• DX
  • 21view

【2022】物流DXとは?推進する際の課題と企業の事例を解説

物流DXは、デジタル技術を活用したり、データを収集・活用して業務効率化や新しい価値を想像したりするために有効な取り組みです。しかし、物流DXの目的や推進に関わるポイントなど、正しく理解している方は多くありません。

今回は、物流DXの基礎知識や課題、推進のポイントや大まかな方向性や企業の事例などを紹介します。物流業界におけるDXの推進を検討している方にとっては、正しい理解をもとに方向性を決める上で役に立つかと思いますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

物流DXとは

物流DXとは、物流業界にデジタル技術を応用し、業務効率化や新たな価値の想像を目指すための取り組みです。まずは、物流DXの基礎知識について解説します。

DXとは

DXとは、Digital Transformationの略で、2018年12月に経済産業省が公表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」では、以下のように定義されています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

また、国土交通省は、「2020年代の総合物流施策大綱に関する検討会」において次のように述べています。

物流の機械化・デジタル化は、輸送情 報やコストなどを「見える化」することを通じて、荷主等の提示する条件に従うだけの非効率な物流を改善するとともに、物流システムを規格化することにより収益力・競争力の向上が図られるなど、物流産業のビジネスモデルそのものを革新させていくものである。こうした取組によりこれまでの物流のあり方を変革する取組を「物流 DX」と総称する。

つまり、物流DXは、物流業の効率化のみならず、製造業や小売業などにおいて切り離せない「物流産業全体」に変革をもたらし、社会全体をよりよくするといった大きな取り組みだと考えられています。

物流においてDXが重視されている理由

物流分野に限らず、DXを活用した競合他社との差別化戦略はさまざまな分野に広がっています。では、物流業界においてはなぜDXが必要とされているのでしょうか?その理由について解説していきます。

労働力不足

厚生労働省のデータ「労働経済動向調査(令和4年5月)」によると、運輸業・郵便業の労働者の過不足状況は、他の業界と比べて高い値を維持しています。欠員率は平均を超えており、仕事があっても人員が足りていないというのが物流業界における実情です。

若者の人材確保が困難になっている昨今、デジタル技術を活用した業務効率化や働き方改革により、物流業界の意識改革やイメージアップにより、人材不足の解消を推進することが求められています。

EC市場の拡大

国土交通省のデータ「物流を取り巻く動向について(令和2年7月)」によると、EC市場は2018年には全体で18兆円規模となり、物販系分野は9.3兆円規模まで増加しています。これにより、国内の宅配便の取扱件数が5年間で約18%も増加しており、物流業界の需要が急増していることがわかります。

こういった市場規模の変化に追従するため、DXの推進による作業効率化・自動化が求められています。

顧客ニーズの多様化

情報の入手が簡単かつ豊富になっており、顧客のニーズの多様化が加速しています。そういった背景から、配送事業や倉庫事業では少数多品種の荷物を取り扱う必要があり、それらを間違いなく迅速に顧客へ届ける必要があります。

さらに、再配達の発生も問題になっており、それらの対応に効率良く対応するためには、仕組みや人員がまだまだ不足しています。こういった中で、DXの導入による配送ルートや配達の仕組みの高度化や自動化が必要となっています。

物流DXの課題

物流DXがなかなか進められていない原因は、物流業界の特徴にヒントが隠されています。ここからは、物流DXの課題について説明します。

拠点ごとに最適化されている

物流業は、全国にある複数の拠点間で荷物の運搬を行うことで成立しています。そして、拠点ごとに仕事の効率化や工夫を行っており、結果として拠点ごとに独立した業務プロセスになっています。

この状態で、どこかの拠点を中心としたDXを推進する場合、うまく連携ができていないと、ある地点では業務効率化できても、別の拠点では悪化しているという状況になりかねません。したがって、物流DXを推進する上では、各拠点での連携と、全社一体となってDX推進プロジェクトを組織することが必要となります。

デジタル技術がなくても成立する

物流業の基本は、「運搬」「保管」「仕分け」です。こういった作業において、これまではデジタル技術が必要とされておらず、必ずしもなくてはならないというものではありません。

そのような環境により、現場の作業者にもITリテラシーが高くない作業員や高齢者などが多いのが実情です。それにより、デジタル技術の導入に向けた人材教育にもコストや時間がかかり、最悪の場合は対応が困難になるということになる可能性もあります。

したがって、デジタルの価値が認められていない現場作業員を含めて、全社的にDXのメリットや意義を理解してもらいつつ推進することが重要です。

技術先行になっている

「物流業にデジタル技術を投入する」というと、自動搬送ロボットや宅配ドローン、自動運転車など、最新技術を活用したイノベーション事例をイメージすることが多いかと思います。DXの本来の目的は、ビジネスモデル変革や業務効率化であるのに対して、DXの意義を理解できていないと、こうした技術を「手段」ではなく「目的」としてしまう危険性があります。

重要なことは、最終目標に対してボトルネックになっている課題が明確になっており、その対策としてデジタル技術を活用できるかということです。

物流DXのポイント

物流DXを成功に導くためには、抑えておきたい注意点があります。ここでは、物流DXのポイントについて解説します。

現場の創意工夫+データ活用

物流業は拠点ごとに業務プロセスややり方が最適化されており、拠点間での連携が取れていないことが大いにあります。そういった現場でDXを行う場合には、「標準化」が重要になります。

たとえば、データの計測手段や細かな条件が拠点ごとに異なっていると、収集されるデータの基準がバラバラになってしまいます。そのような状態では、データの分析・活用が困難になり、システム全体の品質低下につながってしまいます。そうならないためにも、まずはやり方を標準化する必要があります。

また、すでに拠点ごとに最適化されたやり方があれば、いかにデジタル技術を活用してそれを行い、作業標準として落とし込むかということも重要な進め方になります。こうしたやり方であれば、現場作業員の作業変更にかかる負担を減らせるため、スムーズに導入が進められます。

拠点ごとに最適化されたやり方は、長年の担当者の知恵によって構築されたノウハウです。それらをうまく活用できれば、新システムの導入におけるトライアンドエラーを効率良く行うことができます。

現場への早期還元

物流業界の業務は、デジタル技術がなくても成立しています。そのため、これまでの業務で創意工夫している現場の作業員からすると、「今のままでもできているのに、本当に必要なの?」などと懐疑的に思われがちです。したがって、まずはデジタル技術の必要性をアピールする必要があります。

必要性を感じてもらうために最も効果的な方法は、スピーディに結果を出すことです。DXによって新しい業務が加わっても、すぐに目に見える結果が出れば、それまで反対していた人たちも納得せざるを得ませんし、会社の経営層から見ても「実績」となるためDX推進を支援しやすくなります。

したがって、まず初めに短期間で達成可能な目標を立て、最終目標に向けたマイルストーンとして実施するのがポイントとなります。

業務適合性の検証

自動ピッキングやハンディスキャナーは、物流DXを推進する上でよく登場する機器ですが、それらが現場で実際に使用しても問題がないかを確認する必要があります。

たとえば、現場の温湿度や明るさなどはセンシング性能に影響するため、実際に使用する現場や最悪条件での実証実験を行う必要があります。

したがって、使用する機器やシステムが決まった時点で、早い段階で本番環境のテストを実施し、手戻りを最小限に抑えることがポイントです。

物流DXの方向性

物流DXを計画する段階で、ある程度の方向性を決める必要があります。では、物流DXの最終形にはどのようなものがあるのでしょうか?ここからは、物流DXの計画をする上で頭に入れておくべき方向性を紹介します。

物流の自動化・機械化

物流DXというと、AIやIoTを活用した自動化・機械化を思い浮かべる人が多いことでしょう。たとえば、センサを活用した荷物の自動仕分けや、荷物を運ぶ自動ピッキング装置、宅配ドローンなどがそれにあたります。

物流業務の自動化・機械化は作業員の削減に効果的で、さらに人の手が加わらないため、大量の作業をこなしてもヒューマンエラーが発生しなくなり、うまく導入できれば作業精度が向上させられます。さらに、単純な作業を機械に任せることにより、物流計画や顧客とのやり取りなど、複雑な処理にリソースを割けるようになります。

物流のデジタル化

物流業の意義は、「必要な人に必要なものを届ける」といったところにあります。業務効率化の目的でデータ収集や活用が進められれば、モノを取り扱うさまざまな業界におけるデータの見える化が実現します。

このように、商品の動きや人の行動・属性データを一本化することで、消費行動の予測につながるような大量のデータが収集でき、さまざまなビジネスの需要予測や価値創造のために活用することができます。物流のDXによって実現するビッグデータ活用は、世界中のさまざまなビジネスに変革をもたらす可能性があります。

物流DXの事例

最後に、日本国内企業の物流DXの事例を紹介しましょう。

SGホールディングス株式会社:仕分け業務にロボット導入

SGホールディングス株式会社は佐川急便株式会社の親会社であり、デリバリー事業、ロジスティクス事業、不動産事業、その他の事業のセグメントで構成されています。同社は、DX戦略を活用した成長戦略に精力的に取り組んでおり、その一例が「佐川流通センターの仕分け業務に対するDX推進」です。

埼玉県東松山にある佐川急便の拠点(東松山 佐川SRC)では、無人搬送車(AGV)および次世代型ロボットソーターを導入し、仕分け業務を自動化しました。これにより作業員を27%削減でき、同拠点で勤務する全従業員の労働時間が大幅に削減できました。

株式会社日立物流:輸送業務のデータ活用

株式会社日立物流は、DX推進の施策として、物流業務における事故ゼロ化を支援するサービスプラットフォーム「SSCV」の構築を実施しました。SSCVは、Smart & Safety Connected Vehicleの略で、物流事業に関する様々な情報をデータ化し、蓄積・活用するためのサービスプラットフォームです。

たとえば、トラックのドライバーの生体情報をセンシングして疲労度を計測し、運行計画を調整して事故を未然に防ぐといったなどの業務に応用しています。さらに、このプラットフォームで得られたデータを様々な業界とパートナーを組んで活用することで、新たなビジネスの創出や社会問題の解決に貢献しています。

ヤマトホールディングス株式会社:ECエコシステムの確立

ヤマトホールディングス株式会社は、ヤマト運輸の親会社です。同社のDXの取り組みの一例が、個人間取引サービス向けの宅配サービス「EAZY」の提供です。

このシステムを利用し、ECサイトの注文履歴画面などから受け取りを玄関前やガスメーターなどへ指定する「置き配」の設定ができます。これは、ヤマト運輸が使用している運送計画システムと、商品を販売するECサイトなどの注文システムがデータ連携することで、ユーザーからはシームレスに設定ができるようになっています。

まとめ

物流DXは、さまざまなビジネスに新しい価値を創出するために注目されている取り組みです。今回解説した重要性やポイント、先行企業の事例などを参考に、自社での取り組みに活用してみてください。

最新情報をチェックしよう!