Expressは、JavaScriptでWebアプリやAPIを効率よく作るためのフレームワークです。シンプルで扱いやすく、学習コストも低いため、初心者からプロの開発者まで幅広く利用されています。
この記事では、JavaScript×Expressで始めるWebアプリ開発として、Expressの特徴や導入方法、そして使うメリットまでを丁寧に解説します。
わかりやすくステップごとに紹介するので、プログラミング未経験の方でも安心して取り組める内容です。ぜひこの機会に、Expressを使った本格的なWebアプリ開発の第一歩を踏み出してみましょう。
JavaScriptのExpressとは
JavaScriptのExpress(エクスプレス)は、JavaScriptでWebアプリやAPIを作るためのフレームワークです。フレームワークとは、開発を効率よく進めるための便利な“ひな形”のようなものと考えるとわかりやすいでしょう。
Expressは「Node.js」という実行環境の上で動作し、シンプルな書き方とわかりやすい仕組みで、Webサービスの裏側(バックエンド)をつくるのに役立ちます。特に「このURLにアクセスされたらこう返す」といったルーティング処理を簡単に組めるのが魅力です。
このようにJavaScriptのExpressは初心者でも学びやすく、すぐに開発を始められるため、個人の作品作りからスタートアップの試作開発まで、幅広く活用されています。
Node.jsとは
Node.jsは、JavaScriptをサーバーサイドでも動かせるようにした実行環境です。もともとJavaScriptはWebブラウザ内でしか使えませんでしたが、Node.jsの登場によってサーバー側の処理、つまりデータの保存やAPIの提供、ファイル操作といった高度な処理もJavaScriptで行えるようになりました。
Google Chromeにも使われているV8エンジンをベースにしており、高速な処理性能が特徴です。JavaScriptの知識だけでフロントエンドとバックエンドの両方を扱えるため、Webアプリ開発を効率よく進めたい初心者にとってはとても心強い技術と言えるでしょう。
JavaScriptとNode.jsの関係についてはこちらの記事で詳しく解説されているので、併せて参考にしてください。
JavaScriptのExpressで出来ること
JavaScriptのExpressは、シンプルさと柔軟さを兼ね備えたフレームワークとして、多くの開発者に支持されています。ここでは、Expressを使う上で知っておきたい特徴や機能をご紹介します。
ルーティング機能
ルーティングとは、ユーザーが特定のURLにアクセスしたときに、どんな処理を行うかを決める仕組みです。例えば「/login」にアクセスされたらログイン画面を表示し、「/api/data」ならデータをJSON形式で返す、といった処理は、すべてルーティングによって動いています。
JavaScriptのExpressでは、このルーティングをとてもシンプルな記述で実装できるのが大きな魅力です。具体的には、「どのURLにアクセスされたら、どう反応するか」というルールを1行ずつコードに書いていくだけ。ルールの追加や変更も簡単なので、小さなアプリから大規模なWebサービスまで柔軟に対応できます。
また、URLに含まれるパラメータを使って、ユーザーごとのページを表示するような動的な処理も簡単に書くことも可能です。
ミドルウェアの仕組み
ミドルウェアとは、リクエスト(ユーザーからのアクセス)とレスポンス(サーバーからの返答)の間に入って、さまざまな処理を行う仕組みです。JavaScriptのExpressではこのミドルウェアを使って、アクセスログの記録、ログイン状態の確認、データの形式変換など、処理の流れを柔軟にコントロールできます。
例えば、すべてのアクセスに対して「誰がいつアクセスしたか」を記録するように設定したり、特定のページにアクセスする前に「ログインしているか」をチェックしたりといった動作を自動的に実行させることができます。処理を一つひとつ個別に書くのではなく共通の処理としてまとめて管理できるのが、ミドルウェアの大きな利点と言えるでしょう。
Expressは、こうしたミドルウェアを必要なだけ追加・順番に組み合わせて使うことができるので、アプリの拡張性が高く、複雑な機能も段階的に組み込むことが可能です。
テンプレートエンジンの対応
テンプレートエンジンとは、HTMLファイルの中に変数や繰り返し処理などのコードを埋め込める仕組みです。これを使うことで、例えば「ユーザー名を表示する」「リストを自動的に並べる」といった動的なページを効率よく作成できます。
JavaScriptのExpressは、EJS(Embedded JavaScript)やPug、Handlebarsなど、さまざまなテンプレートエンジンに対応しており、プロジェクトに応じて自由に選ぶことが可能です。テンプレートエンジンを使えばHTMLを1ページずつ手作業で書く必要がなくなり、コードの重複を避けながら保守しやすいシステムを構築できます。
特に初心者におすすめなのはEJSです。HTMLに近い見た目のまま使えるため、学習のハードルが低く感じられるでしょう。
APIサーバーとしての活用
JavaScriptのExpressは、APIサーバーとして使われるケースが非常に多いフレームワークです。APIとはApplication Programming Interfaceの略で、「アプリ同士がデータのやり取りをするための窓口」のようなものを指します。
Expressは、リクエストに対して、レスポンスをJSON形式で返す処理を簡単に記述できます。そのため、スマホアプリやフロントエンドと連携したWebアプリのバックエンドを構築する際にとても便利です。
また、ルーティング機能やミドルウェアの仕組みと組み合わせることで、セキュリティ対策やアクセス制御も柔軟に行えます。シンプルな構造でありながら本格的なAPIを作れるため、個人開発から企業のサービスまで幅広く採用されています。
JavaScriptのExpressを使うメリット
数あるフレームワークの中でも、JavaScriptのExpressが幅広く使われているのには理由があります。ここでは、Expressを使うことで得られる具体的なメリットを見ていきましょう。
シンプルな記述で開発スピードが向上する
Expressの最大の魅力のひとつは、コードの記述がとてもシンプルで直感的なところです。必要最低限の構成で動作するため、「まずは動かしてみたい」「とにかく早く試したい」といったニーズに向いています。
例えばルーティングやレスポンスの処理も、わずか数行で完結しますし、複雑な設定ファイルや独自の記法を覚える必要がなく、JavaScriptの基本がわかっていればすぐに書き始められるのもポイントです。HTMLやCSSの学習と並行してバックエンドにも挑戦しやすいのが、Expressの強みと言えるでしょう。
ドキュメントと学習リソースが豊富
JavaScriptのExpressは世界中で広く使われているフレームワークのため、公式ドキュメントやチュートリアル、Q&Aサイトでの情報が非常に充実しています。特に公式サイトは、基本的な使い方から応用的なテクニックまで網羅されており、初心者でも安心して学べる構成になっています。
また、QiitaやZenn、YouTubeなどの日本語コンテンツも多く、実際に手を動かしながら学べる記事や動画がたくさん見つかります。トラブルに直面しても、Google検索でほとんどのケースに対応できる情報が見つかるのは、大きな安心材料です。
プラグインが充実している
JavaScriptのExpressはシンプルな構成が特徴ですが、必要な機能をあとから自由に追加できる拡張性も大きな魅力です。npm(Node.jsのパッケージ管理ツール)を通じて、Expressと組み合わせて使えるプラグイン(ミドルウェア)が数多く公開されています。
代表的なプラグインをいくつか挙げてみましょう。
プラグイン名 | 主な機能 | 用途・ポイント |
---|---|---|
body-parser | リクエストの本文(JSONなど)を解析 | フォームやAPIで送信されたデータを扱うときに必須 |
morgan | アクセスログの自動記録 | 開発中に「どんなリクエストが来ているか」を確認しやすくなる |
cors | クロスオリジン通信の許可 | フロントとバックが別ドメインのときに必要 |
express-session | セッション管理 | ログイン状態の保持や一時的なユーザーデータの保存に便利 |
multer | ファイルアップロードの処理 | 画像やファイルをフォームからアップロードしたいときに活躍 |
このように必要に応じてプラグインを組み合わせて使うことで、より実用的なWebアプリを効率よく開発できるのが魅力です。
JavaScriptのExpressを導入する手順
JavaScriptのExpressの特徴や機能を理解したら、実際にExpressを自分の環境に導入してみましょう。ここでは、Expressの導入からアプリ開発を始めるまでの基本的な流れを紹介します。
- Node.jsをインストールする
- プロジェクトフォルダを作成する
- Expressをインストールする
- サーバーファイルを作る
- サーバーを起動して確認
①Node.jsをインストールする
出典:Node.js公式サイト
まずはJavaScriptのExpressを使うために、Node.jsをパソコンにインストールしましょう。公式サイトにアクセスすると、OSに合わせて「LTS(安定版)」と「最新バージョン」が表示されます。初心者はまずLTS(推奨)バージョンを選ぶのが安心です。
インストーラーをダウンロードして起動し、画面の案内に従って「次へ」を押していけば、基本的にはすぐに完了します。
②プロジェクトフォルダを作成する
Node.jsのインストールが完了したら、次はExpressアプリの土台となるプロジェクト用のフォルダを作成しましょう。自分のパソコン上で好きな場所に作成し、名前は「my-express-app」のように、内容がわかりやすいものにするのがおすすめです。
ターミナル(インストールしたNode.js内にある「Node.js command prompt」またはコマンドプロンプト)を開き、cdコマンドでプロジェクトフォルダに移動したら、次のコマンドを実行しましょう。
実行すると、プロジェクトの初期設定ファイル(package.json)が自動で作成されます。これが、Expressアプリ開発のスタート地点になります。
③Expressをインストールする
プロジェクトの準備ができたら、いよいよExpress本体をインストールします。Expressはnpm(Node.jsのパッケージ管理ツール)を使って簡単に追加できます。
ターミナルでプロジェクトフォルダにいることを確認したうえで、次のコマンドを入力しましょう。
このコマンドを実行すると、node_modulesというフォルダが作られ、その中にExpressのコードや関連ファイルが追加されます。また、package.jsonにはExpressが依存関係として自動的に記録され、後から再インストールする際にも役立ちます。
インストールが完了したら、package.json内の「dependencies」に “express” が追加されているかを確認してみましょう。これでExpressの導入は完了し、Webアプリ開発の準備が整いました。
④サーバーファイルを作る
Expressをインストールしたら、次はアプリの起点となるサーバーファイルを作成しましょう。ファイル名は「app.js」や「index.js」など、自由に設定できますが、ここでは一般的によく使われる「app.js」を例にします。
プロジェクトフォルダの中に新しく「app.js」というファイルを作成し、以下のような基本コードを書き込みましょう。
const express = require(‘express’);
const app = express();
app.get(‘/’, (req, res) => {
res.send(‘Hello, Express!’);
});
app.listen(3000, () => {
console.log(‘サーバーがポート3000で起動しました’);
});
このコードは、「http://localhost:3000」にアクセスしたときに「Hello, Express!」というメッセージを表示するという、シンプルなWebサーバーを立ち上げるプログラムです。ここからさまざまな機能を追加していくことができます。
⑤サーバーを起動して確認
app.jsが準備できたら、いよいよサーバーを起動して動作を確認してみましょう。ターミナルでプロジェクトフォルダにいることを確認したうえで、次のコマンドを入力します。
すると、「サーバーがポート3000で起動しました」というメッセージが表示されます。これはアプリが正しく動作しているサインです。
次に、ブラウザを開いて http://localhost:3000 にアクセスしてみましょう。画面に「Hello, Express!」というメッセージが表示されれば成功です。
ここまでできれば、Expressアプリの最も基本的な動作確認が完了です。今後はルーティングを増やしたり、テンプレートを使ったりして、より本格的なアプリに発展させていきましょう。
JavaScriptのExpressでおみくじアプリを作ってみよう
環境構築ができたところで、JavaScriptのExpressを使ってシンプルな「おみくじアプリ」を作ってみましょう。ブラウザで http://localhost:3000/omikuji にアクセスすると、「大吉」「中吉」「吉」「小吉」「末吉」「凶」などのいずれかが表示されるというものです。
それではまず、プログラム側を実装していきましょう。「app.js」に次のように記述します。
const express = require(‘express’);
const app = express();
const port = 3000;
// おみくじの候補
const fortunes = [‘大吉’, ‘中吉’, ‘吉’, ‘小吉’, ‘末吉’, ‘凶’];
// ルート:トップページに案内メッセージ
app.get(‘/’, (req, res) => {
res.send(‘ようこそ!/omikuji にアクセスしておみくじを引いてみよう!’);
});
// おみくじルート
app.get(‘/omikuji’, (req, res) => {
const result = fortunes[Math.floor(Math.random() * fortunes.length)];
res.send(`🎉 あなたの運勢は…「<strong>${result}</strong>」です!`);
});
// サーバー起動
app.listen(port, () => {
console.log(`おみくじアプリが http://localhost:${port} で起動しました`);
});
ターミナルで「node app.js」を入力してから、ブラウザで「http://localhost:3000/」にアクセスすると、「ようこそ!」という説明が出ます。そして「http://localhost:3000/omikuji」にアクセスすると、Math.random()でfortunes配列からランダムに1つが選択され、結果が画面に表示されるという動きです。
今後の応用ポイントとしては、次のようなことにも挑戦してみましょう。
- テンプレートエンジン(EJS)で表示をもっとリッチにしてみる
- 結果に「ラッキーカラー」や「一言アドバイス」を追加する
- 一日一回だけ引けるように制限する(cookieやIP、日付で制御)
- JSONで結果を返す「APIモード」を追加する
実際にアプリを作ってみたら、少しずつ応用として拡張してみるのがおすすめです。少しずつ自分仕様のアプリに改造して、Expressの高度な使い方をマスターしましょう。
JavaScriptのExpressの学習方法
JavaScriptのExpressを学ぶ方法はいくつかありますが、初心者には「公式ドキュメントを読む」「動画や書籍で学ぶ」「実際に手を動かす」といったシンプルな手段が効果的です。
学び始めの段階で取り組みやすい方法を中心に、JavaScriptのExpressの学習法をご紹介します。
学習方法 | 説明 |
---|---|
公式ドキュメントを活用する |
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セミナーを受講する |
|
チュートリアル動画を活用する |
|
入門書を活用して独学する |
|
サンプルコードで練習する |
|
小さなWebアプリを作成する |
|
このような方法を組み合わせながら学んでいけば、JavaScriptのExpressの基礎だけでなく、実際に使いこなすための実践力も自然と身についていきます。
最初からすべてを完璧に理解しようとせず、自分のペースで少しずつ進めることが大切です。無理なく、楽しみながら学んでいきましょう。
JavaScriptのExpressと他のフレームワークとの違い
Webアプリ開発には、JavaScriptのExpress以外にもさまざまなフレームワークがあります。それぞれに特徴があるので、目的や開発スタイルによって選択するとよいでしょう。
JavaScriptやNode.jsを使う開発でよく使われる代表的なフレームワークとExpressの違いをまとめたのが次の表です。
フレームワーク | 特徴 | 学習のしやすさ |
---|---|---|
Express |
| ◎ わかりやすい |
NestJS |
| △ 少し学習コストあり |
Fastify |
| ○ 比較的やさしい |
Koa |
| △ 中級者向け |
各フレームワークの特徴を理解し、自分の開発スタイルに合ったものを選ぶことが大切です。どれを選ぶべきか分からないという人は、まずはExpressのようなシンプルなものから始めて、必要に応じて他のフレームワークも検討してみましょう。
JavaScriptのフレームワークに関しては、こちらの記事も参考にしてください。
JavaScript×ExpressでWebアプリ開発を始めよう
Expressは、シンプルな構文と柔軟な設計で、JavaScriptだけでWebアプリの裏側を効率よく構築できるフレームワークです。導入のしやすさや豊富な学習リソース、プラグインによる拡張性など、初心者にとっても安心して取り組める魅力が詰まっています。
まずは小さなアプリから始めて、実際に動くものを作る経験を積み重ねていきましょう。Expressをきっかけに、あなたも本格的なWeb開発の世界へ一歩踏み出してみませんか。
