先日、スタートアップ企業のmignは建設業界に新たな可能性をもたらす生成AIを活用したサービスを発表しました。
たった1枚のインテリア画像をアップロードするだけで、室内を実際に内覧しているかのようなリアルな動画を自動生成できるため、誰でも簡単に短時間で高品質なプレゼンテーション動画の作成や商談で活用できるようになります。
AIは私たちの生活に様々な形で浸透しつつありますが、建設業界にもその波が押し寄せているのです。今回は、AIが建設業にもたらす8つのメリットや活用する際の効果的なポイントを解説します。
建設業で活用されるAIの技術とは
建築物の建設は設計から施工、維持管理まで、様々な企業が連携して行う大規模なプロジェクトであるため、従来は、建築家によるデザイン設計や建設会社による施工計画の立案、施設管理会社による長期的なメンテナンス計画などは、人手と経験に大きく依存していました。
しかし、AIの登場により、これらの業務は大きく変革を遂げようとしています。建設業で活用されるAIには以下のような技術があります。
BIM | 建築物に関する情報を3次元モデルとして統合管理するシステム |
CIM | インフラの設計に欠かせない情報システム |
IoT | 身の回りのあらゆるモノをインターネットに繋げ、情報をやり取りできるようにする |
ロボット | 人間には困難な作業条件下での施工や、危険性の高い作業を中心に、ロボットやドローンなどの技術が導入されている |
AI(人工知能)については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
建設業におけるAI活用事例
AIと建設の融合は、私たちの身近で様々な形で実現されています。建設業界において、AIは設計や施工、管理など、多岐にわたる分野で活用され、新たな可能性を拓いています。
以下で、建設業におけるAI活用事例を詳しく解説します。
BIMとAIの連携で施工管理を効率化
BIMで作成された精緻な3DモデルにAIの高度な分析能力を組み合わせることで、施工プロセス全体の最適化や問題の早期発見が実現可能です。
某大手建設会社では、BIMデータとAIを連携させることで、ロボットが建物の状況をリアルタイムに把握し、最適な判断に基づいて自律的に作業を行うことが可能になりました。
これにより、施工現場の生産性向上はもとより、作業員の安全確保という観点からも大きな進展が見られています。
AIがさまざまな異常を自動でチェック
プラント施設における配管の腐食や損傷などの異常の検出は、従来、作業員による目視で行われてきましたが、この方法は作業時間が長く、検出精度にも限界があるという課題を抱えていました。
某企業が開発したAI検出システムは、配管の錆こぶや板金の欠損、保温材の露出など、様々な異常を自動で検出し、高い精度で異常箇所を特定することが可能です。
このシステムの最大のメリットは、人間の主観に左右されずに、統一された基準で異常を判断できる点です。これにより、人による判断のばらつきを解消し、より客観的な評価が可能になります。
配管や構造物の維持管理においては、早期発見と迅速な対応が重要なため、AI検出システムの導入により、点検作業の効率化を図るとともに、より精度の高い診断を可能にすることで、維持管理の質を大幅に向上させます。
自立型ロボットで作業効率化
建設現場では、かつて人が操縦していた建機がAIを搭載した自立型ロボットへと進化しています。重機や掘削機、ブルドーザーなど、様々な種類の建機が、特定の作業を自動で行い、人間の作業を代替しているのです。
建設現場は室内環境とは異なり、環境条件が刻々と変化し、予期せぬ事態が発生しやすいため、ロボットには、人間の作業者のように状況に応じて柔軟に対応できる高度な自立性が求められます。
某企業ではAIロボットを導入することで、人間には不可能であった上向溶接を実現し、溶接の品質と性能を大幅に向上させることに成功しています。
これは、AIロボットが建設現場における新たな可能性を切り開いたと言えるでしょう。
AIを建設業で活用する8つのメリット
AIを建設業界で活用する代表的なメリットとして、以下のような点が挙げられます。
- 業務の効率化が図れる
- 最適な建設工程を設計できる
- 顧客の満足度を高める
- 建築物の品質が向上する
- 専門的な知識が共有できる
- 在庫の最適化やコスト管理ができる
- 潜在的なリスクを事前予測できる
- 効果的な経営戦略に繋がる
それぞれのメリットを具体的に見ていきましょう。
①業務の効率化が図れる
従来、建築家が長時間をかけて行っていた複雑な計算や多様なデザイン案の検討をAIが自動で行うことで、設計プロセスは飛躍的に効率化されます。
AIは設計者が提供したデザインラフや過去の成功事例、最新の建築トレンドなどの膨大なデータを分析し、最適な設計案を複数提案します。
そのため、設計者は多様な選択肢の中から、クライアントの要望に最も合致するデザインを迅速かつ正確に選ぶことが可能になり、設計者は、多様なデザイン案を基に独自のアイデアを付加したり、デザインを洗練させたりすることで、より革新的な建築物を生み出すことができるのです。
AIの導入は、設計プロセスにおける時間とコストの大幅な削減に繋がり、プロジェクト全体の効率性と品質向上に繋がるため、クライアントは、より短期間で、より高品質な建築物を手に入れることができるようになるのです。
②最適な建設工程を設計できる
AIは多様な条件を考慮し、最適な建設工程を設計することで、現場作業員の効率を最大限に引き出すことができます。
さらに、AIによる詳細なデータ分析とシミュレーションは、プロジェクトの各段階における時間とコストの削減に繋がるため、工程の進捗をスムーズに管理し、計画通りのプロジェクト完了を実現することが可能になります。
③顧客の満足度を高める
生成AIが設計・デザイン案を迅速に提供することで、顧客は自身の要望をリアルタイムに可視化し、設計プロセスに深く関与できるようになるため、顧客と設計者の間のコミュニケーションを円滑にし、プロジェクトに対する顧客の理解度と満足度を大幅に向上させます。
従来、設計図面から完成形をイメージすることは、顧客にとって容易ではありませんでしたが、生成AIの導入により、自身のアイデアが形になっていく過程を直感的に把握できるようになり、より細やかなフィードバックが可能です。
この双方向のコミュニケーションは、最終的な成果物に対する顧客の納得感と満足度を高めることに繋がるでしょう。
④建築物の品質が向上する
AIは設計者が気づきにくい細部まで入念に分析し、設計の品質を大幅に向上させます。例えば、構造計算の精度向上や素材の最適な組み合わせの提案など、設計のあらゆる側面において、人間の能力を補完し、さらなる高みへと導きます。
AIを活用した設計は、建物の品質向上はもちろん、設計段階から構造の耐久性を高めることで、建物の寿命が延び、メンテナンスコストを削減することもできます。
また、AIが建物のエネルギー効率を最大限に引き出す設計を提案することで、環境負荷を軽減し、サステナブルな社会の実現にも繋がるでしょう。
さらに、AIが設計した建物は、構造の安全性や耐久性、エネルギー効率など、多岐にわたる面で優れており、不動産市場において高い評価を得られる可能性があります。
⑤専門的な知識が共有できる
AIの導入により、各企業が長年蓄積してきた建設に関する専門知識や豊富な経験が体系的に整理され、全社で共有されるようになります。
これまでは、個々の従業員の知識やスキルに頼らざるを得なかった状況が一変し、企業全体として統一された知見が構築されるため、社内のベストプラクティスが明確になり、知見を最大限に活かすことが可能になります。
⑥在庫の最適化やコスト管理ができる
AIの導入はコスト管理と資源の最適化において、強力なツールとして機能します。AIは膨大な過去のプロジェクトデータを分析し、最適な解決策を導き出す能力を持っているため、材料の無駄を減らし、工期を短縮することが可能です。
また、AIを用いたシミュレーションにより、建物のエネルギー消費を最小限に抑える設計を実現できるため、建物の運用コストを削減するだけでなく、環境負荷の低減にも繋がります。
天候や交通状況、作業員の稼働状況など、様々な要因を考慮して最適な工程を提案するため、工期を短縮し、プロジェクト全体の効率性を高めることもできます。
⑦潜在的なリスクを事前予測できる
AIは膨大な量のデータを分析し、従来の人間の目では捉えきれない潜在的なリスクや危険な状況を事前に予測することが可能です。
また、現場作業員に対しては、チャットや音声などの直感的なインターフェースを通じて、適切な警告を提供することができるため、作業員は危険な状況を早期に察知し、必要な安全対策を即座に実施できるようになるでしょう。
⑧効果的な経営戦略に繋がる
AIは膨大な量のデータを分析し、市場のトレンドや顧客のニーズ、競合他社の動向などの経営に不可欠な情報を迅速かつ正確に提供します。
このAIがもたらす深い洞察は、経営層がより効果的な戦略を策定するための強力な武器となるでしょう。
AIによるデータ駆動型の意思決定は、従来の経験や直感に頼った意思決定から脱却し、客観的なデータに基づいた戦略を立案することが可能になるため、より確度の高い予測を立て、リスクを最小限に抑えながら事業を進めることができるのです。
AIが提供するリアルタイムなデータ分析は、経営戦略の成功率を高め、企業の競争力強化にも繋がります。
AIを建設業で活用する際の効果的なポイント
以下では、AIを建設業で効果的に活用するための具体的なポイントを解説します。
課題に対するアプローチ法を検討する
AIは、膨大なデータを分析し、それに基づいた作業やコンテンツの作成は得意ですが、複雑な問題に対して人間のように柔軟な対応をすることは苦手です。
そのため、AIを建設現場に導入する際には、自社の業務内容やAIの特徴をしっかりと把握し、どのような課題を解決したいのか、AIをどのように活用すれば効果的かを明確にすることが重要です。
中長期なAI活用の戦略を策定する
AIの進化は日進月歩なため、今後はAIをいかに効果的に活用できるかが、企業の競争力を左右する重要な要素となるでしょう。
AIは個々の社員がAIツールを利用して生産性を向上させるといったシンプルなものから、業務プロセス全体を革新し、顧客サービスや新たな商品・サービスを生み出すような高度なものまで、そのレベルは多岐にわたります。
企業は中長期的に目指すAI活用のビジョンを明確にし、その実現に向けた具体的なロードマップを描くことが重要です。ロードマップに基づき、AIを効果的に活用できる施策を段階的に進めていきましょう。
何度も細かくカスタマイズしなおす
AIの開発・導入は、一度限りの作業ではなく、継続的な改善が重要なため、モデルや学習データ、利用方法などを繰り返しカスタマイズすることで、より理想的な活用へと近づけることができるでしょう。
具体的には、初期段階で立てた仮説に基づいた簡素なプロトタイプを構築し、実際の業務に適用してみるというサイクルを数週間から数ヶ月の単位で何度も繰り返すことが効果的です。
この反復的な開発プロセスは、アジャイル開発と呼ばれる手法であり、AI開発においてもその有効性が広く認識されています。
アジャイル開発では迅速な試行錯誤を重視し、顧客や利用者のフィードバックを基に、製品やサービスを段階的に改善していきます。
AI開発においてもプロトタイプを早期に構築し、実運用環境で検証することで、より精度の高いモデルや業務に最適なシステムを構築することができるでしょう。
社員のAI活用リテラシーを向上させる
建設業におけるAIのポテンシャルを最大限に引き出すためには、技術そのものだけでなく、それを操る人間の能力が重要な鍵となります。
同じAIツールを使っても使い手のリテラシーによって成果は大きく変わるため、高度なAIモデルであっても、AIリテラシーを正しく理解し、適切に活用できるDX人材がいなければ、その能力は十分に発揮されません。
そのため、AI活用の成功にはAIの基本的な仕組みから、具体的な業務への応用方法、潜在的なリスクまで、幅広い知識とスキルを習得させる必要があります。
以下のようなセミナーを通じて、従業員がAIを効率的かつ責任を持って使えるようにすることが重要です。
DX人材については、以下の記事で詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
生成AIセミナー
ProSkilllでは、未経験でも2日間で生成AIについて理解することができる生成AIセミナーを開講しております。実務で使えるスキルを取得できる内容のため、受講後はすぐに生成AIを活かせるようになるでしょう。
初日は、生成AIの基礎知識を習得し、実際に画像生成や文章生成を体験していただきます。様々な種類の生成AIの中から、特に注目されているLLMの仕組みを深く掘り下げ、代表的なモデルであるChatGPTの活用方法を学び、生成AIの性能を最大限に引き出すためのプロンプトエンジニアリングについても解説します。
2日目は、ChatGPTを社内の業務にどう活かしていくか、具体的な事例を交えてご紹介します。また、Pythonの基礎を学び、生成AIを開発するためのプログラミングスキルを習得します。
さらに、自社のデータを学習させた独自の生成AIを作成する方法やLLMを活用したサービス開発についても解説します。
AIを建設業に導入して可能性を最大限に引き出そう
今回は、AIが建設業にもたらす8つのメリットや活用する際の効果的なポイントを解説しました。建設業界は現在、産業全体のリエンジニアリングを進め、従来のイメージを一新し、魅力的な業界へと生まれ変わろうとしています。
その中で、AIによる安全性と生産性の向上は、幅広い分野で導入が検討され、開発が進められている最重要のアプローチです。しかし、建設現場や用途ごとに異なる特性や求められる機能を十分に理解した上で、AI導入を進める必要があります。
AI研では、このような状況を踏まえ、AI活用の無料相談を実施しております。貴社のご要望に合わせて、最新の市場動向や具体的な活用アイデア、他社事例に加え、貴社の状況に合わせた最適なアドバイスを提供いたします。お気軽にご相談ください。
