博報堂は2025年1月、NTTデータ、アイリッジとの共同出資で新たに2社を設立し、ITコンサルティングの領域に踏み込みました。背景には、AIの進化に対する危機感と、変化のスピードに適応できる企業体制の必要性があります。
とはいえ、そこは外資系大手が強固な地盤を築いている激しい競争のある市場。なぜ今、ITコンサルなのでしょうか。
この記事では、ITコンサルティングを依頼するメリットデメリットや、導入事例、成功させるためのポイントまで、わかりやすく紹介していきます。
ITコンサルとは
ITコンサルとは、企業のIT活用を戦略的にサポートする専門サービスです。コンサルティングの略の事で、技術導入だけでなく、経営視点からの助言や、業務改善、将来を見据えたシステム投資の判断など、多岐にわたるサポートを行います。
例えば、「業務が非効率で時間がかかっている」「デジタル化を進めたいけれど何から始めれば良いかわからない」などの悩みに、第三者の視点で分析し、戦略的に方向性を提供します。
サポート内容は幅広く、システム導入の助言だけでなく、IT戦略の策定や業務改善、データ活用サポートなども含まれます。近年は、クラウドやAI、セキュリティなどの進化により、企業のIT課題はより複雑になっている中で、経営目線を持ったITコンサルティングの存在感が高まっているのです。
ITコンサルタントと経営コンサルタントの違い
コンサルティング業務を行う人のことをコンサルタントと呼びます。コンサルタントは、役割や専門分野により大きく異なります。特に混同されやすいのがITコンサルタントと経営コンサルタント。
どちらも企業の課題解決を支援するという点では共通していますが、アプローチの視点や得意領域、関わる部署に明確な違いがあります。以下の表にその違いを整理しました。
ITコンサルタント | 経営コンサルタント | |
視点 | ITを活用し業務最適化をサポート | 経営戦略や事業の方向性のサポート |
得意領域 | システム導入、DX、業務改善 | 新規事業、組織改革、戦略立案 |
評価軸 | ITの効果、効率、費用対効果 | 売上成長、収益性、事業拡大 |
関わる部署 | 情報システム部、現場など | 経営層、企画部、管理部門など |
どちらが優れているという話ではなく、「何を解決したいのか」によって選ぶべきコンサルタントは変わります。ITの活用方法が分からないならITコンサル、事業の方向性に迷っているなら経営コンサル。
この違いを押さえておくことで、より効果的な外部サポートを活用できるはずです。
ITコンサルタントの種類
ITコンサルタントにはさまざまな種類があり、支援の内容や専門分野により分類されます。企業の課題や業界の特性により、求められるITコンサルタントの専門性は大きく異なります。ここでは代表的な種類の特徴と役割を解説します。
IT戦略コンサルタント
IT戦略コンサルタントは、企業の経営目標とIT投資の整合性を図ります。新しいシステムを導入するだけではなく、「なぜ今それが必要なのか」「将来どのように事業へ貢献するか」といった視点で助言します。
経営陣との対話を行い、将来のITロードマップを描く存在です。
ERPコンサルタント
ERPコンサルタントは、財務や人事、在庫管理など、企業活動の基盤となるERP(基幹業務システム)の導入や運用をサポートします。業務全体を把握しながら最適な構成を提案し、部署間の連携強化や業務効率化を図るのが得意です。
SAPコンサルタント
SAPは世界的に使われるERPパッケージの一つで、SAPコンサルタントはその専門家です。複雑なカスタマイズや業界別のソリューションにも精通しており、特にグローバル展開を目指す企業にとっては欠かせないパートナーとなるでしょう。
技術力と業務理解、どちらも求められる高度な職種です。
セキュリティコンサルタント
セキュリティコンサルタントは、サイバー攻撃や情報漏洩などのリスクから企業を守るための対策を設計し、実装します。技術的な防御はもちろん、社内ルールの整備や教育面のサポートまでカバーし、組織全体のセキュリティ意識向上に繋げています。
生成AIのリスクについては、以下の記事で詳しくご紹介しています。
データアナリティクスコンサルタント
膨大なデータから有益なアドバイスを行うのが、データアナリティクスコンサルタントです。BIツールの導入サポートや、データ活用プロセスの構築、AIを活用した予測分析など、さまざまなアプローチで企業の判断をサポートします。
SCMコンサルタント
SCM(サプライチェーンマネジメント)コンサルタントは、調達や、生産、物流などの一連の流れを効率化する専門家です。需要の変動に強い仕組みを構築し、在庫の最適化や納期短縮など、利益に直結する改善をサポートします。
CRMコンサルタント
CRMコンサルタントは、顧客関係管理(Customer Relationship Management)の仕組み作りの専門家です。顧客データの活用やマーケティングの自動化、問い合わせ対応の効率化などを通じ、売上向上やファン作りを促進することが主な目的です。
PMOコンサルタント
PMO(Project Management Office)コンサルタントは、大規模なITプロジェクトの進行を支える専門家です。スケジュール管理や品質管理、リスクマネジメントなどを通じ、プロジェクトが迷走しないよう舵取りを行う縁の下の力持ち的な存在です。
ITコンサルティング導入によるメリット
日々の業務に追われる企業にとって、ITまわりの課題は分かっていても、手がつけられない状態に陥りがちです。現場では、非効率な業務や、属人化した作業、老朽化したシステムに頭を抱えつつも、どこから改善すべきか判断できずにいるケースが多く見られるでしょう。
ここにITコンサルティングを導入することで、以下のようなメリットを得ることができるのです。
企業の課題と優先順位付けが明確になる
ITコンサルティングは、第三者の視点で企業の現状を整理し、どこに問題があるのかを可視化するため、日頃見落とされがちな課題をあぶり出し、改善の糸口がつかめるようになります。
社内でなんとなく気になっていたことが、具体的なアクションへと変わるのは、大きな前進でしょう。
判断のスピードと質が向上する
専門家のサポートを受けることで、ITへの投資や業務改善の判断がグッとスムーズになります。特に、IT分野に詳しい人材が社内にいない場合、ITの選定や導入の進め方がボトルネックになることも。
ITコンサルタントの存在は、経営陣と現場の橋渡し役となるため、迷いのない判断を後押しするのです。
プロジェクトを進行する仕組みができる
IT導入や業務改善は、時間もエネルギーもかかる大仕事。プロジェクトが途中で行き詰まることも珍しくありません。
そこで、PMOのような役割を果たすITコンサルタントがいれば、全体をマネジメントしつつ、着実にゴールへと導くことが可能になります。
社内のITリテラシーが底上げされる
ITコンサルタントという外部の専門家が関わることで、自然と社員の学びも促進されます。ITシステムの使い方はもちろん、なぜそれが必要なのか、どう業務に活かせるのかを理解することで、現場全体も育ちやすくなります。
長期的には自走できる組織への変化が期待できます。
ITコンサルティング導入によるデメリット
ITコンサルティングには多くのメリットがありますが、盲目的に信頼してしまうと「思っていたのと違った…」という事態に陥ることも。以下では、導入前に知っておきたいリスクや注意点をご紹介します。
初期コストや継続費用の負担が大きい
ITコンサルティングの導入には、当然ですがコストがかかります。数十万円から始まり、長期契約やプロジェクト規模によっては数百万円に達することも。
中小企業にとってはその出費が重く感じられて、「費用に見合う効果があるのか?」という不安がつきまといます。そのため、投資対効果の見極めを慎重に行う必要があります。
目に見える効果を確認するに時間がかかる
ITコンサルティングはあくまで仕組みづくりのサポートです。そのため、目に見える成果が出るまでには一定の時間がかかります。
特に、社内での調整や業務の見直しに時間を要する場合、短期間で結果を求める経営層との温度差が問題になることもあるでしょう。
社内の理解と協力を得る必要がある
外部のITコンサルタントが自社に入ることで、現場の社員に監視されているようなプレッシャーを与えてしまうことも。
また、業務改善に対する抵抗感や「どうせ変わらない」という諦めムードが広がっていると、せっかくの提案も実行に移されないまま終わってしまう恐れも考えられるでしょう。
ITコンサルタントにより質が異なる
どんなに大手の会社に依頼しても、実際に担当するITコンサルタントの能力にはバラつきがあります。例えば、業界理解が浅かったり、コミュニケーション能力に難があったりする場合、プロジェクトが空回りすることも。
選ぶ際は、誰が担当するのか、過去にどんな実績があるのかなどの具体的な確認が重要です。
ITコンサルタントの上手な選び方
ITコンサルタントと言っても、その所属形態や専門分野、提供スタイルには違いがあります。企業にとって最適なパートナーを見極めるためには、ITコンサルタントの選び方のポイントを知っておくことが欠かせません。
ここでは、ITコンサルタントを選ぶ時に押さえるべきポイントをご紹介します。
支援体制とリソースの充実度を確認する
ITコンサルタントを選ぶ際には、サポート体制やリソースの豊富さが重要です。例えば、大手IT企業やSIerに所属するITコンサルタントは、社内に専門部門やエンジニアを抱えていて、複雑なプロジェクトでもワンストップでサポートできる体制が整っています。
手離れが良く、全体を任せたいという場合は、このような体制の整ったITコンサルタントが安心感をもたらしてくれるでしょう。ただし、その分コストは高めになる傾向があり、自社サービスや提携サービスをベースにした提案が中心になることも。
その提案が本当に自社にとって最適なのか、他の選択肢が検討されているのかなど、内容の中立性や柔軟性も判断することが大切です。
専門分野とマッチするか見極める
ITコンサルタントにも得意不得意はあります。だからこそ、自社の課題に近い経験を持っているかどうかは確認しておくべきポイントです。
例えば、ERP導入を検討しているのに、業務改善に特化したITコンサルティングしか経験がないと、希望通りの助言は得られにくいかもしれません。一方、同じ業界や業種での実績が豊富なITコンサルタントであれば、業務改善や現場のリアルに即した提案が期待できるでしょう。
ITコンサルタントに相談する際は、過去のサポート事例やプロジェクトの規模感、使用したツールや技術の種類などを具体的に聞いてみるのがおすすめです。
実際に担当する人物のスキルと人柄を確認する
コンサルティングの質は、担当者に大きく左右されます。有名な会社名やブランドに安心してしまいがちですが、最終的に現場で向き合うのは人です。
そのため、専門知識だけでなく、ヒアリング力や提案の分かりやすさ、信頼関係を築ける人柄があるかどうかを見極めることが、ITコンサルティング導入の成功に直結します。
また、面談や打ち合わせでは、「話をしっかり聞いてくれているか」「質問の意図を汲み取ってくれるか」など、担当者の力量を探ることも重要です。スキルも大事ですが、信頼できるかどうかが一番の決め手になるかもしれません。
料金や契約条件の透明性を確認する
ITコンサルティングはプロジェクトにより金額や契約期間が変動しやすいため、「思っていたより高かった」「成果が出ていないのに支払いが発生した」などの不満が後から出てくるケースも。
そのため、見積書の内訳が明確か、成果報酬や期間契約などの形式が選べるか、途中解約やトラブル時の対応はどうなっているかなどの条件を契約前に確認しておくことで、後のトラブルを避けやすくなります。
なんとなくいい人そうだからと進める前に、まずは契約書をよく読むことが大切です。
ITコンサルティング導入の費用対効果を高めるポイント
ITコンサルティングにおける最大の懸念が「費用に見合う成果が得られるのか?」という点です。投資に対する効果を最大化するには、ITコンサルタントに任せきりにするのではなく、自社側の準備や関わり方も重要です。
以下では、ITコンサルティング導入の費用対効果を高めるために自社が意識すべきポイントをご紹介します。
導入目的と期待する成果を明確にする
ITコンサルティングを導入する際は、なんとなくや最近流行っているからといった曖昧な目的だと、成果も曖昧になりがちです。
ITコンサルティング導入で、どの業務を改善したいのか、どんな変化を求めているのかなどの目的を明確にし、関係者間で共有することが、ITコンサルティングの提案の精度を高め、無駄な作業やコストを削減することにも繋がります。
社内との連携体制を整えて巻き込む
どんなに優れたITコンサルタントを導入しても、社内が非協力的では前に進みません。現場を巻き込みながら、実態に即した改善を行うには、社内の理解と協力が欠かせないのです。
IT部門はもちろん、経営層や現場の重要人物を巻き込むことで、全体の推進力がぐっと高まり、プロジェクトの実行性も増すでしょう。
進捗を可視化し必要に応じて修正する
ITコンサルティングに頼んで終わりにしないことも大切です。社内でも定期的なミーティングで進捗を確認し、目的に合わせて効果が出ているかを常にチェックしましょう。
想定と違う動きがあれば。早めに方向性を軌道修正する姿勢が最終的な費用対効果を左右するのです。
情報共有とコミュニケーションを密にする
ITコンサルティングは、対話のプロセスです。定例ミーティングやレポート共有など、情報が一方通行にならないような仕組みをつくることで、信頼関係とスピード感が育ちます。
遠慮せず、違和感や疑問は早めに伝えることも大切です。
成果の測定と振り返りを欠かさない
プロジェクトの終了はゴールではありません。ITコンサルティング導入後に何が変わったのか、数値や定性面の両方で成果を検証し、必要に応じて次の改善施策へと繋げましょう。
小さな成功でも記録し、チームで共有することで、次の取り組みに対するモチベーションにも繋がります。
AI研究所ではDX/AIのITコンサルティングを行っております
AI研究所では、DX(デジタルトランスフォーメーション)やAI導入を検討している企業向けに、無料のコンサルティングサービスを提供しています。
このサービスでは、企業の業務内容や課題をヒアリングし、最適なDX/AI化の提案を行います。具体的な支援内容には、DXやAIの人材育成・新人研修のカリキュラムの提案から実行までが含まれます。
また、以下のようなプロジェクトを推進するための包括的なサポートも行っています。
- AI受託開発
- PoC(概念実証)サービス
- AIプロジェクトのプランニング
- 人材育成
- チームビルディング
- スケジューリング
- タスク管理など、
AI研究所のコンサルティングサービスは、企業のDX/AI導入を成功に導くための伴走型支援を提供しており、無料相談を通じ、自社の課題や目標に合った最適解を見つけることができるでしょう。
DXコンサルティングについては、以下の記事で詳しくご紹介しています。
ITコンサルティングは変化に強い企業への第一歩
今回は、ITコンサルティングの種類や、導入のメリット・デメリット、成功のポイントまでを幅広く解説しました。大切なのは、最新技術だけに頼るのではなく、人と戦略をつなぐ存在としてITコンサルタントが機能するということです。
IT活用は、業務効率化の手段だけではなく、事業の継続性や競争力そのものに直結します。その中で、自社だけで答えを出すのが難しいとき、外部の知見や実績を持つITコンサルタントの存在はとても心強いでしょう。
