三菱UFJ信託銀行は、社内問い合わせ対応の効率化を目指し、生成AIを導入しました。同社の市場デジタル推進部では、社員が「適切な情報にたどり着けない」という課題を抱えていたことを解消するため、この取り組みを開始したと述べています。
生成AIの導入により、金融市場取引業務に関する社内問い合わせの対応が自動化され、専門部署の対応時間が従来の半分に短縮されました。生成AIがシステムの仕様書や業務マニュアルなどの情報を学習し、高度な専門知識を必要とする問い合わせにも正確に回答できるようになったためです。
今回は、問い合わせ対応を自動化するメリットやデメリット、自動化の具体的な方法、その際の注意点を詳しく解説します。
問い合わせ対応の自動化とは
問い合わせ対応とは、従業員や顧客から寄せられる様々な質問や要望に対して適切に対応する業務です。大きく分けると、社内からの問い合わせと社外からの問い合わせの2種類があります。問い合わせ対応の自動化とは、これらの問い合わせ対応業務の一部を人手を介さずに自動で行うことです。
社内からの問い合わせ | 従業員が業務を進める上で発生する疑問、社内のシステムや手続きに関する質問など |
社外からの問い合わせ | 顧客が製品やサービスについて抱く疑問やトラブル、要望など |
社内からの問い合わせは、従業員の業務効率向上を目的とし、迅速かつ正確な対応が求められる一方で、顧客満足度向上を目的とし、丁寧かつ正確な対応が求められます。質の高い問い合わせ対応の自動化を行うことで、顧客満足度の向上や従業員の生産性向上、企業全体の成長につなげることができます。
問い合わせ対応を自動化するメリット
問い合わせ対応を自動化することで、やり取りを円滑にし、利用者の満足度を向上させることができます。この自動化がもたらす主なメリットを以下で詳しく解説します。
業務効率化につながる
問い合わせ対応を自動化することで、担当者の負担を軽減し、業務効率を大幅に改善することができます。これまで、社内の問い合わせ対応は総務や経理など、多くの部門の担当者の時間を占有してきました。そのため、担当者は本来の業務に集中できず、ストレスや負担を感じていたのが現状です。
自動化により、担当者はルーティンワークから解放され、より付加価値の高い業務に注力できるようになるため、各部門の生産性が向上し、企業全体の競争力強化につながることが期待されるでしょう。
社員の精神的負担を軽くする
問い合わせの自動化は、社員の精神的な負担を大きく軽減する効果が期待できます。これまで、社員は同じような問い合わせに何度も対応したり、迅速な回答を求められたりすることで、大きなストレスを抱えていました。
しかし、自動化により機械に任せられるようになれば、社員はより創造的な仕事に集中できるようになり、精神的な負担が大幅に減ります。このストレス軽減は、社員の離職率の改善にもつながる可能性があります。問い合わせ対応の自動化によってストレス要因を取り除くことで、社員の定着率向上にもつながるでしょう。
見込み客を逃さない仕組み作りができる
社外からの問い合わせは、新たなビジネスチャンスにつながる第一歩です。自動音声応答システムやチャットボットなどによる自動対応は、24時間365日体制で対応が可能になり、見込み客との接点を確実につかむための有効な手段です。
例えば、深夜帯など自社の営業時間外であっても、問い合わせ窓口を設置することで、いつでも顧客からの問い合わせに対応できるようになります。これにより、これまで見逃していた機会を捉え、見込み客を逃さない仕組みを構築することができます。問い合わせ自動化ツールを選ぶ際には、営業時間外でも対応可能な機能を備えているか、必ず確認するようにしましょう。
回答のバラつきが防げる
問い合わせ対応を人手に頼っていると、回答内容にバラつきが生じやすく、社内外を問わずクレームに繋がる問題が発生します。このバラつきは、問い合わせ担当者の負担増に直結し、業務効率の低下にもつながる要因となります。
自動化システムは、あらかじめ定められたルールに基づき、常に一定の品質で回答を提供を提供するため、人為的なミスによる誤った回答や担当者ごとの回答のバラつきを防止し、クレーム発生のリスクを大幅に軽減できます。
データとして収集できる
企業に寄せられる問い合わせの内容や属性、対応履歴などの情報は、貴重な資産となり得ます。これらのデータを蓄積し、集計・分析することで、問い合わせ対応の質向上だけでなく、製品やサービスの改善、新規開発のヒントにもつながるのです。
特に、社外からの問い合わせは、顧客が実際に製品やサービスを利用する中で感じた問題点や改善点などが直接的に反映される場です。顧客の声を組織全体で共有し、分析することで、顧客視点に立ったより良いサービスの提供が可能になるでしょう。問い合わせデータは、企業が顧客との接点を深め、より良い製品やサービスを提供するための重要な情報源なのです。
問い合わせ対応を自動化するデメリット
問い合わせ対応の自動化は、多くのメリットをもたらす一方で、いくつかのデメリットも存在します。導入を検討される際には、メリットだけでなく、デメリットについても十分に理解した上で、慎重に判断することが重要です。以下で詳しく解説します。
コストや手間がかかる
問い合わせを自動化するためには、専用のツールを導入したり、自社でシステムを開発したりといった方法が考えられます。しかし、いずれの方法を選択する場合であってもコストと手間がかかります。
コスト面においては、ツールの購入費用や開発費用、導入後の運用費用などが発生します。特に、大規模なシステムを構築する場合には、初期投資額が膨大になるでしょう。一方、導入にはツールの選定やカスタマイズ、システムの開発など、さまざまな作業が必要となり、人的なリソースが大きく消費されます。
問い合わせ自動化を実現するためには、企業はコストと手間を投入しなければならないという覚悟が必要なのです。
まちがった使い方をするとデメリットになる
問い合わせ対応の自動化ツールの効果的な活用には工夫が不可欠です。例えば、問い合わせ内容に合わせたQ&Aをシナリオ化し、ツールで対応できない部分については人が対応するなど、適切な運用設計を行い、システム導入後も、定期的な見直しや改善が重要です。
万が一、適切な運用ができない場合、問い合わせ対応の時間が逆に増え、かえって非効率になる可能性も考えられます。そのため、導入前に十分な検討を行い、必要に応じてサポート体制が充実した企業の支援を受けることをおすすめします。
対応が無機質になりやすい
チャットボットや自動音声応答システムは、自動化による効率化が期待できる一方で、利用者にとっては無機質な対応や複雑な操作に不満を感じることがあります。チャットボットは、人間らしい自然な会話が期待される一方で、機械的な返答にがっかりしてしまうケースも少なくありません。
一方、自動音声応答システムに関しても、メニュー選択を何度も繰り返さなければ目的の案内にたどり着けないなど、利用者を煩わせるような設定になっていると、サービスに対する満足度が低下する可能性があるでしょう。問い合わせ対応の自動化は、利用者の視点から見た利便性や満足度を考慮することが重要です。
問い合わせ対応を自動化する具体的な方法
ここからは、問い合わせを自動化する具体的な方法をいくつかご紹介します。自社の課題に最適な方法を見つけることで、より大きなメリットを得られるはずです。
チャットボットを導入する
チャットボットは、人間が行っていた問い合わせ対応業務を自動化し、業務効率化を大幅に図ることが可能です。特に、社内外から頻繁に寄せられる「よくある質問」や定型的な問い合わせは、チャットボットが的確かつ迅速に回答することで、担当者の負担を軽減し、ストレスを軽減します。
さらに、チャットボットをWebサイトに導入することで、訪問者が気軽に質問できる環境を作り出し、より多くの顧客との接点を生み出すことができます。チャットボットは、24時間365日稼働するため、担当者が対応できない時間帯の問い合わせにも対応でき、顧客満足度の向上にもつながります。
画像や動画も表示させることができるため、年末調整の手続きなど、文章だけでは理解が難しい内容も視覚的な情報を活用して分かりやすく説明することができるでしょう。企業の業務プロセスを革新し、顧客との関係性を深めるために、積極的に活用していくべきでしょう。
チャットボットの仕組みについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
アウトソーシングする
アウトソーシングは、自社の業務の一部を外部企業に委託する経営手法で、自社では対応が難しい業務を効率的に処理してもらうことで、コスト削減や業務効率化を実現します。従来、自社内で行っていた業務を外部に委託することで、人件費や設備投資などの固定費を削減することができます。また、外部企業は、特定の業務に特化した専門知識やノウハウを持っているため、より高品質なサービスを提供できる可能性があるでしょう。
特に、顧客対応など柔軟な対応が求められる業務は、人間の判断力が不可欠です。アウトソーシングにより、これらの業務を外部の専門企業に委託することで、顧客満足度の向上にもつながることが期待できます。
RPAを導入する
RPAはRobotic Process Automationの略で、同じ作業を何度も繰り返す業務を自動化するためのツールです。定型的な作業を機械に任せることで、人間のオペレーターが関わらなければならない業務を減らし、効率化を図ることができます。
また、複数のアプリケーションを連携させ、自動化の幅を広げることも可能です。導入前には十分なテスト期間を設ける必要がありますが、一度システムが安定すれば、ユーザーからの問い合わせ対応にかかる負担を軽減できるでしょう。
音声応答・認識ツールを使用する
コールセンターにおける業務自動化は、音声認識と音声応答という技術によって大きく進展しています。
自動音声応答システム | よくある質問への回答やメニュー選択を音声で案内する |
音声認識ツール | 通話内容をリアルタイムでテキスト化し、オペレーターが会話の内容をより深く理解する |
自動音声応答システムは初歩的な問い合わせに対応し、オペレーターの負担を軽減する一方、音声認識ツールは、オペレーターを直接サポートし、後から検索したり、分析したりすることもできるため、情報収集や品質管理にも役立ちます。これらは、完全な自動化を実現するものではありませんが、音声認識と自動音声応答を組み合わせることで、より高度な顧客対応を実現し、顧客満足度の向上に繋げることができます。
AI音声応答サービスについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
問い合わせ対応を自動化する際の注意点
問い合わせ対応の自動化は、業務効率化や顧客満足度向上に繋がる魅力的な取り組みですが、注意すべき点も存在します。以下で詳しく解説します。
すべての問い合わせを代替させることはできない
チャットボットは、問い合わせ対応の自動化を大きく進める上で、欠かせない存在と言えるでしょう。しかし、すべての問い合わせをチャットボットに任せられるわけではありません。未登録の質問や複雑な内容は、担当者が対応する必要があります。AIを活用したチャットボットは、学習機能により高度な対応が可能になり、自動化の幅を広げていますが、現状では、すべての問い合わせを完全に自動化することは難しいと認識しておきましょう。
チャットボットを導入する際は、万が一、適切な回答ができなかった場合に備えて、適切な対策を講じておくことが重要です。例えば、チャットボットが対応できないと判断された場合は、人間による対応に切り替えるという方法が考えられます。チャットや電話など、適切な手段で人間が対応を引き継ぐシステムを構築しておくことで、ユーザーへの円滑なサポートが可能になり、満足度向上にもつながると考えられます。
使いやすさを考慮してツールを選ぶ
新しいツールを導入する際は、社員が快適に利用できるかどうかが最も重要です。使い方が複雑で探している情報が見つかりにくいツールは、かえって社内問い合わせが増えてしまうでしょう。社員の視点に立って、直感的に操作でき、必要な情報にスムーズにアクセスできるツールを選ぶことが、効率化への近道です。
データを基にメンテナンスする必要がある
チャットボットを運用する上で、問い合わせ内容やユーザーに関するデータを収集し、分析することは非常に重要です。これらのデータに基づいて新たなQ&Aを学習することで、チャットボットの回答精度は徐々に高まり、ユーザーの満足度向上に繋がるためです。
特に日本語は、同じ意味を表す言葉でも様々な表現が存在するため、表記揺れが生じやすいという特徴があるため、導入後も継続的にデータを分析し、必要なメンテナンスを行うことが不可欠です。
使いこなせるように社員教育をする
企業では問い合わせ対応の効率化を目指し、様々なツールやシステムを導入するケースが増えていますが、せっかく導入したツールが社員に使いこなされなければ、その効果は半減してしまいます。特に、システムが複雑で操作が難しい場合、社員は敬遠しがちになり、せっかくのツールが活用されないままという事態も起こりえるでしょう。
このような問題を解決し、問い合わせ対応の自動化を成功させるためには、以下のセミナーで社員のスキルアップを行うことをおすすめします。
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ProSkilllのAIチャットボット入門セミナーは、AIの知識がなくても、チャットボットの基礎から応用までを1日で習得できる人気のセミナーです。初心者にも分かりやすいような丁寧な解説と、ハンズオン形式の実習でスムーズに学習を進めることができます。
受講後はすぐにチャットボットを業務で活用できるようになるのが大きな特徴です。
問い合わせ対応の自動化は業務効率化につながる
今回は、問い合わせ対応を自動化するメリットやデメリット、自動化の具体的な方法、その際の注意点を解説しました。近年、多くの企業が導入しているチャットボットなどで顧客からの問い合わせ対応を自動化することで、人件費の削減や顧客満足度の向上に繋がることが期待できます。しかし、全ての問い合わせに対応できるわけではなく、有人対応との連携が不可欠です。
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また、社員研修用に合わせたセミナーの日程や内容のカスタマイズも可能です。業務効率化のためのチャットボットの導入を検討中の企業様は、ぜひご相談ください。