ビジネスや日常生活において、音声からテキストへの変換がますます重要になっています。
例えば、会議やインタビューの録音をテキストに起こすことで、情報を整理しやすくし、検索や分析がしやすくなります。また、音声コンテンツをテキストに変換することで、さまざまな言語でのコミュニケーションや情報の共有が容易になります。
こうした需要に応え、AI(人工知能)技術が音声認識とテキスト変換の分野で急速に発展しています。AIを活用した文字起こしツールは、これまでの手作業に比べて迅速かつ効率的に音声をテキストに変換できるため、多くの業界で採用されています。
この記事では、文字起こしツールとは何か、その背後にあるAI技術、そして実際の音声認識AIサービスについて掘り下げていきます。さらに、異なる目的に応じて選択できるAI文字起こしツールの利用法についても詳しく説明します。
文字起こしツールはどのようなものか
文字起こしツールは、音声データを自動的にテキストに変換するソフトウェアやサービスのことを指します。最近ではこの文字起こしツールにAI技術が活用され、顧客との商談や社内の会議中の音声をリアルタイムで自動文字起こしをしてくれるものが提供されています。
これらのツールは、面倒な操作などもないものが多く、日常生活やビジネスのさまざまな場面で利用され、音声からテキストへの変換作業を効率化することができます。
AI文字起こしツールの特徴と機能
AI文字起こしツールの主要な特徴と機能には、
- 音声認識
- 多言語対応
- テキストのカスタマイズ
- キーワード検出
などがあります。AI文字起こしツールは、音声認識機能を搭載しており、会話など録音された音声をテキスト(文字)に変換します。この機能は、音声認識エンジンによって処理されています。音声のテキスト変換は、ほぼリアルタイムで行うことが可能であり、会議やライブイベントなどでのリアルタイムなテキスト表示に役立ちます。また、オフラインでも使用できます。
さらに、 多くの文字起こしツールはさまざまな言語に対応しており、翻訳なども同時に行えるため、国際的なコミュニケーションを支援することができます。出力される文章のフォーマットをカスタマイズできるツールもあります。
そして、変換したテキストデータから特定のキーワードやトピックを自動的に検出し、ハイライト表示する機能を持っているツールもあります。
AI文字起こしツールは、医療記録の作成、会議の議事録作成、インタビューの記録、教育コンテンツの生成、法的文書の作成など、さまざまな分野で活用できます。
AI文字起こしツールの種類
AI文字起こしツールは、さまざまなタイプがあり、色々なプラットフォームで利用可能です。
一般的なAI文字起こしツールには次のような種類があります。
AI文字起こしツールの種類①デバイス上で動作するアプリ
主にスマートフォンやタブレット向けのアプリケーションが提供されています。
これらのアプリは、各種のデバイス上で音声をテキストに変換することができます。
スマートフォンなどには録音機能がはじめから搭載されているので、リアルタイムな文字起こしも、過去に録音した文字起こしも気軽に行えます。
実際の用途としては、会議やインタビューの録音を直接スマートフォンに取り込み、その場で文字起こしを行うといった使い方が考えられます。
AI文字起こしツールの種類②クラウド型のツール
クラウドベースのAI文字起こしツールは、オンラインで利用することができます。
端末にデータを保存しておく必要がないため、大量の音声ファイルを処理する際に役立ちます。ユーザーは音声ファイルをクラウドにアップロードし、リモートサーバー上で変換を実行します。
代表的なものとしては、Google Drive にアップロードした音声をGoogleドキュメントで文字起こしする、といった使い方でしょう。
AI文字起こしツールの種類③Web会議との連携可能なツール
一部のAI文字起こしツールは、Web会議のプラットフォームと連携できます。
Web会議では参加者の通信環境や会話のタイミングなどのずれによってタイムラグなどが発生します。そのため、会議の内容を聞き逃してしまうことも起こりえます。
AI文字起こしツールをZoomやMicrosoft Teamsなどの会議ツールと連携させ、録音した会議の音声をテキストに変換して、要約すれば議事録をわざわざ作成する手間が省けます。
AI文字起こしツールの種類④専門用途向けツール
特定の産業や分野向けに設計されたAI文字起こしツールもあります。
医療分野向けのツールは、医師や看護師が医療記録を作成するのに役立ちます。
また、法律事務所向けのツールは、法的文書を効率的に作成するのに適しています。
AI文字起こしツールの種類⑤オープンソースツール
オープンソースのAI文字起こしツールも存在し、研究者や開発者がこれをカスタマイズして使用できます。オープンソースのツールはコミュニティによって維持され、無料で利用できる場合もあります。
デバイス上で使いたい場合、クラウドで大規模な処理を行いたい場合、または特定の分野向けの専門的なツールが必要な場合など、さまざまなニーズに合わせて選択することができます。
OpenAI製文字起こしAI「Whisper」が代表例です。
AI文字起こしツールに活用されているAI技術
AI文字起こしツールは、音声データをテキストに変換するために、高度なAI技術を活用しています。それが音声認識技術です。
音声認識(ASR:Automatic Speech Recognition)
音声認識技術は、人間の声などの音声データをテキストに変換するために使用される技術です。
音声認識技術は、音声信号をディープラーニングなどによって解析し、音声の発話内容をテキストに変換します。特にリカレントニューラルネットワーク(RNN)やトランスフォーマーベースのモデルが一般的に使用されています。音声のアクセントや言語の違いに対応するため、大規模なトレーニングデータと語彙知識を組み合わせられます。
自然言語処理(NLP)
音声も文字に変換されたデータであれば自然言語です。
自然言語を解析する技術が自然言語処理(NLP)です。
自然言語処理では、テキストのトーン分析、文法の修正、キーワード抽出などを行います。
NLPのモデルは、文章の意味や文脈を理解し、テキストをより読みやすい形式に変換するのに役立ちます。
ディープラーニング
ディープラーニングの技術は、音声認識モデルやNLPモデルのトレーニングに不可欠です。
ディープニューラルネットワーク(DNN)によって、多くの音声信号データを学習するのに必要です。大量のデータを使った、大規模なニューラルネットワークを訓練することで非常に精度の高い音声認識モデルが構築できます。
音声認識において、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)とリカレントニューラルネットワーク(RNN)が一般的に使用され、トランスフォーマーモデルも急速に普及しています。
大規模なトレーニングデータ
AIモデルのトレーニングには、大量の音声データと、それに対応するテキストデータが必要です。これらのデータは、多くの異なる話者、アクセント、および言語から収集されます。
大規模なデータセットを使用することで、AIモデルは多様な音声パターンと言語の変化に適応できるようになります。ChatGPTに用いられてる大規模言語モデル(LLM)であるGPT4は、数千億以上のパラメータを持つ非常に複雑なAIモデルです。
目的別AI文字起こしツールの活用法
AI文字起こしツールは、さまざまな業務や目的に活用でき、効率的なデータ処理と情報整理をサポートします。
- 会議の議事録作成
- 翻訳
- インタビューの要約
- 学習材料の作成
AI文字起こしツール活用法①会議の議事録作成
WEB会議やビデオカンファレンスの録音を文字に変換することで、会議の議事録を迅速に作成できます。これにより、参加者が会議の内容を振り返りやすくなり、重要な議題や行動項目を見落とすことがありません。
また、会議の進行中にリアルタイムで文字起こしを行うツールも存在し、リアルタイムの議事録作成が可能です。
AI文字起こしツール活用法②翻訳
音声データをテキストに変換した後、AI翻訳ツールを利用して、異なる言語に翻訳することができます。これは、海外の参加者の多い国際会議や多国籍な企業の社内会議などで同時翻訳しながら会議を進めることもできます。
国際ビジネスや研究プロジェクトにおいて、多言語対応が必要な場面で有用です。
AI文字起こしツール活用法③インタビューの要約
インタビューの音声記録をテキストに変換し、要約することで、重要な情報を抽出しやすくなります。記者、研究者、または法的な文脈でインタビューを行う場合、時間を節約しつつ要点を把握するのに役立ちます。
AI文字起こしツール活用法④学習材料の作成
講義やセミナーの音声をテキストに変換し、学習材料として提供することができます。
学生や参加者は、授業やイベントの内容をテキスト形式で復習し、理解を深めることができます。ただし、録音が許可された場所で行わなければならないことに注意が必要です。
AI文字起こしツール5選
ここからは、学習・ビジネスに活用できるAI文字起こしツールをご紹介します。
AI文字起こしツール①Googleドキュメント/Google
出典:google
料金 | 無料 |
特徴 |
Googleドキュメントでは、「Googleドキュメントの音声入力機能を活用して文字起こしする」「録音した音声データをGoogleDrive にアップロードして文字起こしする」「画像ファイルおよびPDFファイルから文字起こしをする」という方法で利用することができます。 |
AI文字起こしツール②Notta
出典:notta
料金 |
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特徴 | 様々な形式かつ多言語対応のAI文字起こしツールです。 動画や音声データはもちろんのこと、音声をリアルタイムで文字起こしすることが可能です。 104言語の文字起こしに対応しており、出力結果は42言語への翻訳が可能な高性能翻訳AIです。 Web版、アプリ版それぞれに対応しています。 |
AI文字起こしツール③AI GIJIROKU
出典:AI gijiroku
料金 |
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特徴 | AI GIJIROKU(AI議事録)では業種別の専門音声認識AIサービスである、弁護士向けの法律音声認識エンジン「弁護士GIJIROKU」を提供しています。 主な機能には、AI要約機能、清書機能、内部音声収録機能などがあり、ZOOM連携をするだけで発言を字幕表示することができます。 |
AI文字起こしツール④AmiVoice(アミボイス)/ 株式会社アドバンスト・メディア
料金 |
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特徴 |
株式会社アドバンスト・メディアでは、医療機関での音声認識アプリの利用は、専門用語が飛び交う環境であり、文字起こしが難しい分野ですが、AmiVoice(アミボイス)は業界の専門用語を学習することで、会議の議事録作成や電子カルテへの入力を可能にしています。 |
AI文字起こしツール⑤COTOHA Meeting Assist
出典:NTTコミュニケーション
料金 |
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特徴 | COTOHA Meeting Assistは、翻訳機能を持つAI文字起こしツールです。 日本語・英語・中国語など、約10種類の言語に対応しています。 例えば、会議中に「9月30日に資料を作成する」という会話をした場合、この音声を自動抽出し、タスクとしてTo Do リストにラベル付けする機能も搭載しています。 また、文字起こしをしたファイルは企業ごとにクラウド上で管理されるため、利便性が高く、セキュリティ面でも優秀です。 |
まとめ
AI文字起こしツールは、現代のビジネス環境で重要な役割を果たしています。
効率的な情報整理やコミュニケーションを支え、多くの業界で利用されています。
この記事では、文字起こしツールの基本や種類、AI技術の活用方法、選び方について詳しく紹介しました。AI文字起こしツールは、音声データをテキストに変換し、さまざまな目的に活用できます。このような、機械学習や音声認識技術を活用した高度な言語モデルは、会議録作成、翻訳、インタビュー要約など、仕事の効率化に大きく貢献します。
適切なツールを選ぶ際には、ニーズに合った機能、コスト、セキュリティを考慮しましょう。
また、使用時の注意点としては、信頼性の高いプロバイダーを選び、データのセキュリティに気を配りましょう。AI文字起こしツールは、ビジネスプロセスの効率向上と情報アクセスの容易化に寄与する優れたツールです。
あなたの業務やプロジェクトに適したツールを選び、効果的に活用しましょう。