AIを活用した電子看板を手掛けるニューラルグループは、面談の映像と音声をAIで解析し、面談内容を可視化できるサービスを始めました。AI面談では面談した人が話した内容や笑顔の数などを把握し、結果に基づきフィードバックを生成します。
社員同士のコミュニケーション不足が課題の企業に売り込む予定のようです。そこで今回は、AI面談の魅力や判断基準・特徴やAI面談を成功させるコツを解説します。
AI面談とは
AI面談とは企業が面談を行う際、AIが担当者となり対象者と面談をしてもらうことです。デバイスに提示された質問に対象者が回答すると、AIが回答内容・声・表情などのデータを分析し適性を評価します。
自社の社員に対して面談を行うのはもちろんのこと、採用面接に活用することも可能です。
スマートフォンやパソコンからオンラインで実施できるため、時間や時間を選ぶことなく面談を受けられます。AI面談には現在録画型と対話型の2つの形式がありますが、対話型はAIが直接面談を実施するため、面談対象者は事前にAI面談の対策を行わないと戸惑い、上手く回答できない場合も考えられます。
AI面談の判断基準
AI面談では、面談対象者からのさまざまな情報を複数のAIアルゴリズムが判定します。例えば、質問への回答の長さや声の明るさ・話す速度などを分析し、熱意や積極性・コミュニケーション能力などを評価します。
また、まばたきアイコンタクト・表情から言語情報以外の特徴を抽出して、隠れた本音も探ることが可能です。これらの要素は、AI面談のシステムにより独自に設定されている場合もあります。
AI面談の特徴
AI面談は、従来の面談とは異なる斬新な面談方法です。しかし、AI面談の特徴を把握することで、AI面談を攻略することができる可能性もあります。
以下で、AI面談の特徴を詳しく解説します。
過去の経験を問う質問が多い
従来の面談では、担当者の主観に基づいた評価が行われていましたが、AI面談では、過去の経験という客観的な指標に基づいて評価されることが多い傾向です。そのため、より自分への理解を深めることが求められるでしょう。
AI面談を受ける際は、自己分析をしっかり行うことが重要です。
1つの質問に対する深掘りが多い
AI面談では1つの質問に対する深掘りが多いのも特徴です。AIはあいまいな表現をすると的確な判断ができないため、「具体的に教えてください」など具体的な回答を求められる可能性があります。
そのため、AIからの質問の意図を正確に理解し、論理的に筋道を立てた説明や具体的なエピソードを説明する必要があります。また、ご自分の過去の経験について様々な角度から質問への回答を事前に準備しておくと安心です。
AI面談を導入する魅力
AI面談の導入は、面談対象者だけでなく企業側にも様々なメリットがあります。以下では、面談対象者と企業側の両面それぞれのAI面談を導入する魅力を具体的に解説します。
24時間365日受けられる【面談対象者】
AI面談は、従来の面談に比べ時間的・空間的な制約を撤廃し、24時間365日どこからでも面談対象者がアクセス可能な面談環境を実現します。面談対象者にとって、時間や場所の制約は大きな課題です。
面談日時の調整に困難をきたしたり、面談地への移動による時間的・金銭的負担がネックとなったりするケースも少なくないでしょう。AI面談はこのような様々な課題を解決し、地方在住者や海外在住者など多様な人材の活躍機会の創出にも貢献します。
面談対象者は自身のスケジュールに合わせ、自宅やカフェなどのリラックスできる環境で面談することができます。
公平な評価をしてもらえる【面談対象者】
従来の面談では担当者の主観や経験・印象などに左右され、公平な評価が難しいという課題もありました。しかし、AI面談では事前に設定した基準に基づいた評価が行われるため、より一貫性のある評価が可能となります。
AI面談はすべての面談対象者に対して同じ基準で面談を実施することができるため、公平な評価が期待できるでしょう。
緊張を軽減できる【面談対象者】
従来の面談は、緊張感を覚える方も多い傾向です。しかし、AI面談では人間の担当者との対面がないという特徴があるため、面談対象者は緊張を軽減しやすいというメリットがあります。
また、AI面談は自宅やカフェなどご自分のリラックスできる場所で行うことができ、緊張を軽減することができるでしょう。さらに、自分のペースで話すことができるため、落ち着いて話すことを心がけるのも大切です。
面談時間が短縮できる【企業側】
企業側はAI面談を導入することで、面談時間を大幅に短縮することが可能です。従来の面談では対象者と企業側がスケジュールを調整して合わせる必要がありました。
しかし、AI面談であれば面談対象者が自身の都合に合わせて面談を受けることができます。そのため、企業の人事担当者はスケジュールの調整に時間を費やす必要がありません。
面談評価の客観性が向上できる【企業側】
先述したように、AI面談はすべての面談対象者に対して同じ基準で面談を実施することができます。そのため、担当者の主観や経験に左右されて評価が偏ってしまうことがありません。また、AI面談では、面談対象者の音声・動画だけでなく、表情・声のトーンなども分析可能です。
これらは人間による観察では得られない客観的な情報であるため、より客観的な評価を行うことができるでしょう。
面談へのコストを削減できる【企業側】
AI面談は従来の面談に比べ、以下のようなコストを削減することが可能です。
- 面談の準備や評価などにかかる時間
- 面談のスケジュール調整や結果の記録などの事務作業
AI面談は上記のようなコストを削減できるだけでなく、面談時間の短縮や業務効率化などの様々なメリットをもたらします。
AI面談の企業導入事例
AI面談は面談対象者のポテンシャルを効率的かつ客観的に評価するため、すでにいくつかの企業で導入されています。以下では、AI面談を実際に導入している企業の事例を紹介します。
従業員の昇格試験
株式会社松屋フーズホールディングスは、店長昇格試験にAI面談を導入しました。年2回東京と大阪で筆記試験と面談に合格した方のみ店長に昇格する仕組みです。
従来の面談では、各部門の本部長らを集め、数部屋の会場で行っていました。しかし、評価基準が異なり統一感が得にくいという課題がありました。
AI面談を導入したことで、評価を可視化でき評価の偏りや曖昧さがないといった結果になったようです。
AIと対面で面接を役割分担
ロジスティックスオペレーションサービス株式会社では、面接をAIと対面で役割分担しました。導入当初は、アルバイトを採用する際の利用を想定していたようですが、使い方や仕組みを理解していくうち、新卒採用をサポートする結論になったようです。
現在は、書類選考後の初期フェーズにAIを活用しており、対象者の発言を可視化した評価レポートや特徴や傾向を確認しています。その後の対人面接の際に、評価レポートで気になった点を確認しています。
面談対象者必見!AI面談を成功させるためのコツ
AI面談による質問は従来の面談とは異なるため、論理的思考力や経験を具体的に伝える能力が大切です。しかし、コツを掴めば決して難しいものではありません。
以下では、面談対象者がAI面談を成功させるためのコツをご紹介します。
明るくハキハキと話すようにする
AI面談では、言語情報以外の音声や表情も評価の対象です。明るくハキハキと話すことは、以下のような多くのメリットがあります。
- 熱意が伝わりやすい
- AIが理解しやすい
- 自信を持っていると判断されやすい
話す際は聞き取りやすい声のトーンで抑揚を意識すると、メリハリのある声になりAIが理解しやすくなるでしょう。また、早すぎず、遅すぎない適度な速さで話すことも大切です。
アイコンタクトを意識する
AI面談では人間の担当者が存在しないため、画面越しにアイコンタクトを取る必要があります。ポイントは、5秒~10秒に1回程度、時折笑顔を交えた自然なアイコンタクトを意識することです。
また、アイコンタクトと同時に話の内容に合わせたジェスチャーを活用することで、より説得力のある表現が可能になるでしょう。必ずジェスチャーをしなくてはいけないわけではありませんが、ジェスチャーにより言葉が出やすい場合や感情が相手に伝わりやすい場合は、使うのも一つの手段です。
結論から回答する
質問に回答する際は、まず簡潔に結論を述べてください。回答を長々と説明してしまうとAIが理解しにくくなる可能性があります。
結論から先に伝えることで、AIがより回答を理解しやすくなるでしょう。また、結論から先に話すと論理的な思考力やコミュニケーション能力をアピールすることも可能です。
好印象にもつながるため、ぜひ意識してみてください。
エピソードや数字を盛り込み具体的に伝える
AI面談では、質問の背景にある意図を把握することが重要です。AIからの質問をよく聞き、AIが何を知りたいのか何を評価しようとしているのかを分析しましょう。
そのためには、いつ・どこで・何をしたのか・結果的にどうなったのかなどのエピソードを具体的に話すことが大切です。要点を絞って分かりやすく簡潔に伝えるようにして下さい。
また、過去の成果や経験をAIに示すためには、数字を活用することも大切です。例えば、ただ「努力した」ではなく、「売上を〇%向上させた」などの具体的な数値を示すとより説得力のある回答となりおすすめです。
STAR法を意識しわかりやすく伝える
一般的に面談などでは強い印象を残す「STAR法」が有効とされています。STAR法とは、以下の頭文字を取ったテクニックで、それぞれの要素を具体的に説明することが可能です。
Situation | 状況 |
Task | 課題 |
Action | 行動 |
Result | 結果 |
まず、いつ・どこで・どのような状況だったのかを具体的に伝えてください。次にその状況の中で直面した解決すべき問題を明確にします。
問題に対してどのような方法で、どのような努力をしたのかを具体的に説明してください。最後に、あなたの行動により結果的にどのような結果になったのかを明確に示しましょう。
STAR法を意識すると過去の経験を効果的にアピールでき、強みや能力も明確に伝えることができます。
過去の経験を深掘りする
先述したように、AI面談は1つの質問に対する深掘りが多いことが一つの特徴です。そのため、ご自身の過去の経験を事前に深掘りしておくことが大切になります。
ロジックツリーを活用するとご自分の過去の経験を一つずつ分析することができるでしょう。ロジックツリーとは、物事の分析や意思決定をサポートする思考フレームワークです。名前の通り、木の枝分かれ構造を用いて、論理的に物事を整理することができます。
様々なアプリも出ているため、ぜひ活用してみてください。
アプリの活用でAI面談に慣れる
AI面談は、従来の人間ではなくAIが質問を行うため、環境に慣れるまでに時間がかかることもあるでしょう。そのため、AI面談を行う前には事前にアプリを活用し、AI面談に慣れておくと安心です。
AI面談アプリでは質問をランダムに出題するため、本番のAI面談に近い形で練習ができます。ただし、本番のAI面談では表情なども評価されることがあるため、アプリで面談対策をする際は、質問への回答以外にも気を配ることが大切です。
AI面談は今後も重要な役割が期待される
今回はAI面談の魅力や判断基準・特徴やAI面談を成功させるコツを解説しました。AI面談を成功させるには、AIの特性を理解しつつ今回ご紹介したようなコツを実践することが大切です。AI面談は今後もさらに進化していくと予想されます。
AIの学習データやアルゴリズムの改善で、評価の精度が向上し、より客観的な評価が可能になると考えられます。また、面談対象者の属性に合わせた様々なAI面談が開発される可能性もあるでしょう。
AI面談は近年ますます注目を集めている技術の一つであり、企業と面談対象者にとって、今後も重要な役割を果たしていくと考えられます。AI技術のさらなる発展と適切な運用の確立が求められるでしょう。