていきます。一つの成功の裏には、地道な努力の積み重ねがあることを理解し、長期的な視点で取り組む姿勢が重要になります。
DX推進人材の現状
現在、多くの企業がDXを推進しようとしていますが、それを支える人材の確保が大きな課題となっています。
デジタルの知識だけでなく、組織を横断してプロジェクトを動かすスキルまで求められるため、質・量の両面で人材が不足しているのです。
とくに日本は世界的に見ても「デジタル人材の育成・活用」に遅れを取っており、今後もこの傾向は続くと予測されています。
人材がなぜ不足しているのか
DX推進人材が不足している背景には、「求められるスキルの幅広さと深さ」があります。単なるITの知識だけでなく、マネジメントやコミュニケーション、事業理解など多面的な能力が必要とされるからです。
また、急速な技術革新に教育が追いつかず、即戦力となる人材が市場に出てこないのも要因のひとつです。DXは待ったなしの状況でありながら、それを担う人材の育成はまだ道半ばといえます。
不足を解消するための対策
DX推進人材を外部から採用するのは理想的ですが、競争が激化している今、そう簡単には確保できません。そのため最近では、自社の社員をDX人材として育成する動きが加速しており、職種に関係なくデジタルや変革の知識を段階的に学ばせる企業が増えているのです。
とはいえ、社内でゼロから教育体制を整えるのは手間も時間もかかります。そこで注目されているのが、外部の研修サービスを活用する方法です。
次の章では、育成を支援する具体的なサービスをご紹介します。
DX推進人材の育成方法
DX推進人材を社内で育てるためには、実務と理論の両面をバランスよく身につけさせる必要があります。わかりやすい例でいうと、前述した類型および役割に応じた資格取得を目標にすると、育成の方向性が明確になりやすくなります。
DX推進人材育成に役立つ役表的な資格試験としては、以下のようなものがあります。
- DX検定
- 応用情報技術者試験
- プロジェクトマネージャ試験
- ITストラテジスト試験
- AI実装検定
①DX検定
DX推進に必要な知識やマインドセットの習得状況を測る検定です。経営、IT、データ、セキュリティなど幅広い領域が対象で、DXの基礎を体系的に理解できているかを可視化できます。
資格には受験条件がないケースが大半なので、非エンジニアでも受験しやすいのが特長です。
②応用情報技術者試験
IT全般の知識だけでなく、マネジメントやセキュリティ、経営戦略まで問われる国家資格です。DX推進プロジェクトに関わる立場として必要なIT活用力や全体設計力を身につけたい人におすすめです。
難易度は高いですが、もっていることで確かなリターンが得られる資格となっています。
③プロジェクトマネージャ試験
大規模プロジェクトの計画、実行、リスク管理を体系的に学べる国家試験です。多職種が関わるDX案件で、全体を管理する立場の人材にとって信頼性の高いスキル証明となります。
この資格で学ぶマネジメント系の知識は、IT業界のみならずさまざまなシーンで使えるので、汎用性が非常に高いのも特徴です。
④ITストラテジスト試験
経営とITを結びつけ、企業のIT戦略を立案できる人材を育てるための高度試験です。DX推進における中長期的な技術活用の道筋を描く役割を担う人に求められます。
こちらもIT業界だけでなく、企画職をはじめとする幅広い業界で有効となる資格なので、取得して損はありません。
⑤AI実装検定
AIの基礎から実装スキルまでを問う民間資格です。Pythonなどを使ってAIを実際に動かす技術力が求められるため、実践的なAIスキルを証明したい技術者向けに適しています。
その他の資格については、以下でも解説しています。
これらのような資格を取得できる人材を育てるには、社員一人ひとりのレベルや職種に合った育成プランが必要です。そこで活用したいのが、DX・AI人材育成研修サービスです。
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DX推進人材についてまとめ
DX推進人材とは、単にITスキルが高い人ではなく、デジタル技術を活用して組織変革をリードできる多才な人材のことです。企画力やマネジメント力、周囲を巻き込む力など、求められる力は多岐にわたります。
人材の不足が続く中、外部からの採用だけでなく、社内で育成する動きも加速しています。資格取得やスキル向上を支援する研修サービスを活用することで、自社に適したDX推進人材を着実に育てることができるでしょう。
