IBM Watsonとは?世界で知られるAIの活用事例やその仕組みを大公開

IBMが誇る人工知能システムであるWatson(ワトソン)
世界中で使われているAIとして知名度が高いです。
実質的なIBMの創設者であるトーマス・J・ワトソンから名前を取ったこの人工知能は、2010年から開発が進められています。
ディープラーニングを始めとした人工知能ブームが来る前からWatsonはある程度知名度があり、ビジネス利用もされている技術です。
とはいえ、一般向けにはあまりプロモーションしておらず馴染みが薄いのも事実。

  • 聞いたことがあるけど具体的にどんな人工知能なの?
  • どんな使われ方をしているの?
  • 機能や仕組みを知りたい!

という人も多いはず。
そこでこの記事では、IBM Watsonの成り立ちや機能、活用事例などを詳しくまとめました。
ぜひご一読ください。

IBM Watsonとは?

IBM Watson

Watsonは様々な質問や課題に対して、蓄積された膨大なデータの中から最適な回答を見つけ出し解決してくれるサービスのことです。
質問応答・意思決定システムとも呼ばれます。
アメリカの人気クイズ番組で歴代のチャンピオンに圧勝したことからWatsonは一躍有名になりました。
今ではビジネスシーンや医療分野で大活躍で、人々の業務をサポートしています。

Watsonは人工知能ではなく拡張知能

同じAIですがIBMはWatsonを「人工知能(Artificial Intelligence)」ではなく、「拡張知能(Augumented Intelligence)」と呼んでいます。
人工知能が人間の脳を真似しているのに対し、拡張知能は人間がよりよい意思決定ができるようにアドバイスしたり、サポートすることを目的としているのです。
人間には処理できない大量の情報を短い時間で処理することで知能を拡張する、ということですね。
人工知能というと「ターミネーター」のようなロボットが人間を支配するというイメージを持ちがちですが、Watsonはあくまで人間の思考をアシストする役回りなので恐れることはありません。
人工知能の定義について更に知りたい方は、こちらの記事『人工知能(AI)とは?誰でも簡単!ディープラーニングの仕組み』も参考にしてください。

コグニティブ・コンピューティング・システムとは?

Watsonは「Cognitive Computing System(コグニティブ・コンピューティング・システム)」とも定義されています。
コグニティブとは、日本語で「認知」のこと。
ある対象を見たり聞いたりすることでそれが何であるかを判断したり解釈するプロセスを指します。
すなわちコグニティブ・コンピューティングとは、単なる情報処理の機械ではなく、人間のように物事を理解して判断し推論するシステムなのです。

IBM Watsonの活用実例

Watsonはビジネスを始めとした様々な分野で活躍しています。
今回はJR東日本やソフトバンク、みずほ銀行の活用事例を紹介していきましょう。

①JR東日本

Watsonを使ってJR東日本が構築したのは、「お問い合わせセンター業務支援システム」です。
お客様との電話の内容をAIで音声分析し、オペレーターに文章で回答を瞬時に提示します。
JR東日本のコールセンターは、時刻や運賃など鉄道に関するものから不動産やクレジットカードなど広範囲に渡る質問を同じ電話番号で受けています。
そのため、オペレーターにも幅広い知識が求められるのですが、すべてのオペレーターがベテランというわけではありません。
Watsonが回答を提示してくれることで、経験の浅いオペレーターも問い合わせにスムーズに答えられるようになり、回答の精度が上がりました。
応答時間も30%削減することができ、サービスの質が貢献しています。
Watsonは人間の仕事を奪うのではなくアシストするということがよくわかる一例です。

②ソフトバンク

ソフトバンクは、新卒一括採用にWatsonを活用しています。
新卒採用にWatsonを使うってどういうこと?と思う方もいるかもしれませんね。
どんな使われ方をするかというと、応募者のエントリーシートの分析に使われます
WatsonのNLC(Natural Language Classifier、自然言語分類)という機能を使って自己PRを分析し評価していくのです。
合格基準を満たす書類について選考通過とし、不合格者の書類については直接人事担当者が内容をチェックして合否判定を行うという仕組みになっています。
合格者はAIで自動判定し、不合格者には人のチェックが入るという仕組みが、Watsonに対する信頼の高さを物語っていますね。

③金沢工業大学

企業だけではなく、教育機関もWatsonの活用が始まっています。
金沢工業大学はWatsonを活用した就学支援サービス「KITコグ」を導入しました。
KITコグは、成績や図書データの貸出、学生一人ひとりの性格診断など、約40項目にわたるデータを学習します。
そうして溜まっていった100万人を超える卒業生のビッグデータを使って、在学生に似ている卒業生をランキング形式で抽出します。
最も似ている卒業生のデータと照らし合わせ、就学に対する取り組みやアドバイスを個々の学生に提供することにより、学生の目標達成を支援していく仕組みです。
理系の大学らしい、先進的な取り組みと言えますね。

IBM Watsonの機能

IBMは、Watsonの機能をAPIとして公開しています。
APIとはアプリケーション・プログラミング・インターフェースの略で、外部のソフトウェアと連携できる窓口のようなものです。
Watsonの代表的な機能である

  1. 言語解析
  2. 画像認識
  3. 音声認識

の3つを中心にまとめました。

①言語解析

自社のサービスにチャットボットを導入したい、という場合に役に立つ機能です。
Watsonに想定される質問と回答例のキーワードを学習させて、ウェブサイトやLINEなどのサービスと繋ぐことができます。
チャットボットを開発するには、IBM Watson Assistant APIを使います。
IBM cloud アカウントを取得し、 Watson Assistantを選択してください。
無料のライトアカウントを導入し情報を入力すれば、すぐに作成に取りかかれます。

Watson Assistantを使えば、LINEと連携することができます。
「パン田一郎」や「女子高生AI りんな 」のようなチャットボットサービスをオリジナルで作れるようになります。
かつてはIBMのプラットフォームでしか使えなかったWatsonは、今ではあらゆるクラウド環境で使えます。
さらに人気を呼び起こすことは間違いありません。
Watsonだけでなく、様々なサービスを使ってチャットボットを作成できます。
AI研究所の「チャットボット講習」を受講するとたった1日で自作のチャットボットが作れるようになりますよ。

②画像認識

watson画像認識

ディープラーニングを使って、写真に写っている物体の抽出や顔の認識ができる機能です。
すでにWatsonが画像について学習をしており、すぐにこの機能を使用できます。
もちろん、機械学習により新たに独自の画像を読み込ませて学習することも可能です。
画像認識機能を使って大量の画像のタグ付けや分類、製造ラインにおける画像検査によって不良品を検出することができるようになります。
Watson Visual Recognition(ワトソン・ヴィジュアル・レコグニション)APIによって、画像認識系の機能を利用できます。
すでにこのAPIは、トレーニング済みの学習モデル(一般・顔・不適切・食品)を持っています。
既存の組み込みモデルを使って画像分析できますし、オリジナルのカスタムモデルを作って新たな画像を学習させることもOKです。

③音声認識

音声認識は、企業のコールセンターなどで重宝される機能です。
オペレーターの音声をリアルタイムで文字化することによって、円滑に業務が回せるように支援してくれます。
日本語の他にも英語やフランス語、中国語など複数言語に対応しています。
IBMの音声認識システムは、世界最高の性能を達成していて、精度がとても高いです。
今後もさらに多様なビジネスに使用されていくことでしょうね。

音声認識のAPIは、Watson Text to Speechです。
テキストから人間のような合成音声を作ってくれます。
Text to Speechのデモサイトには、複数言語の音声が公開されています。
テキストから音声への変換だけでなく、音声からテキストへの変換も可能です。
ゲームエンジンのUnityと連携すれば、架空の3Dキャラクターに合成音声をつけることができるようになり、もはや声優すら使わずにすべてフィクションで成立されるキャラクターを作成できることも可能になるのです。
新たなビジネスチャンスが生まれそうですね。

IBM Watsonについてまとめ

Watsonは日本の名だたる大企業の業務改革に使用されており、高い評価を得ています。
今後もさらに発展を続けていくであろうことは間違いありません。
今はまだビジネス中心の使われ方をしていますが、私達のプライベートな生活の中にもWatsonが関わってくる未来は近いでしょう。
ぜひ、この記事で理解を深めていってください。

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