AWSの需要が急速に高まる中、クラウド技術のスペシャリストとして「AWSエンジニア」という職種が注目を集めています。企業のDXが進むにつれ、オンプレミスからクラウド環境への移行が加速し、AWSの専門知識を持つエンジニアの重要性はますます高まっています。
しかし、「AWSエンジニアとは具体的にどんな仕事をするのか?」「どんなスキルや資格が必要なのか?」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
本記事では、AWSエンジニアの仕事内容や求められるスキル、必要な資格、さらにはキャリアパスについて解説します。未経験からAWSエンジニアを目指したい方や、転職を検討している方に役立つ情報をお届けします。
AWSエンジニアとは?
AWSエンジニアとは? クラウドサービス最大手のAWS(Amazon Web Services)を活用して、企業のシステム基盤を支えるのがAWSエンジニアです。その役割は多岐にわたりますが、具体的にどのようなものなのでしょうか?
AWSとは?
AWSとはAmazon Web Servicesの略で、Amazonが提供するクラウドコンピューティングサービスの総称です。2006年にサービスを開始して以来、現在では200以上のサービスを提供し、世界シェアの約33%を占める最大手のクラウドプロバイダーとなっています。
EC2(仮想サーバー)、S3(ストレージ)、RDS(データベース)などの基本サービスから、機械学習、IoT、ブロックチェーンなど最先端技術まで幅広くカバーしています。A
WSの特徴は、必要な時に必要なリソースだけを利用できる柔軟性と、世界中に展開されたデータセンターによる高い可用性にあります。多くの企業がコスト削減や事業の迅速な展開のためにAWSを採用しています。
なお、AWSについては以下の記事でも解説しているので、ぜひ参考にしてください。
AWSエンジニアの役割
AWSエンジニアの役割は、企業のニーズに合わせてAWSのサービスを最適に組み合わせ、効率的なクラウド環境を構築・運用することです。具体的には、インフラストラクチャの設計・構築から、パフォーマンスチューニング、セキュリティ対策、コスト最適化まで幅広い業務を担当します。
また、オンプレミス環境からクラウドへの移行プロジェクトをリードする役割も担います。最近では、IaC(Infrastructure as Code)の普及により、TerraformやCloudFormationなどのツールを使ってインフラをコード化する能力も求められています。
AWSエンジニアは単なる技術者ではなく、ビジネス目標に適したクラウド戦略を提案できるコンサルタント的な側面も持っているのです。
AWSエンジニアの仕事内容
AWSエンジニアの仕事は、AWS環境の設計から構築、運用・保守までさまざまです。以下で具体的にどのような業務を担当するのか見ていきましょう。
- AWS環境の設計
- AWS環境の構築
- AWS環境の運用と保守
①AWS環境の設計
エンジニアが行うAWS環境の設計では、ビジネス要件と技術要件を把握し、最適なAWSサービスの組み合わせを検討します。コンピューティングリソース(EC2、Lambda)の選定や、ネットワーク構成(VPC、サブネット)の設計、データベース(RDS、DynamoDB)の構成を行います。
可用性を高めるためのマルチAZ構成や、災害対策のためのマルチリージョン構成も考慮します。最近では、Well-Architectedフレームワークに沿った設計が標準となっており、運用性、セキュリティ、信頼性、パフォーマンス、コスト最適化を重視しています。
②AWS環境の構築
AWS環境の設計後は実際に、環境構築をします。最近では、エンジニアによる手動作業ではなくIaC(Infrastructure as Code)の手法が主流で、CloudFormation、AWS CDK、Terraformなどのツールを使用します。CI/CDパイプラインと連携させることで、インフラの変更も自動化されています。
構築作業ではネットワーク基盤の作成から始まり、EC2インスタンスやコンテナサービスのデプロイ、データベースのセットアップ、IAMポリシーによるアクセス権限の設定など多岐にわたる作業を行います。
③AWS環境の運用と保守
AWS環境の構築後は、安定した運用と継続的な改善が重要です。エンジニアはCloudWatch、AWS Config、Trusted Advisorなどで監視を行い、異常発生時に自動対応できる仕組みを整えます。
セキュリティ面ではGuardDutyやSecurityHubを使った脅威検知、コスト管理ではCost Explorerや予算アラートを活用します。また、エンジニアはパフォーマンス向上のための定期的なチューニングや新サービスを取り入れたアーキテクチャの刷新も行います。
AWSエンジニアに求められる知識
AWSエンジニアとして活躍するためには、幅広い知識が求められます。ここでは、AWSエンジニアに共通して求められる主な知識を紹介します。
- AWSサービスへの深い理解
- インフラ構築全般の知識
- セキュリティ対策の知識
- プログラミングスキル
①AWSサービスへの深い理解
AWSエンジニアの基本として、主要サービスの特性と使い分けを理解することが不可欠です。コンピューティング(EC2、Lambda)、ストレージ(S3、EBS)、データベース(RDS、DynamoDB)などの違いや適用シーンを把握する必要があります。
また重要なのが、CloudFrontなどのネットワークサービスやCloudFormationなどのインフラ自動化ツールへの理解です。専門特化型のサービスも増加しており、AI/MLサービス(SageMaker)やIoTサービスの知識も価値が高まっています。
②インフラ構築全般の知識
AWSのサービスを適切に活用するには、基礎的なインフラ技術の知識が欠かせません。ネットワーク(TCP/IP、ルーティング)、サーバー(Linux操作、リソース管理)、データベース(SQL、NoSQL)などの理解が必要です。
また、高可用性設計やディザスタリカバリ、負荷分散といったシステム設計の知識も重要です。近年ではコンテナ技術(Docker、Kubernetes)の理解も求められています。これらの基礎知識があってこそ、クラウドへの最適な移行戦略を立案できるのです。
③セキュリティ対策の知識
エンジニアにとって、クラウド環境のセキュリティ対策は最重要課題の一つです。AWSエンジニアには、IAMによるアクセス制御、セキュリティグループによる通信制御、KMSを用いた暗号化など、セキュリティサービスを適切に構成する知識が求められます。
脆弱性スキャンや侵入検知、ログ監視などの運用知識も重要です。ゼロトラストセキュリティが主流となり、Organizations、Control Tower活用能力も評価されています。コンプライアンス要件に対応した設計知識も業種によっては必須です。
④プログラミングスキル
AWSエンジニアにとって、プログラミングスキルは必須です。Infrastructure as Code(IaC)の考え方が浸透し、CloudFormationやTerraformを使ったインフラのコード化が標準となっています。
AWS CLIやSDKを使った自動化スクリプトの作成にも、Python、JavaScriptなどの知識が役立ちます。サーバーレスアーキテクチャの普及で、Lambdaを活用したイベント駆動型開発も重要です。CI/CDパイプライン構築においてはGitHubやJenkinsとの連携知識も求められています。
AWSエンジニアに役立つ資格
AWSエンジニアとしてのスキルを証明し、キャリアアップにつなげるために、AWS認定資格の取得は非常におすすめです。以下では、AWSエンジニアに特に役立つ資格を紹介します。
資格名 | 説明 |
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AWS認定ソリューションアーキテクト |
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AWS認定デベロッパー |
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AWS認定SysOpsアドミニストレーター |
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①AWS認定ソリューションアーキテクト
AWS認定ソリューションアーキテクト資格は、AWSエンジニアにとって人気の高い資格です。アソシエイトレベルでは、主要サービスを使った基本的なシステム設計の知識が問われます。VPC、EC2、S3、RDSなどの理解や、セキュリティ、高可用性を考慮した設計ができることが必要です。
プロフェッショナルレベルでは、複雑な要件に対応する高度な設計能力や、コスト最適化、マイグレーション戦略の策定能力が試されます。環境設計・構築を担当するエンジニアの基盤となる重要資格です。
②AWS認定デベロッパー
AWS認定デベロッパー資格は、サービスを活用したアプリケーション開発に焦点を当てた認定資格です。アソシエイトレベルでは、SDKやCLIを使ったプログラミング、Lambda、API Gateway、DynamoDBなどのサーバーレスサービスの活用、CI/CDパイプライン構築の知識が問われます。
クラウドネイティブ開発の潮流で価値が高まっています。DevOpsを実践する企業では、インフラと開発両方を理解するエンジニアとして重宝されます。CDKやServerless Frameworkの理解も深められる点がメリットです。
③AWS認定SysOpsアドミニストレーター
AWS認定SysOpsアドミニストレーター資格は、環境の運用管理に特化した認定資格です。アソシエイトレベルでは、デプロイと運用の自動化、監視とロギング、バックアップと災害対策、セキュリティ管理、コスト最適化などの実務スキルが評価されます。
CloudWatch、Systems Manager、CloudTrailなどへの理解が求められます。インフラのコード化が進んでいますが、障害対応や性能最適化などの運用スキルは不可欠です。
AWSエンジニアのキャリアパス
AWSエンジニアとしてのキャリアはさまざまで、専門分野に特化することで、より高度なスキルを身につけられます。ここからは、AWSエンジニアの代表的なキャリアパスを紹介します。
クラウドアーキテクト
クラウドアーキテクトは企業のビジネス要件を理解し、最適なAWS環境を設計する上級職です。コスト効率、パフォーマンス、セキュリティを考慮したアーキテクチャを構築します。
技術知識だけでなく、ビジネス課題の理解や予算管理のスキルも必要です。AWS認定ソリューションアーキテクトの資格保持者が多く、クラウド移行プロジェクトをリードします。将来的にCTOやテクニカルディレクターへのキャリアアップも可能です。
DevOpsエンジニア
DevOpsエンジニアは、開発と運用の橋渡し役として、AWSを活用したCI/CDパイプラインの構築・運用を担当します。CodePipeline、CodeBuildなどのサービスでアプリケーションデプロイを自動化し、CloudFormationやTerraformを使ったインフラのコード化も行います。
自動化とモニタリングに注力し、安定運用と迅速なサービス提供を両立させます。経験を積むことでSREなど新たな専門分野へのキャリア展開も可能です。
セキュリティエンジニア
クラウドセキュリティエンジニアは、AWS環境のセキュリティ対策を専門とします。IAM、GuardDuty、WAFなどを活用し、アクセス制御や脅威検知、コンプライアンス対応を担当します。クラウド特有のリスクに対処するため、AWSセキュリティサービスへの深い理解が必要です。
金融・医療などの厳格な業界で需要が高く、AWS認定セキュリティスペシャリティ取得で専門性をアピールできます。CISOへのキャリアパスも視野に入るでしょう。
データエンジニア
AWSのデータエンジニアは、大規模データの収集・処理・保存のためのパイプラインを構築します。S3、Kinesis、Glue、Redshiftなどを駆使してデータレイクやウェアハウスを設計し、EMRによる大規模処理やQuickSightでの可視化も担当します。
最近ではSageMakerを活用したML基盤構築も重要な業務として任されます。データ活用の重要性が高まる中、需要が増加しており、高収入が期待できる職種です。
フリーランス・独立
AWS専門知識を持つフリーランスの市場価値は高く、多くの企業がクラウド移行やアーキテクチャ設計のアドバイスを求めています。複数業界や様々な規模の企業と関わることで幅広い経験を積めます。
また、オンラインプラットフォームを通じて海外案件の獲得も実現可能です。営業力やコミュニケーション能力も必要ですが、高単価と柔軟な働き方を実現できるメリットがあります。
未経験からAWSエンジニアを目指す方法
AWSエンジニアは未経験からでも目指すことが可能ですが、計画的にスキルを習得し、実践経験を積むことが重要です。ここでは、未経験からAWSエンジニアになるための具体的なステップを紹介します。
- AWSの基礎知識を学ぶ
- クラウド関連の実践経験を積む
- AWS認定資格を取得する
- ポートフォリオを作成する
- 転職・案件獲得の戦略を立てる
①AWSの基礎知識を学ぶ
まずはAWSの基礎知識を学ぶことが重要です。AWS公式の無料学習プラットフォーム「AWS Skill Builder」や、オンライン学習サイトを活用して、クラウドコンピューティングの基本概念やAWSの主要サービスを理解しましょう。
特に、EC2(仮想サーバー)、S3(ストレージ)、RDS(データベース)などの基本的なサービスの仕組みを押さえることが重要です。
②クラウド関連の実践経験を積む
座学だけでなく、実際にAWS環境を操作しながら学ぶことで、理解が深まります。AWSの無料利用枠(AWS Free Tier)を活用し、自分でクラウド環境を構築するのがおすすめです。
たとえば、WordPressサイトをAWS上に構築する、データベースを設定するなど、実際の業務を想定した演習を行うと、実践的なスキルが身につきます。
③AWS認定資格を取得する
AWSエンジニアを目指すうえで、資格取得は大きな武器になります。未経験者には「AWS認定クラウドプラクティショナー」が最適で、基礎的なAWSの知識を証明できます。
その後、「AWS認定ソリューションアーキテクト – アソシエイト」などの実務レベルの資格を取得することで、就職や転職の際に有利になります。資格学習を通じて、AWSの具体的な活用方法も学ぶことができます。
なお、AWS認定資格については、以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
④ポートフォリオを作成する
未経験からの転職では、実務経験の代わりに「ポートフォリオ」が重要になります。自分でAWS環境を構築し、学習した内容や設定手順をまとめたブログやGitHubに公開することで、スキルを証明できます。
たとえば、AWS上にECサイトを構築し、インフラ設計のポイントや使用したサービスを解説するなど、具体的な成果物を示すことが大切です。
⑤転職・案件獲得の戦略を立てる
AWSエンジニアとしてのキャリアをスタートさせるためには、転職活動や案件獲得の戦略をしっかり立てることが重要です。
未経験者向けのクラウドエンジニア採用枠を探したり、クラウド関連の業務を行う企業にインフラエンジニアとして入社し、AWSの業務経験を積んだりするのも一つの方法です。
また、副業案件に挑戦して小規模なAWSプロジェクトに携わり、実績を積みながらスキルアップを図るのもよいでしょう。
AWSエンジニアを目指すにはセミナーへの参加がおすすめ
AWSエンジニアを目指すには「AWSの基礎知識・クラウド関連の実践経験・AWS認定資格取得」が重要になります。しかし、すべてを独学で学習するのは、非常に時間がかかります。
そこで、AWSエンジニアのプロが開催するセミナーへの参加がおすすめです。セミナーに参加すれば、体系的なカリキュラムを元に、プロの知見をその場で吸収できます。実務での事例も知ることができ、実際にAWSエンジニアになったときのイメージがつきやすくなるでしょう。
なお、Proskilllでは「AWSで始めるインフラ構築基礎セミナー」を開催しています。AWS初心者を対象に、2日間でインフラ構築の基礎から実践的なスキルまでを習得できる集中講座です。資格取得にも役立つので、ぜひご参加ください。
AWSエンジニアまとめ
AWSエンジニアは、クラウド技術の発展とともに今後も需要が高まる職種の一つです。未経験からAWSエンジニアを目指す場合は、基礎知識の学習から始め、実際にAWS環境を構築しながら実践的なスキルを身につけることが重要です。
さらに、AWS認定資格を取得し、ポートフォリオを作成することで、転職や案件獲得のチャンスを広げられます。これからAWSエンジニアを目指す方は、継続的な学習と実践を重ねることが成功への鍵となります。
