ITおよびDX化が順調に推進している昨今「AI」や「機械学習」という言葉を耳にすることが増えました。そんな中、機械学習エンジニアを目指して日々奮闘している方もいるでしょう。
機械学習に携わるエンジニアを目指すとなれば、プログラミング言語「Python」の知識は避けられません。Pythonは機械学習に最適な言語であるためです。
今回の記事ではPythonの概要や機械学習との関係、活用事例や学習手順をくわしく解説していきます。
「Python」とは?
そもそも「Python」とは、汎用的なプログラミング言語のひとつです。シンプルで読みやすい構文をもつことが大きな特徴で動作の自由度が高く、科学計算やデータ分析、Web開発など幅広い分野で利用されています。
さらに豊富なライブラリやフレームワークが提供されており、迅速な開発が可能。またオープンソースのため数々のコミュニティによって支えられていることもあって初心者からプロまで幅広い層に支持され、教育や研究、産業界などで幅広く活用されています。
機械学習とPythonの関係
機械学習とは「膨大なデータをコンピューターに読み込ませてパターンや傾向を学習させ、最適な回答・選択・判別を自動で行えるようにする技術の総称」のことをいいます。Pythonはこの機械学習の実装に適した言語として広く親しまれており、多くの機械学習ライブラリやフレームワークが提供されています。
この豊富なライブラリやフレームワークは、機械学習モデルの開発やデータ処理を効率的に行うために欠かすことはできません。さらにPythonはコミュニティによって新しい機械学習技術や手法が迅速に取り入れられるなど、最新の機械学習プロジェクトにも適しています。
機械学習が活用されている事例
ここではPythonと好相性の技術「機械学習」が具体的にどのように使われているのか、以下のとおりご紹介します。
- 画像認識技術
- 画像自動生成
- 音声認識技術
- 自然言語処理
- 各種予測
画像認識技術
画像認識技術は機械学習の一分野であり、以下のような幅広い分野で活用されています。
- 自動車の自動(安全)運転サポート
- 医療画像の解析
- 製造業の良品・不良品判断システム
- 各種ロボット掃除機
- 各種液晶デバイスにおける顔認証
深層学習を用いた畳み込みニューラルネットワーク(CNN)などのアルゴリズムが画像認識の性能を飛躍的に向上させ、顔認識や物体検出などの高度なタスクを実現しました。
さら画像認識技術は工業製品の品質管理や農業の生産性向上において革新をもたらしています。
画像自動生成
画像認識のみならず画像を自動で「生成」することにおいても、機械学習は大いに活用されています。
画像自動生成は、機械学習の応用の一つであり、GANなどのモデルを使用して実現されます。これらは訓練データからの新しい画像生成が可能で、美術やデザインのみならずゲーム開発などの分野でも利用されています。
代表例としてはStable Diffusionといったサービスが挙げられますが、現在はWebデザインツール「Canva」に自動生成機能が備わっていたり、ChatGPTで有名なOpenAI社が「DALL・E3」を運営するなど、画像の自動生成が徐々に身近になってきているのが現状です。
おすすめの画像の自動生成サイトについては、以下の記事でもくわしく紹介していますのでぜひ参考にしてください。
音声認識技術
音声認識技術は音声信号をテキストに変換する技術であり、主にスマートスピーカーや音声アシスタント(Siri、Google Assistantなど)をはじめとする音声入力システムで利用されています。
音声認識技術は一般的なユーザーのみならず製造業やコールセンター業務といった分野でも応用されており、効率的な業務処理やサービス向上に大きく貢献しています。
音声認識の仕組みについてよりくわしく知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてください。
自然言語処理
自然言語処理は「人間が日常的に使用する自然言語」をコンピューターが処理できるようにする技術のことです。主に機械翻訳やテキスト生成ツール、文字起こしツールや質問応答システムなどさまざまなアプリケーションで活用されています。
「Transformer」や「self-supervised learning」といったモデルや法が処理性能を向上させ、より複雑な自然言語の理解や生成を可能にしています。そのため上記ツールのほかにも検索エンジンや顧客サポートなど多岐にわたる領域で革新をもたらしています。
各種予測
機械学習はさまざまな予測タスクにも大いに活用されています。具体的には
- 天候予測
- 株価予測
- 需要・トレンド予測
などが挙げられます。
これらの予測は過去のデータから未来の傾向やパターンを学習することで成り立っています。さらに機械学習アルゴリズムはデータの特徴を捉える能力が高くリアルタイムでの予測も可能なので、ビジネスや経済、気象などあらゆる分野におけるリソース配分やリスク管理で効率化を実現しています。
Pythonが機械学習に最適な理由
Pythonが機械学習に適している理由は、主に以下のとおりです。
- 機械学習ライブラリが充実しているから
- コード記法や規則がシンプルだから
- 多くの導入実績があって信頼性が高いから
それぞれ解説します。
機械学習ライブラリが充実しているから
Pythonには「機械学習ライブラリ」という、機械学習プログラムをまとめたフレームワークのようなものが豊富にあります。代表的なものをまとめると、以下のようになります。
分類 | 名称 | できること |
標準 | json | データエンコードやデコード |
random | 乱数や関数を生成 | |
math/statistics | 関数および計算モジュールを出力 | |
pip | 外部ライブラリインストールや呼び出し・検索 | |
Pillow | 画像生成・処理・読み込み・リサイズなど編集全般 | |
tkinter | GUIアプリの各種機能の実装 | |
外部 | Pandas | 各種データの処理および分析 |
dateutil | 日にち・祝日の計算や比較 | |
Numpy | 線形代数、行列、ベクトルなどの演算 | |
matplotlib | プロット図および折れ線、3Dなどの各種グラフ生成 | |
sklearn | 各種機械学習モデルの実装・開発 | |
Tensorflow | ディープラーニングの実装・開発 |
しかもこれらはほんの一部の代表例であり、細かなものも含めるとここでは紹介しきれないほど無数に存在します。
コード記法や規則がシンプルだから
シンプルなコード記法や規則も、Pythonが機械学習に向く理由です。Pythonの構文は明確で読みやすく、初心者でも扱いやすい特徴があります。
JAVAやC言語などと比較するとモダンな言語であることも理由のひとつで、そのためPythonは機械学習の初学者から専門家まで幅広く支持されているのです。
多くの導入実績があって信頼性が高いから
Pythonが機械学習に最適な理由に「多くの導入実績と高い信頼性」があります。Pythonは機械学習コミュニティで広く使われていることもあり、多くの企業や研究機関がPythonを採用しています。
機械学習のための豊富なライブラリやフレームワークが整備されているだけでなく、オープンソースであることを理由にコミュニティによって開発が進められているため、最新の機械学習技術をはじめとする「情報」が多いことも選ばれる理由のひとつです。
Pythonで機械学習を学ぶ手順
Pythonで機械学習を学ぶ手順は人それぞれですが、もっとも一般的かつ王道の進め方は以下のとおりです。
- Pythonで作りたいもの・実現したいことを決める
- 機械学習の概要を学ぶ
- Pythonの基礎を学ぶ
- 得た知識を活かしてアウトプットを行う
それぞれ順を追って見ていきましょう。
手順1.Pythonで作りたいもの・実現したいことを決める
Pythonで機械学習を学ぶなら、まずはじめに作りたいものや実現したいことを具体的に決めることです。これが明確になっていないとのちのち方向性がブレてしまい、余計な時間がかかる可能性があるためです。
Pythonで実現できることは星の数ほどあるので、すべて学習しようとしてはキリがありません。あらかじめやりたいこと・ゴールを定めてそれに必要な知識やスキルだけを取捨選択していくことが大切です。
手順2.機械学習の概要を学ぶ
目標やゴールを定めたら、機械学習の大まかな概要を学習しましょう。主に
- 機械学習とはどのようなものか
- どういうことをすればどう動くのか
- 学習手法の種類やアルゴリズム
といったものが該当します。
インターネットの動画や教材、またわからない部分を書籍などで補うなど、両者を併用する形で基礎知識尾を身に付けていきましょう。
なおこの手順の学習にはあまり時間をかけず、6~7割程度の理解で次に進むことをおすすめします。ここですべて記憶しようとするのは非常に困難であり、学習を進めていくことで点だった知識が結ばれて線や立体になっていくためです。
手順3.Pythonの基礎を学ぶ
機械学習に関する基礎を学んだら、次に学ぶのはPythonの基礎です。
主に基本的な文法やデータ構造、制御構文などを理解することが重要です。そしてライブラリやフレームワークを用いた、データ処理や可視化の方法も押さえておくといいでしょう。さらに関数やクラスの作成方法も理解しておくことで、自分の機械学習モデルをより効率的に記述できるようになります。
またこのフェーズも6~7割の理解でOKです。プログラミングに暗記は必要ないので、まずは「こういうことをすれば、こういうことができるんだな」くらいの理解で次に進みましょう。
手順4.得た知識を活かしてアウトプットを行う
学んだ知識を活かしてアウトプットを行いましょう。たとえば学んだ内容を活かして機械学習ライブラリやフレームワークを用い、自作のAIシステムを作ってみるということです。
このフェーズは初心者にとって最大の鬼門であり、右も左もわからずまったく手がつかないことをひしひしと痛感することは間違いないでしょう。これは誰もが当てはまることなので、時間をかけて焦らずじっくり取り組むことが大切です。
Pythonの習得に必要な時間・期間
あくまで目安にはなりますが、まったくの初心者から機械学習およびPythonを習得するとなれば、
- 独学
1日3時間の学習で4ヶ月~6ヶ月 - スクールやセミナー活用
1日3時間の学習で2~3ヶ月
となるでしょう。会社に努めていない方で、1日の学習時間をもっと投下できるならもっと早まる可能性はあります。
ただ学習の方法や効率、目指す目的によって大きく変わります。とはいえ学習時間より、確実に習得できたか否かのほうが重要です。
効率よくPythonを学べるコンテンツ
ここでは効率よくPythonを学べるコンテンツを、以下のとおりご紹介します。
- Progate
- ドットインストール
- Python基礎セミナー講習
Progate
Progate(プロゲート)は、オンライン上でプログラミングを学ぶための学習プラットフォームです。初心者向けから上級者向けまで幅広いレベルのコースが提供されており、Pythonをはじめとする主要なプログラミング言語(JavaScript、Ruby、PHPなど)について学ぶことができます。
またProgateは実際にコードを書きながら学ぶことができるため、実践的なスキルも身につきます。さらにスマホ版も用意されているため、自宅や外出先などでも自分のペースで学習を進められるでしょう。
ドットインストール
ドットインストールはプログラミングを動画形式で学べる日本の学習サイトです。短い動画形式のレッスンが細かく分類されていることが大きな特徴で、手軽に学習を始めることができます。
Pythonはもちろんあらゆるプログラミング言語やフレームワーク、ライブラリなど幅広いテーマを取り扱っていることから初心者を中心に人気を集めています。また動画だけでなくテキストやサンプルコードも充実しており、理解を深めるための演習も用意されています。
Python基礎セミナー講習
AI研究所が運営する「Python基礎セミナー講習」は「最速でPythonのプロになること」を目的とした2日間の短期集中セミナーです。
実務・実践に重要な知識の中でも、とくによく現場で使われるものにフォーカスを当てたカリキュラム構成が定評で、受講者は完全未経験者をはじめ1万人、満足度は99.5%を突破しました。受講形式は
- 会場受講
- ライブウェビナー
- eラーニング
から選択でき、そのうちのeラーニングは27,500円で受講できるなど他のセミナーに比べて圧倒的なコストパフォーマンスを実現しています。これから機械学習およびPythonを学び始める方に最適な内容となっていますので、ぜひご検討ください。
機械学習にはPythonが最適についてまとめ
機械学習は画像や音声、自然言語の認識をはじめコンテンツの自動生成や将来予測など、じつにさまざまな分野にあらゆる形式で活用されています。その技術を裏で支えているのがプログラミング言語「Python」の存在です。
Pythonはライブラリの豊富さやシンプルなコード記法によって機械学習における相性が抜群であることから、多くの企業やエンジニアからの絶大な人気を誇ります。コミュニティも充実しているうえ情報量も多いため、これから新しく機械学習を学ぶなら言語はPython一択といっていいでしょう。
本記事で紹介した手順および自分に合った学習コンテンツを活用し、効率のいい学習を実現させて欲しいと思います。