GMOインターネットグループは、全社員を対象とした生成AI教育プログラムを開始し、全社員が生成AIを実践的に学べる環境を整備しました。
アプリ開発や画像作成などの専門講座を受講できる体制を整え、各部署での業務効率化を強力に推進しています。生成AI活用で創出した時間を付加価値の高い新規事業の創出に充当しているため、企業の持続的な成長とイノベーションを加速させることを目指しています。
今回は、生成AIを企業で活用するとできることや有効活用させるためのノウハウを詳しく解説します。
生成AIを企業で活用するとできること
生成AIはテキストや画像、音楽、動画など、様々なデータを生成する能力を持っています。この能力をビジネスに活用することで、様々な効果が期待できます。
以下で、生成AIを企業で活用するとできることを詳しく見ていきましょう。
テキスト生成・要約・翻訳
生成AIはWebサイトに存在する膨大な情報を学習し、様々な指示に合わせたテキスト生成や要約、多言語間で翻訳することができます。例えば、商品説明文の作成やブログ記事の執筆、メールの作成など、多岐にわたる業務に活用できます。
大手転職エージェントのビズリーチでは、職務経歴書の作成に生成AIを活用し、ユーザーが簡単な項目を入力するだけで、高レベルな職務経歴書を最短30秒で生成可能です。
この生成AIにより作成された職務経歴書は、従来の方法で作成されたものと比較してスカウト率が40%向上したという検証結果も出ています。これは、生成AIが生成するテキストの質の高さを示す一例と言えるでしょう。
音声の処理・加工
従来の音声合成技術は、機械的な印象を与えるものが多く、人間のような自然な会話を実現するには限界がありました。しかし、生成AIの登場により、大量の音声データを学習することで、声色を忠実に再現し、感情表現豊かな音声合成が可能です。
生成AIは文章を読み上げるだけでなく、話者の感情やニュアンスに合わせた自然なイントネーションやリズムを生成することができます。これにより、まるで人間が話しているかのような、リアルで自然な音声を自動で作成することが可能になりました。
生成AIを活用した音声処理・加工の代表的な例として、LINEによる音声応対サービスが挙げられます。LINEでは音声認識技術や音声合成技術、自然言語処理技術を組み合わせることで、人間のオペレーターと遜色のない高品質な音声応対サービスを実現し、顧客満足度向上に繋がっています。
ChatGPTの音声機能については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。
デザイン制作
デザイン制作には専門知識やスキルが必要であり、外部に委託すると時間やコストがかかるという課題があります。しかし、生成AIは生成したいイメージや雰囲気、色などのテイストを入力するだけで、簡単にオリジナル画像や動画を生成することができます。
そのため、これまでデザイン経験や知識がなかった人でも、高品質で魅力的なデザインを容易に作成することが可能です。
従来、画像や動画の生成、フォントデザイン、Webサイト構成、デザインフレーム、ロゴ、UIなどを外部企業に依頼していた場合、生成AIを活用することでデザイン制作の内製化が実現するため、時間や費用を大幅に削減できるだけでなく、複数のデザインを低コストで生成することが可能になるでしょう。
AIで絵を自動生成するおすすめサイトについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。
議事録作成
企業では、日々の会議で多くの時間を費やします。特に、議事録作成は時間と労力を要する作業であり、担当者にとっては大きな負担です。
生成AIを活用することで、会議で話された内容をテキストデータとして取り込み、要約したり、タスクを抽出したりすることができます。
また、一部の生成AIツールでは、会議中の音声をリアルタイムで文字起こしし、議事録を作成することができるため、手入力の必要がなく、より効率的な議事録作成が可能です。
コード生成と学習支援
生成AIの大きな特徴の一つが、自然言語による指示に基づいてプログラミングコードを生成できることです。例えば、「〇〇機能を実装するPythonコード」といった指示を入力することで、AIが自動的にコードを生成してくれます。
この技術の進化により、手作業でのコード作成にかかる時間や労力を大幅に削減することができます。特に、定型的なコードや反復処理が多い部分の作成をAIに任せることで、プログラマーはより創造的な作業に集中することができます。
また、生成AIはコードの誤りやエラー、バグなどの特定にも役立ちます。AIが生成したコードをチェックすることで、人間が見落としがちなミスを早期に発見し、修正することができるでしょう。
また、プログラミング問題の生成や特定の問題に対する実装方法の提案などを提供することもできます。AIとの対話を通じて疑問点を解消したり、AIが生成したコードを参考にしたりすることで、より効率的に学習を進めることができます。
市場分析や新規事業開発
生成AIを活用することで、市場調査にかかる時間と手間を大幅に削減することができます。従来、市場調査には多大な時間と労力がかかっていましたが、生成AIを活用することで、市場動向の分析を効率的に行うことができます。
例えば、特定のキーワードやテーマに関する情報を収集し、市場規模や成長率、競合企業の動向などを自動的に分析することができるので、調査にかかる時間とコストを大幅に削減し、より迅速な意思決定が可能です。
また、生成AIは既存のデータやトレンドに基づいた新しいアイデアを提案することも得意としています。例えば、特定のターゲット層のニーズや潜在的な課題を分析し、新しい商品やサービスのアイデアを生成したり、競合他社の分析結果に基づいて、自社独自の強みを活かした差別化戦略を提案したりすることも可能です。
生成AIを活用することで、社員はより戦略的な業務に集中することができ、企業の成長に貢献することができます。生成AIが提供するデータやアイデアは、経営戦略や事業計画の策定にも役立つため、客観的なデータに基づいて意思決定を行うことで、より成功率の高いビジネスを展開することができるでしょう。
カスタマーサポート
生成AIは質問内容を理解し、適切な回答を生成することができるため、顧客対応に必要な人員を削減し、人手不足の解消や人件費の削減に繋げることが可能です。
また、生成AIは24時間365日稼働し、多言語にも対応できるため、顧客はいつでもどこでも自分の言語でサポートを受けることや顧客一人ひとりの悩みに寄り添った対応が可能です。そのため、顧客からの信頼を得て、企業ブランドを高めることができます。
世界的に有名な化粧品会社ロレアルは、美容アドバイスアプリで生成AIを活用しており、チャットで美容相談や肌画像診断を行い、ユーザーに最適な美容法や商品を提案しています。
その結果、店舗への来店をためらっていた顧客の購買意欲を高めることに成功しました。
生成AIの企業活用事例
生成AIは様々な分野で注目を集めていますが、ビジネスの世界でもその活用が進んでおり、企業では、生成AIを活用することで業務効率化や新たな価値創造に繋がる可能性を秘めています。
以下で、生成AIの企業活用事例をご紹介します。
チャットボット
チャットボットは、ユーザーからの質問に対して自動的に回答するシステムであり、24時間365日、時間や人員に制約されずに均質なサービスを提供できる点がメリットです。
生成AIを搭載したチャットボットは、自然言語処理能力が向上しており、人間と会話しているかのようなスムーズなコミュニケーションができます。
例えば、JALはAIチャットボット「AIChat」を導入し、世界26地域のWebサイトで「チャット自動応答サービス」を展開しています。
JAL便の予約や購入、運行状況、搭乗に関する一般的な問い合わせに加え、世界情勢の変化や入国制限、減便、運休など、リアルタイムな情報にも自動で応答できる点が特徴です。
チャットボットの仕組みについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。
キャラクター生成
サントリー食品インターナショナルは、清涼飲料水「C.C.レモン」のPR活動において、生成AIを活用しました。C.C.レモンを擬人化したキャラクターの顔や衣装、声、動き、セリフを生成AIで作成し、自己紹介動画を制作し、キャラクターを発表するプレスリリースも生成AIを用いて作成されています。
サントリー食品インターナショナルの他にも、多くの企業が生成AIを広告やコマーシャルの制作に活用しています。例えば、パルコや伊藤園などがその例として挙げられます。
生成AIでアバターが作れるおすすめサービスについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。
リサーチやアイデア出し
KDDIでは、社内のニーズに応え、生成AIを活用したAIチャットサービス「KDDI AI-Chat」を開発しました。社内で利用されているMicrosoft Teams上で起動することができ、社員は普段使い慣れた環境で手軽にAIを利用し、コミュニケーションや業務スピードの向上に繋がっています。
KDDI AI-Chatは、企画業務におけるリサーチやアイデア出しやクリエイティブ業務支援、文書作成支援など、幅広い業務に活用しています。
生成AIを企業で有効活用させるためのノウハウ
企業で生成AIを導入しただけでは、すぐに効果が得られるわけではありません。企業が生成AIを有効活用するためには、以下のような重要なポイントを押さえる必要があります。
- 導入の目的を明確にする
- 学習データの追加を行う
- 情報漏洩などのリスク対策を講じる
- 定期的な成果確認と改善を繰り返す
- 社員が生成AIを使いこなせるようにする
以下で各項目を詳しく見ていきましょう。
導入の目的を明確にする
数多くの生成AIツールが存在しますが、それぞれ得意とする用途が異なります。そのため、自社の課題や目的に合致したツールを選ぶことが重要です。
文章作成の効率化 | 自然な文章を自動生成するツール |
画像生成 | アイデアを基に高品質な画像を生成するツール |
データ分析 | 大量のデータを解析し、有益な情報を抽出するツール |
プログラミング支援 | コードの自動生成やバグ検出をサポートするツール |
具体的な目的を定めることで、最適なツールを見つけやすくなります。また、既存のツールでは要件を満たせない場合、自社専用の生成AIツールを開発することも検討しましょう。
開発には、専門知識を持つベンダーとの連携が重要になります。
学習データの追加を行う
生成AIを企業の現場で活用する場合、学習データの内容によっては、期待するような成果が得られないことがあります。特に、企業固有のルールや専門知識が求められる場合には、追加のデータ学習が重要です。
生成AIは、一般的な情報に基づいて回答を生成するため、社内規定や業務マニュアルなど、企業固有の情報を学習させることで、より実用的なツールとして活用できるのです。
また、専門用語や業界特有の知識を学習させることで、専門性の高い分野での活用が可能です。例えば、医療分野であれば、医学論文や臨床データを学習させることで、診断支援や研究開発に役立てることができるでしょう。
生成AIは利用状況を分析しながら、学習データを継続的に改善することが重要です。ユーザーからのフィードバックや利用履歴を分析し、不足している情報や改善点を見つけることで、より高精度なAIへと成長させることができるのです。
情報漏洩などのリスク対策を講じる
生成AIはユーザーが入力したデータを学習し、学習結果を基に新たなデータ生成や分析を行います。この学習機能は、より高度なデータ生成を可能にする一方で、情報漏洩や著作権侵害のリスクがあります。
例えば、個人情報や企業の機密情報、既存の画像や動画、テキストなどを入力した場合、その情報が学習データとして蓄積され、第三者へのデータ生成時に含まれてしまう可能性があります。
また、バグや不正アクセスによって情報が漏洩する危険性も否定できないため、情報漏洩や著作権侵害のリスクを理解し、適切な対策を講じることが重要です。
定期的な成果確認と改善を繰り返す
生成AIの効果を最大限に引き出すためには、定期的な成果確認と改善サイクルが重要です。もし、目標達成が難しい場合は、指示の見直しや学習データの追加、AIモデルの選定など、様々な角度から改善策を検討します。
さらに、改善策を実行した後も再度成果を確認し、効果測定と改善を繰り返すことで、生成AIの活用効果を最大化することができるでしょう。
社員が生成AIを使いこなせるようにする
生成AIのポテンシャルを最大限に引き出すためには、社員一人ひとりが生成AIを理解し、使いこなせるようになる必要があります。
生成AIは、AIとの対話によってアウトプットを引き出すという特性上、使い手のAIリテラシーによって成果が大きく左右されるため、社員のAIリテラシー向上は、そのポテンシャルを最大限に引き出す上で欠かせません。
AIリテラシーとは、AIの基本的な知識や仕組みや適切な使用方法、倫理的な側面などを理解する能力を指します。以下のようなセミナー活用で、AIリテラシーを向上させれば、社員は生成AIをより効果的に活用し、その恩恵を最大限に受けることができるでしょう。
生成AIセミナー
生成AIセミナーは、2日間の集中セミナーで生成AIの基礎から応用まで、しっかりと理解することができます。セミナーでは、様々な種類の生成AIやその中核をなす大規模言語モデル(LLM)の仕組み、機械学習の基礎知識も習得できるため、生成AIへの理解が深まります。
また、ChatGPTなどの活用方法を実践的に学び、日々の業務や学習に役立つ具体的な活用事例も学べるため、すぐに実践することができるでしょう。
生成AIに意図通りの出力をさせるためのプロンプト作成術や独自の生成AIを作成するノウハウ、実際の導入事例を参考に、自社に最適な活用方法を見つけることができます。
生成AIの企業活用でビジネスの可能性を広げよう
今回は、生成AIを企業で活用するとできることや有効活用させるためのノウハウを解説しました。今回紹介した事例以外にも、多くの企業が生成AIを活用しており、将来的には生成AIを使うことがビジネスの常識となるかもしれません。
生成AIの導入で、業務効率の大幅な向上や人手不足の解消、コスト削減、新規ビジネスの創出など様々なメリットが得られるでしょう。
まずは、今回紹介した成功事例やノウハウを参考に、自社での活用方法を検討することをおすすめします。
